少年、魔物狩りに行く②
「でもいったい魔物、どこにいるのかにゃ?」
今回の訓練では魔物三体以上の討伐が義務付けられている。まずはそれを探し出すところから始める。
「えっとぉ、まずは、魔物の足跡や糞、食事の後を探すことから始めるみたいですぅ」
「お前の鼻でわかんねえのか?獣人って、鼻が利く奴が多いんだろ?」
「確かに人間よりは効くけど、犬の獣人じゃにゃいから」
「そっか、じゃあとりあえず足跡とか探してみっか」
四人は森の中に入り、索敵を始めた。しばらく歩くと、
「あ!」
カレンが声を上げた。
「ど、どうしたんですかぁ?」
「あっちの方向に、魔物が二体いるにゃ。何か食べてる音が聞こえるにゃ」
カレンは聴覚には優れているらしい。因みにラルカはすでに気配に気づいていたが、魔物の探索も含めて訓練なので助言していない。
「どどど、どうすればいいんだべ」
「ま、まずはぁ、気配を消して、ゆっくり近づくところから始めましょう、上手く背後を取れたらぁ、相手の不得意な間合いで奇襲しますぅ、万が一相手に気付かれたらぁ、前衛がまず魔物に相対するんですぅ」
「よ、よし、じゃあカレンが先頭になるにゃ」
気配を断つのに最も優れたカレンが先頭になり、魔物に近づいていく。やがて魔物の姿が見えた。黒い犬型の魔物二体が、仕留めたであろう獲物の肉をむさぼっている。
(あ、あれ、バーゲストかもしれないですぅ)
小声でクリスティーナが話す。魔物の情報は本で調べていたが、もちろん実際に見たのは初めてだ。
(バーゲストってどんな魔物だべ?)
(はいぃ、たしか、災禍規模猛者切りの魔物ですぅ)
(ど、どうするにゃ?初めから猛者切り二体って、結構きついにゃ)
(に、逃げましょうかぁ)
(大丈夫だよ)
突然のラルカの声に、大声を出しそうになったゴンゾの口をラルカが防いだ。
(大丈夫、あの程度の魔物だったら余裕で倒せるよ)
(で、でもぅ)
(クリス、あいつの属性は?)
(は、はいぃ、たしか火属性ですぅ)
(うん、だからクリスの放水で一撃で倒せるよ。一匹倒したら、もう一匹向かってくるから、ゴンちゃんとカレンの二人で簡単にやっつけられるよ)
(け、けんど・・・)
(大丈夫、信じて)
その言葉にカレンとクリスティーナが覚悟を決め、ゴンゾもしぶしぶ従った。バーゲストの背後で十分距離を取り、クリスが詠唱破棄で放水を放つ。一体に命中し、頭部を吹き飛ばした。もう一体の魔物が振り返り、クリスティーナに気付く。憎悪の表情を浮かべる。クリスティーナの前にカレンとゴンゾが現れると、魔物が勢いよく飛びかかってきた。しかし魔物より圧倒的な速さでカレンが魔物の腹をけり上げると、魔物は吹き飛び、後方にあった木にたたきつけられ、そのまま動かなくなった。
「・・・へ?」
カレンは拍子抜けしたような声を出した。
「ね?大丈夫だったでしょ?」
ラルカがウインクをした。カレンもクリスティーナも自身の想像以上に強いことに気が付いていないのだ。
(おい、やっぱりすげえな)
ライラと同じパーティを組んだ生徒が、もう一人の生徒に話しかける。
(ああ、あの魔物猛者切りだろ?たった一人で、しかも簡単に倒したぞ)
ライラはラルカに修復してもらった大斧に付いた血を拭っている。その足元には首を切断された魔物の死体が転がっていた。
(確かに、強い)
ライラたちに同行しているのは、長柄の指導を担当しているドゥニ教諭である。温厚な性格で生徒の人気も高い彼も、ライラの非凡な才能を高く評価していた。だが、ライラに笑顔はない。
(くそ、わたしは何をしているんだ。こんな魔物倒したところで・・・。今のままじゃラルカどころか、あの獣人にも抜かれてしまう。わたしは、絶対に強くならなくちゃいけないのに)
ライラに最も実力が近い生徒はカレンだったが、入学当初の試合では圧倒していた。しかし最近カレンは急速に実力を伸ばしている。カレンは入学後に多くの相手との試合を行い、対武器使用者との戦闘経験を積んだことで、本来の実力を出せるようになったのだ。現時点まだライラはカレンに対し無敗だが、確実に差は縮まっている。
「ライラさん、先ほどの戦闘は見事だったよ。しかし、もう少しほかの生徒と協力して戦うことを覚えたほうがいいのでは?」
ドュニ教諭の声も、今のライラには聞こえていないようだった。
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