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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、薬草集めに奔走す①

「他の任務は後回しで構わん!とにかく、ありったけの薬草を採取するんだ!回復魔法を使用できるものは、病人の治癒を頼む!」

 ギルドにヒショウの大声が響く。

「し、しかしギルド長、この病に治癒魔法はほぼ効果はありませんが」

「かまわん、たとえ慰みでも、一時的な痛みを抑えることはできるだろう。この王都存亡の危機と思ってくれ!」

「はいっ!」

 ギルドの職員もあわただしく駆けずり回っている。そこにラルカたちがやってきた。

「ヒショウ先生、ただいま」

「おお、ラルカ君!」

「ごめんなさい、今日はこれだけでした」

 ラルカがヒショウに採取してきた薬草を渡す。今日の午前中森を探し回ったが、片手でおさまるだけの量だ。本当は午後も探す予定だったのだが、あまりにも効率が悪く、一旦状況確認も兼ねて戻ってきたところだった。

「ありがとう、助かるよ。すまない、君たちはまだ学生なのに」

「気にしないで下さい、こんな時ですし。それにわたしは義勇士でもありますから」

 ライラの言葉に全員が頷く。

「本当にありがとう。それにしても、ここまで感染の勢いが凄まじいとは・・・。まさか死眼病とは。なぜこんな急に」

 ヒショウが唇をかむ。あの日、ラルカがジュリアンを紹介した日からほどなくして、王都に病が流行り始めた。死眼病の初期症状は軽い風邪に似た症状しかない。が、徐々に体中に眼の模様に似た斑点が現れ、それが進むと高熱に至り、最悪の場合死亡する。何より厄介なのは、感染力が強いことだ。現在王都感染者及び疑いのあるものは三桁を超えていた。今後もっと増えるであろう。

「薬草は足りているんですか?」

「・・・正直に言って、目標の二割も集まっていない。ケヒト草は珍しい薬草だからな。すまない、君たちにこんなに協力してもらっているのに」

 ケヒト草とは、死眼病に効果のある薬草である。ルクスカーナ王国に自生している数は少なく、また栽培方法も確立されていない。ヒショウが悔しさと申し訳なさから頭を下げる。

「君たち、もう十分だ。これ以上無理をさせるわけにはいかない。後は私達に任せて、寮で休んでいなさい」

 学園はしばらく休校になっている。学生は基本寮で待機、教師陣は疫病対策のためギルドに協力しており、校舎はほぼ無人の状態であった。

「で、でもぅ、薬草、足りないんでしょう?」

「ああ。だが、実は探索要員は十分なんだ」

「十分?」

「・・・狂戦士の栄誉(グラディオル)の連中が、協力してくれている。無償でな」

 その言葉に全員が驚いた。無理もない、ヒショウ自身も驚いているのだから。

「ダイガンさんが?」

「いや、傘下の者たちだ。狂戦士の栄誉(グラディオル)の連中は数日前から姿を見ない。シザリオ辺境伯のところにもいないようだ」

 全員顔を見合わせた。

「だから、君たちはもう帰りなさい。ここまで協力してくれて、本当にありがとう」

 ヒショウは笑顔で頭を下げたが、全員が作り笑いであることはわかっていた。




「これからぁ、どうしましょうぅ」

「どうするっつったって、どうしようもないべ」

「だが、放っておくわけにもいかないだろう。このままじゃ死者が出るのも時間の問題だ」

「左様。加えて申さば、王都に不穏な気配がある。貴族どもが薬を買い占めているという噂がどこからかでてな。不満と恐怖に駆られた民衆が暴徒化する可能性も現実的になってきた」

 死眼病が発見されてから、既に20日を過ぎている。発生から重症化まで比較的長い日数がかかるため、現時点で死者は確認されていない。が、感染者は徐々に増え始めており、効果のある薬の在庫が尽きかけているため、王都は恐慌に陥る寸前になっていた。

「ラルカ、どうしたらいいにゃ?」

「うーん、とにかくケヒト草が手に入ればいいんだけどな」

「我が君、意見を申し上げてもよろしいでしょうか」

 ダニエルの格好をしたジュリアンが手を上げた。

「なあに、ジュリアン君」

「昔の記憶で申し訳ございませんが、ケヒト草はこの国の隣国であるゴラドム国には比較的多数存在していたと、医学書に記載があったはずです」

「ほんとに!?」

「はい、間違いありません」

「やった!じゃあさっそく行ってみようよ!」

 だが、ラルカの明るい声に、ほかの四人の表情はさえない。

「どうしたの?みんな、なんか暗いよ?」

「ラルカ、言いにくいんだが、それは不可能だ」

「え、な、なんで」

「・・・その国は、もう存在しないんだ」

「え!」

「なんと・・・」

 ラルカはもちろん、ジュリアンも驚く。

「二人とも、知らなかったにゃ?666日の冬の時、ゴラドムにとんでもない魔物が復活してしまって、あっという間に滅亡しちゃったんだにゃ」

「それ以来、そこは“死の大地”って呼ばれるようになったんだべ。強力な魔物がうじゃうじゃいて、今じゃ人間は誰も住んでいない、世界でもトップクラスの危険地帯だべよ」

「そうなんだ」

 ラルカの顔が曇った。それを見たジュリアンが青ざめる。

(あああ、なんということだ。我が君を悲しませてしまうとは、このジュリアン一生の不覚だ。どうする?自害してお詫びするか?それとも、どこかの国を攻め落とし献上するか?)

 ジュリアンが不穏なことを考えていると、ラルカがふと思いついた。

「でも、植物は残っていないの?魔物がいるってことは、草食の魔物もいるんでしょう?」

「え、ど、どうなんでしょうぅ?」

「わからん。あの地は探索もまともにできていないはずだ。あまりにも危険すぎるうえに、どの国の領土でもないからな」

「じゃあ、行ってみる価値はあるよ!ジュリアン君、午後は二人で行ってみようよ」

(我が君と、二人っきり・・・?)

 今度はジュリアンがフリーズする。鼻血が両方の穴から垂れてきた。何を考えているかはわからないが幸せそうな顔をしている。

「お、おい、今の話聞いてなかったんか?危険だべよ」

「大丈夫。今日は偵察だけだから。夕飯までには帰るよ」

「で、でもぅ」

「・・・わたしも行く」

 ライラの発言に、全員の視線が集中した。

「ほ、本気にゃ?ライラ」

「ああ、頼むラルカ。連れて行ってくれ。決して足手まといにはならない。それに、薬草採取であれば人手は必要だろう?」

「・・・・」

 ラルカはライラを見つめた。ライラもラルカを見つめた。ライラは思わず微笑を浮かべると、ラルカも笑った。

「うん、じゃあライラも行こう」

「ああ!」

「ちょ、ちょっと待つにゃ。カレンも一緒に行きたいにゃ」

「わ、私もぅ、ご一緒しますよぅ」

「うん、じゃあみんなで行こっか」

「・・・オイラ行くって言ってねえべ」

(な、なんだと、わ、我と我が君二人だけの楽園が、我が君パラダイスがあ~!)

 ジュリアンが落ち込んでいるのを、誰も気が付かなかった。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

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