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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、新しい仲間を紹介する④

「最後は貴公だ、フロイラン・ライラ。よろしいか」

「ああ、頼む」

 クリスティーナが零距離結界の発動を成功させたため、あとは発動の安定性と持続性を高めるように、と言い残し、ジュリアンはライラの指導へと移った。

「わたしは何をすればいい?闘気か?それとも技の修練か?魔法か?」

「いや、どれでもないな。と言うより貴公は今の実力でも十分だ。貴公は自身が思っているよりずっと強い」

「?」

 ライラが怪訝な表情を浮かべる。それでは何をすればいいんだ、とその顔が言っているようだ。

「フロイラン・ライラ。貴公の持つその武器についてだが、この我が断言しよう。その武器は古今類を見ない大業物だ。いにしえの英雄たちの得物と比較しても、だ」

 ライラが月光竜胆を握りしめる。ライラ自身もそのことは知っているが、改めてその事実を聞き身を引き締めた。

「だが、貴公はその武器の力を引き出していない。いや、それに振り回されている。依存している、と言い換えてもいい。それが攻勢の時に粗雑となって表れている」

 ライラがはっとしたようにジュリアンを見た。

「にもかかわらず、同時にそれに対する引け目も見て取れる。守勢時には臆病になるのがその証拠だ。それでは勝てる勝負も勝てない」

 ライラは唇をかみしめた。自身にも思い当たることは多々あった。

「まずはその武器と、そして己自身と向き合われよ。武具は振るわれるものではない。振るうものだ」

 ジュリアンの言葉は厳しい指摘ではあるが、ラルカ自身も薄々感じていたことだった。ライラは月光竜胆に対し、ただの武器以上の感情を抱いている。それ自体は悪いことではないが、月光竜胆が傷つくことを肉親を失うと同様に感じている。また、月光竜胆に対し、その強さゆえ恐怖のような感情を抱いていることも確かだ。

「でも、逆を言えば、それを克服すれば、あっという間にライラは強くなるよ。攻めの時には勇敢で、守りの時には慎重な、本来のライラになって、フロストクイーンどころかナツメさんにだって引けを取らなくなるよ」

 へとへとになったゴンゾとカレンを休憩させているラルカの言葉にジュリアンも頷いた。ラルカは現時点でライラの力量は三人の中で頭一つ抜けており、フロストクイーンにも負けないと思っている。前回敗北した理由の一つはジュリアンの言葉通り、もう一つは、単刀直入に言えば“足手まとい”が存在していたためであろう。とはいえ、仮にジュリアンの指摘が改善されても現時点でナツメに勝てるかはかなり怪しいが。

「ありがとう、ラルカ、ジュリアン。そうだな、わたしは負けないよ。フロストクイーンにも、ナツメにも」

 ライラの表情は晴れやかだった。

「だが、具体的にどうすればいいんだ?情けないが、未熟なわたしには訓練の心当たりがないんだ。教えてくれるとありがたい」

 ライラは低姿勢でジュリアンに助言を求めた。

(気高いな)

 ライラのその姿勢にジュリアンは感心した。真の気高さとは自分ではなく他者のために己のプライドを捨てられることとジュリアンは思っている。自身をバカにされたことに激昂することをプライドと思っている矮小な人間を数多く見てきたジュリアンにとってライラは輝いて見える。

「そうだな、貴公は盗難を防ぐため、非戦闘時は我が君に預けているようだが、それは甘えだ。これからは常住坐臥、御身から離さぬよう心がけよ」

「承知した」

「後はいつも通りの修練で良い。とにかくその武器に慣れる。我はそれが一番遠回りのようで一番の近道と思う」

「いつも通りか」

 その言葉に再びライラは迷いを見せた。いつも通りと思っても、意識するとそのいつも通りができなくなってしまう。どんなに優れた武芸者でも、平常心を保つことは難しい。するとラルカが、ライラの近くにトテトテと歩いてきた。

「ね、ライラ、迷ったら一番の基礎をやってみるといいよ。基礎の練習は、絶対に嘘をつかないから。一番地味だけど、一番大切な練習だと思うよ」

「・・・!」

 その言葉にはっとしたライラは目をつぶり、父の修練を思い出していた。


「とうさん、なんでいっつも、同じことばかりしてるの?」

 家の前で何度も大斧を素振りするジークに幼いライラは率直な疑問をぶつけた。

「はは、見ていて退屈か?」

「ううん。でも、まいにち同じことしてるから。ほかのれんしゅうしたほうがよくないの?」

「うーん」

 ジークは一時手を止めて、腕を組んで少し考えた。

「才能ある人なら色んなことをしたほうがいいかもしれんな。だが、俺は器用なほうじゃない。だから、基礎だけは誰にも負けないように練習するんだ。基礎ってもんは一番大切だから基礎って言うんだしな。それに応用の練習は、場合によってはむしろ調子を崩したり、迷いにつながることもある。だが、基礎練習は歩みは遅くとも、絶対に無駄になることはない。だからライラも、迷ったら基礎に戻ってみるといい」

「そうなんだ」

 まだ幼いライラには、その言葉の意味がよくわからないようだった。

「はいはい、気は済んだかい?もう練習の時間は終わり。ご飯の時間だよ」

「お、そう言えば腹が減ったな。ライラ、今日もいっぱい食べるんだぞ」

「うん!」



(とうさん、かあさん・・・)

 目を開けたライラの目に、迷いが消えていた。

「ラルカ、ありがとう」

 ラルカがにっこりと笑い、ライラも笑った。一転真面目な顔になり、闘気を集中させ、月光竜胆を構える。

「はっ」

 一つ素振りをする。再び構えると、再度素振りをする。三度、四度と繰り返す。

「ふむ」

 ジュリアンが顎を撫でる。彼に武芸の心得はないが、今まで数多の武芸者を見てきた。見る目には自信がある。

(なかなかの切れだ。とても我流とは思えん。元々実力はあったのだ。もう彼女は大丈夫だろう)

 ジュリアンがふとラルカを見ると、にこにこしながらライラの練習を見ていた。

(我が君にはかなわんな。結局、お一人で解決してしまわれた。我などきっかけにもなれなんだ)

 そう思いながらジュリアンはうれしそうだった。

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