少年、少女に魔法を伝授する①
「魔物には様々な種類がある。最も種類が多いのは、動物型だね」
本日の授業はヒショウによる特別授業だった。以前の野外訓練時にラクシャーサやラーヴァナと、想定外の強力な魔物が出現したため、一旦野外訓練は延期になった。また生徒たちは戦闘力においては高いものの、魔物についての知識が足りないと教師陣が判断し、本日の特別授業を行うことになった。
「動物型以外では、植物型、物質型、不定形型、そして人型がいる。この中で、最も警戒すべきは何型かな、クリスティーナ君」
「はいぃ、人型ですぅ」
「それはなぜだい?」
「人型は知能が高く、社会を作りますぅ。それが大規模になればぁ、例え災禍規模が小さい魔物でも、大きな脅威になるからですぅ」
「その通り。人型にはゴブリン、オーク、オーガ、巨人などがいる。以前の野外訓練の時にいたラクシャーサもそうだ。戦闘力が低いゴブリンでも、最上位種のゴブリンキングになると非常に高い統率力を持つため油断できない相手だ。最悪国家の危機になることすらあるので、万が一人型を見かけたら、必ず報告するように」
はーいとラルカが返事をする。ヒショウが笑みを浮かべた。
「だが魔物は、知能が低い種でも魔法を使用する種が存在する。なぜ魔法を使用できるかと言うと、魔物の体内には我々にはない、コアと言う臓器があるからだ」
ヒショウが黒板にコアの絵を描いた。
「コアには、術式が刻まれている。そのため魔物は詠唱せずに魔法が使用できるだ。知能が高い魔物の中には人間と同じように、詠唱する魔法を使用する者のいるがな」
「はーい先生、質問です」
ラルカが元気よく手を上げる。
「はい、なんだい、ラルカ君」
「その術式って、誰が書いたんですか?」
クラスからどっと笑いが起きた。ラルカはけげんな表情を浮かべている。隣りのゴンゾが恥ずかしそうに頭を抱えていた。
「ははは、誰だろうな。もしかしたら魔物の親かもしれないね」
ヒショウも笑いながら冗談で返した。
「強力な魔法を使用する魔物には強力なコアがあり、それは魔道具や魔導兵器を作るために必要な素材になることが多い。そのため、高額で売れるので、魔法を使用する魔物を討伐したら、少なくともコアだけは摘出して持って帰ったほうがいいかな。それにコアの内部から、魔石が見つかることも多いからね」
魔石はマナの結晶と言われている。少量でも大量のマナが抽出できるので、魔道具や魔導兵器のエネルギー源として重宝される。
「ギルドでは、魔物の強さを災禍規模として分類している。ま、災禍規模の判断には狂暴性や人に対する被害の大きさなども加味しているから、強さだけが評価基準ではないがな」
ヒショウは黒板に災禍規模を箇条書きにした。
・骨齧り 一般人でも対処可能
・人食み 義勇士一人で対処可能
・猛者切り ある程度経験を積んだ義勇士一人で対処可能
・村焼き パーティでの対処を推奨
・街薙ぎ 複数パーティでの対処を推奨
・城落し ギルド全体で対処必須
・国崩し 国単位での対処必須
「これが災禍規模ごとの対処の基本となる。因みにこれ以上の災禍規模も一応あるが、それらの魔物はすでに全て滅んでいるので、説明は省略する。当然だが個人及びパーティの力量によってはこの限りではない。だが村焼き以上の魔物は基本複数人数で相対する魔物となる。私たちが特別に許可した生徒以外は、決して村焼き以上の魔物と戦わないように」
そういうとヒショウは生徒たちを見渡し、真剣な表情で続けた。
「君たちは確かに、同年代の子と比べると強いかもしれない。だが、圧倒的に経験が足りない。私は、才能あふれた若い義勇士が無謀な戦いをし、命を失ったことを何度も見てきた。退却することは恥ではない。無謀なことをすることが勇気ではない。生き残る、これが最も大切なことだ。いいね」
みな、真剣な表情をしていた。
「特に城落し、国崩しの魔物の強さは一線を画す。万が一見かけたらひたすら逃げ、生きて帰ることを最優先にするように。とはいえ、出会うことはほとんどないがな」
怖がらせすぎたかな、と少し反省したヒショウは少しだけ声を明るくした。
「王都付近に出現する魔物とその災禍規模については覚えておくように。猛者切り以上の魔物については習性や使用する魔法の属性等も頭に入れておいてくれ。情報があるのとないのでは、勝率、生存率を飛躍的に高めるからね」
ここで鐘がなり、授業は終わった。
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