少年、真なるヴァンパイアと手合わせす①
―――昔々、とても大きなおやしきに、とても美しい女の子が生まれました。しかし、女の子を生んだお母さんは、産後の肥立ちが悪く、その日のうちになくなってしまいました。お父さんは悲しみましたが、必死に女の子を育てました。しかしそのお父さんも、女の子が六さいのたんじょうびに病気でなくなってしまいました。
美しかった女の子はおじの家に引き取られることになりました。しかしおじが馬車で女の子を迎えに来たところ、途中でがけから落ちて奥さんもろとも死んでしまいました。女の子はもう一人のおじに引き取られました。おじさんのかぞくは哀れな女の子をやさしく迎えてくれました。しかしある日、叔父の家は恐ろしい魔物におそわれてしまいました。生き残ったのは女の子だけでした。
女の子に縁のある人はみんないなくなってしまい、孤児院に引き取られることになりました。ですが、女の子が引き取られてすぐ、孤児院が火事になってしまいました。生き残ったのは女の子だけ。街の人は気味悪がって、誰も女の子を引き取ろうとしません。女の子は、一人で街を出ていきました。
女の子は歩き続け、気が付くと森の中にあるさびれたおはかのそばに来ました。疲れた女の子はそのおはかを背に休んでいたら、いつの間にかねむってしまっていました。朝になり、女の子が目を覚ますと、女の子は人ではなくなっていました。お墓からは、何かがはい出たような穴が開いていました。女の子は自分が人ではなくなったことに気がつきましたが、かなしくはありませんでした。それから、女の子のゆくえを知る人はいません。女の子のことも、これ以上は誰もわかりません。女の子のいた街のひとたちが、ある日突然ぜんいん死んでしまったからです。
女の子の名前は、カーミラといいました。
―――おしまい。
童話 くらやみのおひめさま
「た、太母様、お体に障りますぞ」
ジュリアンが慌てる。
「なに、ほんの手すさびよ。大げさなものではない故安心せい。この子を信頼していないわけではないが、少しは力量を確認せねばな。それとも、この子と床勝負せよと申すか?」
「・・・御戯れを」
ジュリアンが閉口する。
「ね、ライラ、トコショウブってなに?」
「まっっっっったく知らん!!!!」
なぜか怒っているライラに怪訝な表情をするラルカ。
「ジュリアン」
「はっ」
ジュリアンがカーミラの背後に回ると、ネグリジェを脱がせた。シミ一つない白い肌があらわになる。首から下には産毛一つ生えていない。ライラはラルカの目を覆った。
「はやや、何するの、ライラ」
「いいから黙ってろ!」
カーミラが微笑する。ジュリアンはカーミラに黒い上下の下着を履かせ、さらに黒いゴシック調のドレスを着せた。
「待たせたの」
ライラはやっとラルカの目を開放した。
「しかし、この部屋ではちと狭いな。場所を変えるぞ、よいな」
そう言うとカーミラは右手をラルカに向けて開く。意図を理解したラルカは左手を合わせた。カーミラとラルカが顔を合わせ、お互いの実力を察知する。すると両者とも、少し笑みを浮かべた。
「イッツ・ア・デュエル!」
二人同時に叫んだ瞬間、ラルカとカーミラ及びライラとジュリアンが、謎の空間に飛ばされた。そこは古代戦士が戦ったとされる円形闘技場のような場所だった。ラルカとカーミラはその中央に、ライラとジュリアンは観客席にいる。
「な、な、な、なんだここは!」
突然のことにライラが混乱する。
「ご安心召されよ。これは太母様の空間魔法、虚数解の闘技場だ」
「虚数解の闘技場?」
「うむ。最上位空間魔法だ。試合を行う際に互いが同意した時のみ発動可能な魔法で、ここならどんなに強力な魔法でも周囲に配慮する必要はない。また、観客である我らは決闘者からの攻撃で傷つくことはなく、しかも、いつでも帰ることもできる」
ジュリアンが指を差した方向には、元の空間へつながっている扉が見えた。
「それに、決闘者が受けた傷も元の世界に戻れば無かったことになる。仮に死に至る傷を負っても、強制的にこの世界が崩壊し、元の世界に戻るだけだ」
ライラが闘技場の中央を見ると、ラルカとカーミラが距離をとり、相対していた。
お読みいただきまして、ありがとうございます。
ご感想、評価、リアクションお待ちしております。
しばらくは毎日投稿しますので、応援よろしくお願いいたします。




