少年、苦悩す⑦
ラルカたちはダイガンに教えてもらった教会に着き、さっそく門を開けた。すると中には二日前、騎士団とともにやってきた男の姿があった。
「誰かと思えば、お前たちか。ここはお前たちのような汚らわしい者たちがくるところではないわ。立ち去れ」
「リリ―――獣人の少女の葬儀を、ここでするというのは本当ですか」
ラルカの言葉に、教会の司祭エンリコが顔をしかめる。
「獣人は、聖輪教徒ではありません。なぜ、教会が葬儀を行うのですか。答えていただけませんか」
「貴様らには関係のないことだ。とっとと去れ。明日の葬儀も来るでないぞ、教会が穢れるわ」
エンリコはラルカたちを追い出すと、寝室に入り、面倒くさそうにため息をついた。
(まったく、大司教の命とはいえ、獣人などと言う汚らわしい者の葬儀など、こっちもしたくないわ)
恐らく大司教の目的は死体の始末だろう。葬儀が終わり次第、火葬せよと言われている。同時に、今回の事件の被害者に同情的な市民の人気取りも兼ねているはずだ。それならば大聖堂ですればいい、と話したところ、
「大聖堂に獣人など入れられるか」
と言われてしまった。
(まあいい。今回の件でわしは大司教の覚えもめでたくなった。近いうちに何らかの褒美があると聞く。明日までの辛抱じゃ」
エンリコは聖職者が本来禁止されている酒を飲むと、そのまま豪華なベッドに横になった。
「やはり、あの教会にリリは安置されているようだな」
「でも、だからと言ってどうすんだ?あの様子じゃ、オイラ達参列もできねえっぺよ」
「ひ、ひどいにゃ、ひどすぎるにゃ。お別れもできにゃいなんて。リリ、何にも悪いことしてにゃいのに・・・」
「我が君、ヒショウ先生へ協力を求めては?教会と言えど、ギルドの意向を無下にすることはできないでしょうから」
「・・・」
ラルカは黙っている。何かをじっと考えているようだ。
「明日、葬儀をするって言ってたよね」
しばらく無言だったラルカの急な発言に、全員顔を見合わせた。
「は、はい、あの司祭が“明日の葬儀も来るでないぞ”と申しておりましたし、ダイガンもそう申しておりました。教会の様子からも間違いはないかと」
「明日、リリちゃんが亡くなって、三日目だよね」
「あ、ああ、それがどうかしたのか?」
「帰ろう」
「え?」
「今日は帰って、いったん休もう。そして明日、また教会に行こう」
「だ、だが、あの司祭に、また追い出されるんじゃないか」
「そ、それに、やっぱりカレン、リリの葬儀は四界教でやりたいにゃ。あんな奴らにリリを弔って欲しくないにゃ!」
「あと、クリスはどうすんだ?あいつこのままじゃ、無実の罪をおっかぶされるべ。殺人罪は、死刑だっぺよ」
「大丈夫」
ラルカの顔は何処か晴れやかだった。何かを吹っ切った様子だった。
「必ず助けるよ。それが僕の誓いだから。絶対、助けるよ」
ラルカの発言に、全員どこか違和感を感じた。が、それ以上ラルカは何も言わず、ライラたちも何も言わなかった。
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