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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、またまた魔物討伐へ④

「陛下、シザリオ辺境伯が面会をお求めです」

 王都メデュネイの北端にある王城、その国王の寝室で、宰相の言葉にルクスカーナ王国国王フラウ四世は大きくため息をついた。

「此度も同じ件と思うか」

「恐らくは」

 宰相パウルゼンも国王の心労は痛いほどわかる。できれば自分もあの男とは会いたくない。が、断るわけにはいかない。

「通せ」

 その言葉に宰相は一礼し、部屋の外に待機している騎士に伝言をした。しばらくして、シザリオ辺境伯が姿を現した。

「お久しぶりです。陛下。ご健勝のこと何よりに存じます」

「よく来てくれた。歓迎する」

 お互いしらじらしい挨拶が終わると、グズルはさっそく本題に入った。

「陛下、我が忠実なる(しもべ)が先日、王都近くの森にて強大な魔物を見つけたとの報告がありました」

 グズルが目配せすると、配下の者が豪華な箱を差し出した。国王は黙ってそれを直接受け取った。

「・・・?」

 箱を開けたが、国王も初めて見るものだ。

「それは、グレイシアレオのコアにございます」

「グレイシアレオだと!?」

 その名に、さすがの国王も驚いた。城落しの魔物が出現したとなると、騎士団全軍が出陣するレベルの脅威である。普段は感情を見せない宰相でさえ驚きを隠せない。それを見て、グズルはにやにやといやらしい笑みを浮かべた。

「それだけではありませぬ。フロストクイーンも四体、発見されております。ああ、すでに討伐はしておりますので安心を」

 自慢げにグズルは続ける。

「最近、王都の近隣にて強力な魔物が多数報告されております。失礼ながら、現在の騎士団では対処しきれぬものと存じます」

 国王に宰相は目配せをした。この後に続く言葉は何度も聞かされたから知っている。宰相は目で「なりませぬぞ」と言っている。国王も目で「わかっておる」と返事をした。

「そこで、我が忠実なる僕を騎士団の末席に加えていただきたく存じます。我が国を守るため、陛下をお守りするため、どうか我が献身の心をお受け取りくださりませ」

「その心、うれしく思う。此度のことも大義であった。だが、騎士団の再編は国家の一大事ゆえ、即答はできぬ。一旦検討いたす。返事はしばし待ってもらう」

 その言葉にグズルは眉をしかめる。

「恐れながら、先日も同じお言葉でございます。いつお返事をいただけるでしょうか」

 グズルの言葉に国王は返答せず、代わりに宰相が答えた。

「シザリオ辺境伯、騎士団は昨年増強したばかりゆえ、すぐにまた増員すると混乱が生じる。辺境伯の忠誠心には敬意を表するが、私の意見では数年は控えるべきと存ずる」

「数年後に増員するのであれば、今のうちに増員したほうがよかろう」

「いや、数年後には“闇の子”の世代が学園を卒業する。騎士団へ配属を希望する生徒も多いと聞く。少数でもあの世代の戦力がいかに特別かは、辺境伯もご存じだろう。さらに次席のダークエルフの生徒が騎士団志望らしい。その戦闘力は現時点でも並みの義勇士を大きく上回るとか」

「まことか」

 国王にとっても初耳である。

「ダークエルフなぞを栄誉ある騎士団に入れるなど、聞いたことがない。陛下の御身が穢れるぞ。大司教も反対なさるに違いないだろう」

「学園の卒業生を冷遇すると、魔女殿の逆鱗に触れますぞ」

 グズルが黙る。何か言い返そうと考えていたところ、

「双方の考え、相分かった。どちらの言い分にも検討すべきところがある。余も熟慮することといたす。辺境伯も本日は城に泊ってゆくがよい。王妃も会いたがっておるゆえ」

「いえ、結構」

 不機嫌な様子を隠すこともなく、グズルは退室した。国王と宰相は黙っている。やがて、国王の寝室の窓から、グズルの四頭立ての馬車が正門を出るところを見て、やっと息をついた。

「行ったか」

「は」

 国王も宰相も苦々しく馬車を見ていた。本来四頭立ての馬車を許されているのは王族のみである。しかも通常馬車に使われるのはグラニと言う馬型の魔物だが、グズルの馬車は四頭ともスレイプニールである。国王専用の馬車でさえ、スレイプニールは二頭で、残り二頭はグラニであった。

「グレイシアレオの件、いかが思う」

「ダイガンであれば討伐は可能でしょう。彼は竜公の称号をもっておりますので」

「左様か」

 国王が黙り、少し考える。

「もし、グレイシアレオを騎士団が討伐するとなると、倒せると思うか」

 今度は宰相が黙った。倒せるかどうかわからない。だが、仮に倒せたとしても被害は甚大だろう。沈黙で国王は宰相の考えを理解した。

「近頃、魔物が強大化しているのは事実と聞く。少し前にも、グランドバブーンが討伐されたばかりじゃ。何事かの前兆と思うか」

「それも合わせて調査いたします。宮廷魔術師にも占いを命じます」

「うむ」

 高位の魔法使いは占いにも長ける、と信じられており、政治の決断に占いを用いることは多くの国で行われている。実際は時魔法の使い手以外では素人と正答率に違いはない。

「もし辺境伯が強引な手法を使った場合、魔女ヨミ殿の協力は得られるとおもうか。辺境伯とひと悶着あったと聞くが」

「難しいかと。断られるだけならまだしも、最悪怒りを買う可能性すらあります。また、万が一協力いただいたとしても、気分次第で本当に辺境伯の領土を荒野にするやもしれませぬ。おやめになったほうが賢明かと」

「そうじゃな」

 七星使徒の中で最も世界に恐れられているのは闘神でも剣聖でもなく、魔女ヨミである。彼女が国内にいるのは、幸運なのだろうか、不幸なのだろうか。国王は深いため息をついた。

「本日は、もうお休みになったほうがよろしいかと」

「・・・痛み入る」

 国王の言葉に宰相は頭を下げ、寝室を出て行った。

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