少年、新たな仲間を勧誘す①
少女は死と友達だった
少女は死が怖くなかった
少女は死を受け入れ、死と同じになった
それが、すべてのはじまりだった
「困ったなー」
「困ったにゃー」
「困ったですねぇー」
「呑気に言ってる場合か、ちゃんとどうすればいいか考えろ」
ライラがラルカ、カレン、クリスティーナのおでこを人差し指でつつく。
「そんなこといってもぅ、いきなり新しいメンバー入れるなんてぇ、心当たりなんて無いですよぅ」
クリスティーナが講義室の机に突っ伏しながら愚痴を言う。自由時間になり、本来なら今日も討伐に行く予定だった。
「しょうがないよ。ゴンちゃんにはゴンちゃんの事情があるんだから」
昨日のナツメとの件の後、ゴンゾが自由時間を鍛冶の修行に専念したいと言い出した。武術や魔法は授業でも修行が可能だが、鍛冶などの専門技術は自由時間以外では練習不可のためである。
「・・・ああ、そうだな」
ライラ、カレン、クリスティーナの三人は、ゴンゾが言い出した本当の理由は狂戦士の栄誉に恐れをなしたため、と薄々気づいていたが、口には出さなかった。
「でも、四人以下のパーティだと魔物討伐できないなんて知らなかったにゃ」
ゴンゾを除いた四人で魔物討伐へ出発しようとしたところ、ロベスピエール教諭より、生徒のみで魔物討伐へ向かう条件があることを説明された。一つ目に、二年生以上(ただし特別に許可を得た者はその限りではない)。二つ目に、武術または魔法にて一定以上の技能を有すると認められた者。そして三つ目に、パーティの人数は五名以上、かつ一名以上治癒魔法の使用者がいること。因みに教師が帯同する場合は上記の条件を満たさなくても問題はない。だがその場合、最終決定権は教師もしくは義勇士が持つことになる。
「ええ、それにロベスピエール先生ならともかくぅ、学長まで許してもらえないとは思わなかったですよぅ」
クリスティーナの言葉にラルカも頷く。ロベスピエールより説明を受けたラルカたちだったが、特別に許可をもらえないか尋ねた。ロベスピエールは認めなかったものの、シュバルツ教諭がヨミへ相談するべき、と仲裁してくれた。ラルカの実力は誰もが知るところであり、ヨミが特別に許可を出してくれると思っていたが、ヨミの答えも例外は認められないとのことだった。これにはラルカたちはもちろん、ロベスピエールにとっても意外だった。
「もう、お姉ちゃんいつまでたっても僕のこと、子ども扱いするんだから」
「しかたないだろう。誰か新しいメンバーを入れるか、それとも協力してくれる先生を見つけるか、どっちか選ぶしかないな」
不満気に膨らませたラルカの頬を両手でグニグニしながらライラが考え込む。
「でもぅ、先生たち皆さん忙しそうですねぇ」
「じゃ、やっぱり誰か新しい仲間を見つけるしかないにゃ」
「ああ、だが誰がいい?実力で選ぶとしても、まさかバカ王子を選ぶわけにもいかないだろう?」
三人が唸る。
「実力で選ぶんなら、あの人かな」
ライラに頬をグニグニされながらラルカが指をさした。三人が目を向けると、金髪の美青年が講義室の角に背を預けながら本を読んでいる。遠巻きに数人の女生徒たちがその様子を盗み見ていた。
「へ?」
「だ、ダニエル君ですかぁ?」
全員、戸惑いを隠せなかった。ダニエル・クリストフは学業こそ優秀で、入学試験でも三位の成績だったが、武術も魔法も下から数えたほうが早い。その見た目から女生徒の人気は非常に高いが。
「な、何かの間違いじゃにゃい?」
「ラルカ、どういうことなんだ?あいつが実力をわざと隠しているってことか?」
ラルカは答えず、トコトコとダニエルへ近づいて行った。
「ね、ダニエル君、ちょっといい?」
「なんですか、ラルカ君」
本を閉じ、ダニエルがほほ笑む。女生徒がきゃあきゃあと騒ぐ。
「ごめんね。本読んでるとこ邪魔しちゃって」
「かまいませんよ。今ちょうど読み終えたところです。ところで、私に何か御用ですか」
「ね、ダニエル君、僕たちのパーティに加わってくれない?」
その言葉に、ダニエルがわずかに驚きの表情を浮かべた。が、すぐに元の微笑に変わった。
「私には、力不足でしょう。ラルカ君初め、皆さん私よりはるかにお強い方々ばかりですから」
「えー」
ラルカがむくれる。その後ろから、ライラがラルカの襟首をつかみ、片手で持ち上げた。
「すまない、クリストフ。邪魔をした」
「いいえ、お気になさらず」
ライラたちはラルカを回収すると、そそくさとその場を離れた。ダニエルは再び本を開くと、一瞬だけちらりと出ていくラルカたちに視線を向けた。
「お、おい、いくら何でも突然すぎるだろ!」
「そ、そうですよぅ。ダニエル君、びっくりしてたじゃないですかぁ」
「それに、正直ダニエル君ってどんな人かよくわからないにゃ。あと、やっぱり強そうに見えないにゃ。ラルカ、本当にダニエル君でいいにゃ?」
「うん、ダニエル君、きっといい子だよ。僕たちの力になってくれると思うよ」
自信満々のラルカの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「しかし、そうは言うが、本人にその気がないんじゃなあ」
「うーん」
ラルカが腕組みする。
「ま、いいや。また後で話してみようよ。もしかしたら、何かわけがあるかもしれないし」
ラルカの言葉に三人はまた顔を見合わせた。
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