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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、新しい仲間を紹介する①

「ってことで、僕たちの仲間になりました、ダニエル君改め、ヴァンパイアのジュリアン君です」

「ふふふ、ジュリアンと申します。皆々方、末永くよろしく」

 翌日、自由時間、楽園への扉(エデンズゲート)でやってきた無人の荒野にて、ラルカはジュリアンをみんなに紹介した。ジュリアンの正体については仲間以外には秘密のほうがいい、とライラが判断したため、他の生徒のいる前ではダニエルのままであるが、今は本来の姿だ。ジュリアンは赤い口紅に薄化粧を施している。ゴンゾたちの前に出るからではなく、ラルカの前では最も美しい姿でいたいためである。だが、無断外泊をグリメルに見つかったときにもらったげんこつで頭にこぶができたため、いまいち格好がついていない。もちろんラルカとライラにもついている。

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

 ゴンゾ、クリスティーナ、カレンの三人は呆然としている。当然だろう、ヴァンパイアと言えば人を襲う吸血鬼とのイメージしかない。三人は輪になりひそひそ話を始めた。

(お、おい、一体どういうことだべ?)

(ご、ゴンゾさんが悪いんじゃないですかぁ。パーティ抜けるなんて言うからですよぅ)

(ほ、ほんとに大丈夫かにゃ。カレン、血を吸われるの嫌だにゃ)

 不安そうな三人を見て、

「大丈夫だよ。ジュリアン君はいい人、じゃなくて、いいヴァンパイアだから。僕が保証するよ」

「おお、そのようなお優しいお言葉、このジュリアン、今のお言葉、生涯忘却つかまつりませぬ」

(・・・・なんだか大丈夫そうじゃねえか)

(そうですねぇ、少なくともラルカさんには服従しているようですねぇ)

(一体昨日何があったんだにゃ)

 三人も納得したようだ。

「ありがとう。ゴンちゃんもありがとね。今日は鍛冶の授業は大丈夫なの?」

「ああ、今日は先生なんか用事があるみたいで、暇になったから気にすんな」

「じゃ、今日はどうするにゃ?討伐に行くのかにゃ?」

「いや」

 ライラが初めて口を開いた。心なしか表情が冴えない。

「ジュリアンが、我々と手合わせをしたいと言ってきた。わたしも、ジュリアンの実力は気になるし、パーティを組む以上お互いの手の内はわかっていたほうがいいだろう」

「て、手合わせっ!?」

 ゴンゾが怯えた声を出した。

「うふふふ、ご安心を。我が君のパーティの“仲間”である皆々方を傷つけるつもりは毛頭ないゆえ」

「わ、我が君ぃ?」

「ジュリアン君、僕のことそう言うの。僕はラルカでいいって言ってるんだけど」

「とんでもございませぬ。下僕たるこの愚生が、我が君の御名をお呼びするなど、千年早うございます」

「げ、下僕!?」

 三人がまた集まった。

(おい、やっぱりあぶねえ奴じゃねえか!!)

(げ、下僕って、下僕のことですよねぇ?)

(本当に、一体昨日何があったんだにゃ)

 昨日、ラルカは友達になろうとジュリアンに提案したのだが、それはあまりにも恐れ多い、と言ってジュリアンが聞かず、結局無理やり下僕になってしまった。本人は天にも昇るほど喜んだので、ラルカも納得せざるを得なかった。

「なんでもいいだろ、まずはわたしから、それでいいか、ジュリアン」

「おや、四人同時ではないのか。我は全くかまわないぞ」

 その言葉に、カレンがムッとした。

「それはどういう意味にゃ。カレンたち全員と戦って、勝てるとでも思ってるにゃ?」

「いや、おそらく勝てるだろう」

 代わりに答えたライラに、カレンが驚く。

「ど、どうしたにゃ、ライラ?」

「どうしたもこうしたもない。言葉通りの意味だ。ジュリアン、すまないが一人ずつ頼む」

「いいだろう、さあ、かかってきたまえ」

「ラルカ、月光竜胆を」

「うん」

 ラルカが童子の宝物庫(トイ・ボックス)から月光竜胆を取り出し、ライラに手渡す。

「ほお」

 ジュリアンが感心の声を上げた。長い人生を誇る彼だが、これほどの業物は今まで見たことがない。

「それでは、初め!」

 ――――万物滅ぼす残酷なる光よ、降臨せよ

空焦がす雷剣(カラドボルグ) !」

 ラルカの試合開始の合図と同時に、ライラは空焦がす雷剣(カラドボルグ)を発動した。

「うふふふ、素晴らしい。では、我の武器もお見せせねばな」

 ジュリアンがその言葉を言い終わると同時に、彼の影が実体化し、剣や斧、槍など様々な形へと変わっていく。その数は十を超えた。

「あ、ななななな・・・・」

 ゴンゾがおびえる。ライラは表情こそ変えないが、頬を汗が伝った。恐怖を打ち消すように、月光竜胆を強く握りしめた。

「我が武器、気狂い武器屋(マッドネススミス)だ。それでは、お相手しよう」

「はっ!」

 ライラが一気に間合いを詰め、上から月光竜胆を振り下ろした。ジュリアンは微動だにせず、影でできた楯で受ける。が、月光竜胆は楯をバターのように切り裂いてしまう。

(さすがだな)

 ジュリアンが感心する。その称賛は武器に対してでもあり、ライラに対してでもある。だが、彼に慌てた様子はない。影の武器がライラに向かって襲い掛かる。ライラはバックステップでよける。そこへさらに襲い掛かる。ライラはさらに後ろへ下がり、大きく間合いが開いてしまった。ライラは太ももに装備したホルスターから桜襲を取り出し、ジュリアンへと投擲する。

(遅い)

 ジュリアンが難なくそれを躱す。大斧の技量と比べると天地の差があるナイフの扱いを見て、やや失望したところに、

雷撃(サンダーショット)!」

 ライラの放った電撃は、桜襲目掛けて正確に飛び、その射線上にいたジュリアンに命中した。

「むっ!?」

「おおっ!!」

 ジュリアンがややよろける。好機と見たライラは一瞬で間合いを詰め、再び月光竜胆を振り下ろした。

(まさか、そんな使い方とは)

 先ほどの雷撃(サンダーショット)はたいしてダメージを受けてはいないが、少しジュリアンの足が止まってしまった。月光竜胆がジュリアンの頭上から振り下ろされる。だが、ジュリアンは肉体を二体の犬へと変え、それを躱す。さらにその犬がライラへと飛びかかってきた。

「くっ」

 ライラは一体を大斧で払い飛ばすが、もう一体がライラの腕へとかみついた。瞬間頭部が手へと変わり、ライラのマナを吸い取る。

「ああっ!!」

 二体の犬が合体し、再びジュリアンの姿に変わると、手刀をライラの喉元へ突き立てた。

「それまで」

 ラルカの合図で試合が終わると、ライラは悔しそうな顔で歯を食いしばり、ジュリアンへと頭を下げた。ジュリアンも、頭を下げた。

「さ、次の方」

 ジュリアンが三人へと振り向く。三人は、次の相手をそれぞれに押し付けあっていた。

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