少年、少女たちと共闘する②
「それではみんな、パーティごとに分かれるように」
ヒショウの声で、生徒たちがパーティごとに集まる。今回は、以前と異なり事由に組んだパーティではなく、教師たちが生徒の力量や相性ごとに振り分けていた。ラルカも今回のパーティメンバーと合流した。
「えへへ、みんな、今日はよろしく」
ラルカが明るく挨拶をしたが、ライラはなにも答えない。カレンも気まずそうにライラをちらちら横目で見ているが、何もしゃべれない。クリスティーナはさっきからずっと「はわわわわ」としか言っていない。
「今日はうれしいよ。やっとライラとカレンとクリスでパーティを組めるなんて。僕は戦闘禁止にされちゃってるけど、楽しもうね」
「・・・」
ライラは不機嫌そうに黙ったままだ。カレンは小さい声で、「お、おうにゃ」と拳を軽くつき上げた。クリスティーナはまだはわわわと言っている。この四人はあまりに他の生徒と実力差が大きく、他の生徒と組ませると修練にならないと教師陣が判断し、一つのパーティにすることにした。因みにゴンゾは、前回の野外訓練で戦闘をカレンとクリスティーナに任せっきりだったことがバレて、違うパーティと組まされてしまった。
「それでは、みな、十分注意するように。行きなさい」
その声で生徒たちと指導役の教師、義勇士が出発した。ラルカたちも出発することにしたが、相変わらず空気が悪いままだった。
「今回は、大漁だったにゃ」
やっとカレンの顔に笑顔が浮かんだ。すでに魔物と三回戦闘し、始めの戦闘ではカレンの奇襲で音もなく魔物を倒し、二回目の戦闘はライラが魔物を正面から一撃で葬り、三回目ではクリスティーナの魔法で魔物の集団を一撃で全滅させた。
「どうしますぅ?もう課題は達成できましたしぃ、もどりましょうかぁ」
クリスティーナの言葉にカレンがうなずいたが、ライラは黙っている。
「どうしたの、ライラ。まだ、討伐続けたい?」
「・・・いや」
ぶっきらぼうではあるが、一応クリスティーナの案に賛成らしい。クリスティーナもカレンもほっと息をついた。
「じゃ、帰ろっか」
ラルカがそう言って歩き始めようとしたとき、遠くから何かが近づいてくる気配があった。
「?なにかにゃ」
「魔物でしょうかぁ」
全員、戦闘態勢をとる。
「あ、そういえば、ちょっとだけ強い魔物が近くに居たっけ。そいつが近づいてきてるみたいだね」
ラルカがつぶやいた。カレンとクリスティーナは、ラルカの言葉に少しいやな違和感を感じた。
(・・・ちょっとだけ?)
音が徐々に近づいている。ライラですら、緊張の表情を浮かべ、大斧を構えた。カレンとクリスティーナも臨戦態勢を整える。そしてついに、魔物が現れた。
「ぐへへ、みぃづげだあ」
「なっ」
「ひ、ひえええええっ」
「こ、こいつ、もしかして!」
現れたのはラクシャーサ、災禍規模は村焼きの魔物である。二本足で歩いているが、頭は獣のように多数の牙が生えており、そこから長い舌を出している。牛のような大きな角を四本も生えており、巨大な棍棒を手にしている。人型で、言語も操るが、知能は低い。だがゴブリン以上に狂暴で、戦闘力も高い。目撃例は少ないが、非常に好戦的で満腹でも人を襲うため、多くの人から恐れられていた。
「ぐ、ぐはは、ご、ごどもだ。うまぞうだ」
ラクシャーサはラルカたちを見ると、笑みを浮かべ、喜びの遠吠えを上げた。三人全員に緊張が走る。それを見たラルカは、
「ね、みんなもう疲れてるでしょ。こいつは、僕に任せてくれない?」
ウインクをするラルカに、カレンとクリスティーナはほっとした表情を浮かべ、頷いた。いくら何でも村焼きの魔物とは戦いたくない。
「それじゃ、僕が」
「どけ」
ラルカを押しのけ、ライラが前にでた。ラクシャーサは大声を上げて、手にした棍棒をライラに向けて振り下ろした。ライラはそれをギリギリの間合いでかわし、
「はあっ」
「がああっ!?」
横薙ぎにラクシャーサの腹に大斧を振るった。ラクシャーサの腹が出血し、苦悶の表情を浮かべた。ライラはその隙を見て、ラクシャーサの右足を膝から斧で立ち割る。ラクシャーサの体がぐにゃりと崩れる。その隙を見逃さず、首に大斧を振り下ろした。ラクシャーサの首が宙を舞い、絶命した。
(す、すごいにゃ、村焼きを、あんな一瞬で)
(はわわわわわ)
二人が驚いているが、ラルカも驚いていた。出会った頃に比べて、闘気も力も大幅に増している。以前にカレンが勝ったのがふしぎなくらいだった。
「おい、お前は戦闘禁止されてるんだろ。邪魔するな」
ライラは冷たい表情でラルカを見下ろす。だがラルカは、
「すごいすごい、ライラも強くなってるんだね」
にこにこ顔のラルカに、ライラは一つ舌打ちし、帰ろうと踵を返す。しかし、クリスティーナは飛んだラクシャーサの首を見て、何か考えている。
「どうしたの?クリス」
「は、はいぃ、ちょっと思ったんですけどぉ、ラクシャーサって人型の魔物じゃないですかぁ」
「それがなんだってんだ」
ライラが苛つく。
「ひ!は、はいぃ。たしかぁ、ラクシャーサってぇ知能は低いんですけれども、ゴブリンやオーガみたいに、一応社会があって、基本群れで過ごしているはずなんですけどぉ・・・」
その言葉に、ライラとカレンが顔を見合わせた。すると遠くから、誰かの悲鳴が聞こえた。
「あっちにゃ!」
カレンの声に、ラルカが走り出した。それに三人も続いた。
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