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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、精霊と少女を契約させる③

「さ、クリス、ウンディーネの手に触れてみて」

 恐る恐るクリスティーナがウンディーネの右手に触れると、その瞬間彼女の中にウンディーネの精神が流れ込んできた。

「ああっ!!」

「クリスティーナさん!?」

 倒れこんだクリスティーナにナイチンゲール教諭が駆け寄ろうとするが、ラルカが手で制した。

「大丈夫」

 ラルカが微笑を浮かべる。ラルカ自身も初めガイアに触れたとき、同じ経験をした。苦しんでいるわけではない、いま彼女の中では“精神の相転移”とでもいうべき現象が起きている。クリスティーナは今までの彼女より高位の存在になることに戸惑っているだけだ。

「だいじょうぶだよ、クリス。君は君だ。昔も、今も、これからもずっとね」

 クリスティーナは徐々に落ち着きを取り戻す。そしてウンディーネが彼女の中に入り、姿を消した。

「ありがとう、ガイア」

 残されたガイアもラルカに微笑むと、姿を消した。

「どう?クリス。悪いところある?」

「い、いいえぇ。大丈夫ですぅ」

 クリスティーナがラルカの手を借りて、ゆっくりと立ち上がった。

「さあ、改めて、魔法撃ってみなよ。あ、無詠唱でやってみてね」

「ふへっ!?」

「ちょ、ちょっとラルカ君、いくらなんでもそれは・・・」

「だいじょうぶ、クリスならできるよ。信じて」

 ラルカはクリスティーナの右手に自身の右手を添えた。

「君はもうすでに、マナの操作に関しては無詠唱でできるくらいの実力なんだ。今まではただマナが足りなかっただけ。でも、今はどう?」

 クリスティーナは自身の中に巡るマナが、比較にならないほど増えているのを感じた。

「僕を信じて。ウンディーネを信じて。自分を信じて」

 ラルカの言葉は力強く、そして優しい。クリスティーナにもはや、迷いはなかった。丹田から流れ出るマナは彼女の体を水龍のごとき優雅な軌跡を描き、彼女の右手に集まり、そこから先ほどまでとは比べ物にならない強さの水の矢が放たれ、ダミーの鎧を砕いた。

「・・・・。」

「・・・・。」

 本人も、周囲もぽかんとしている。ラルカだけは手をたたいて喜んでいた。

「やっぱり、思った通りだった。クリスが魔法使ったとき、すぐに思ったんだよ。マナさえあれば詠唱破棄できるって」

 ラルカは一目で彼女の非凡な才能を見抜いていた。足りないのはマナの量だけで、術式の理解とマナの制御は他の誰よりも優れていると。

「し、信じられない・・・」

 ナイチンゲール教諭も周囲の生徒たちも驚きを隠せない。しかし、最も驚いているのは他ならないクリスティーナ本人だった。

「は、はわわわ、あわわわ・・・」

 パニックになりそうな彼女に、ラルカはさらに混乱するような言葉を発する。

「じゃ、次は水の最上級魔法に挑戦しよう♪」

「ふへへっ!?」

「そうだね、じゃあ水神の破城槌(ハイドロストライク)いってみよっか」

「む、むりですぅ~~~!!」

 クリスティーナの悲鳴がこだました。

「え?そうかな。あ、じゃあ初めは詠唱してもいいよ」

「そそそ、そういう問題じゃないですぅ。わ、私ぃ、今まで中級魔法も成功したことないんですよぅ?」

 水の最上級魔法の一つ、水神の破城槌(ハイドロストライク)は、貫通力だけで言えば炎帝の魔弾(ノヴァ)をも凌ぐ。だが大量の水の実体化が必要なため、消費するマナの量は炎帝の魔弾(ノヴァ)の二倍近い。ウンディーネとの契約で彼女の体内には今までと比較にならないほどのマナがあるとはいえ、水神の破城槌(ハイドロストライク)を放つには少々心もとない。

「大丈夫、ウンディーネと契約したのはマナだけじゃないでしょ?ね、ウンディーネ」

 その声にウンディーネが姿を現し、両手を広げると、巨大な水の塊を具現化した。

「こ、これはぁ!」

 クリスティーナの目が輝いた。彼女が追い求めてきた、世界でもっとも清浄な水である。ウンディーネは自在に水を出すことが可能な精霊だ。

「どう?あとはクリスしだいで、どんなポーションでも作り放題だよ?」

 クリスティーナの目に涙が浮かぶ。次の瞬間、ラルカを抱きしめていた。

「あ、ありがとうございますぅ。ラルカさん、うわーーん!!」

「ふ、ふわわ」

 抱きしめられたラルカは彼女の胸の中でもがいていた。小柄な彼女に見合わないそれは、ライラ以上の大きさを誇る。ラルカは窒息しそうになった。

「ちょ、ちょっと待って。クリス。今はこの水を操作して、水神の破城槌(ハイドロストライク)を放つ練習をしようよ」

 彼女の胸から何とか顔を出すことに成功したラルカが言ったが、クリスはまだ不安げだ。

「で、でもぅ、わたしぃ、別に強くなりたいわけじゃあ・・・」

 あまり気が進まない様子のクリスティーナに、落ち着きを取り戻したラルカが言葉をつづけた。

「力は無いよりあったほうがいいよ。力はそれ自体は正義でも悪でもない。それを使う人がそれを決めるんだ。そして僕は、クリスが持つ力は、正義の力になるって信じてるよ」

「ラルカさん・・・」

「その力を、クリスが守りたい人のために使ってみてよ」

「で、でも、本当に、水神の破城槌(ハイドロストライク)なんてできるでしょうかぁ」

 まだ不安そうなクリスティーナに、ラルカは自信をもって答える。

「だいじょうぶ、信じて」

 その言葉に、ウンディーネも優しく微笑んだ。クリスティーナとウンディーネの精神はすでにつながっており、前に進む勇気を与えた。

「よ、よしっ」

 彼女は両手を前にかざし、マナを体内に循環させ始めた。水神の破城槌(ハイドロストライク)の術式はすでに頭の中に入っている。その中からマナを水に変換する式を外す。そのかわりに実体化した水を操作する術式を追加した。そしてその術式の中から詠唱で描く術式を外し、完成した術式を体内に描く。それを始めての魔法、それも最上級魔法で行うクリスティーナに誰もが驚いていた。

 ――――樊に籠りし不敬なる者共、怯懦を恥じながら滅すがよい

水神の破城槌(ハイドロストライク)ぅ!」

 ウンディーネの産み出した水が龍を形作り、それが突撃しダミーを一瞬で消滅させ、その後ろにある壁も破壊し、巨大な穴をあけた。

「やったね!さすがクリス!初めてなのにすごいや」

 ラルカが喜ぶが、クリスティーナの反応がない。

「クリス?」

 クリスティーナの顔を覗き込むと、自身の魔法に驚いて気絶していた。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

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