少年、新たな仲間を勧誘す②
「あ、ダニエル君、こんにちは」
「これはラルカ君、それにライラさんも。奇遇ですね」
翌日、学校は休みの日、ラルカとライラの二人は学園の蔵書室にやってきた。ダニエルの部屋を訪ねたラルカだったが誰もおらず、隣の部屋の生徒から、ダニエルは一人部屋であり、休日はおそらく学園にいると言われ、ライラとともに探していたところだった。
「ダニエル君、本が好きなんだね」
「ええ、本は先人たちが残してくれた知の遺産ですから」
ダニエルが微笑を浮かべる。ほとんどの女生徒を虜にするその顔も、ライラには一切通じなかった。
「何読んでたの?」
「学長の書いた魔法書です。難しくて、なかなか理解できないですね」
ダニエルが苦笑を浮かべた。
「ね、昨日の話、どう?考え直してくれないかな」
「ふふ、申し訳ありません。やはり私は戦いより、こうして本を読んでいるほうが好きなんですよ」
そう言うとまたダニエルが本に視線を落とした。
「ふーん、そっか。ところで」
ダニエルの呼んでいる本に視線を向けながら、ラルカが静かな声で質問した。
「なんで、人間のふりをしているの?」
その瞬間、ライラは半歩下がった。ダニエルから一瞬漏れ出たのは、まぎれもなく殺気だった。それも尋常じゃないほどの強さの。
「・・・・」
ダニエルの表情は変わらない。殺気もすでに収まっている。しかし、ライラはもう彼が今までの優男には見えなかった。
(・・・ごまかせるか?いや・・・)
ダニエルが視線を上げた。にこにこしているラルカと、その後ろで警戒心をあらわにするライラが見えた。
(不覚だったな。ダークエルフにも察知されてしまうとは。いっそのこと消すか?いや、ダークエルフはともかく、この子にはさすがに敵わないだろうな)
ダニエルは本を閉じ、ラルカの目を見つめ、頭の中でシミュレーションをする。自分の腕が彼の喉を掴む前に、その腕が切り落とされ、同時に首が飛んだ。
(一体この子は何者なんだろう。この年齢でこれほどの使い手、今まで見たこともない)
「ご質問の意味が分かりかねますが」
ダニエルは少し考えた後、とりあえずあいまいな返答をして様子を見ることにした。
「僕、昔から幻術とか効かないの、なんでかはわかないけど。ダニエル君、偽装魔法の作り笑いの仮面使ってるよね」
「・・・・」
ダニエルの顔から笑みが消えた。ライラが警戒を強くする。
「ダニエル君、ヴァンパイアでしょ。それもかなりの高位の」
「ヴァンパイアだと!?」
ライラが驚きの声を上げる。ダニエルは一言も発さない。ラルカは相変わらずにこにこしたままだ。
「ね、どうして正体を隠してたの?」
「・・・ふふふ」
ダニエルは突然笑い出した。
「はははははっ!まさか、人間に見破られるとはな。我も耄碌したか」
先ほどまでの丁寧な話し方とは違う、尊大な言い方だった。しばらく笑っていたダニエルだったが、突如笑いを止めると目をつぶった。次の瞬間、ダニエルの体に闇が纏い、輝くような金髪がみるみる色を失い、それと同時にどんどん伸びていった。元々白い肌がさらに白く、青白い死人のような色に変わっていく。身体も大きく盛り上がっていく。ライラより低い身長が、それを越す。ゆっくり目を開けると、黒目と白目の境が無くなっており、眼球すべてが深紅に染まっていた。最後に人差し指で自身の胸を突き、その血を口紅のように唇に塗りつけた。
「な・・・!」
ライラが恐怖と驚愕で頭が混乱しそうになる。だが、ラルカの表情は相変わらずにこにこしたままだ。
「初めまして、我が名はジュリアン。古より生きるヴァンパイアである。以後お見知りおきを」
正体を現したダニエル、改めジュリアンはうやうやしく挨拶をする。ラルカはにこにこしたまま握手を求めた。
「初めまして、ジュリアン君。よろしくね」
ジュリアンも微笑を浮かべながら握手をした。
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