少年、苦悩す②
「我が君、お守りできず、本当に申し訳ございません。このジュリアン、一生の不覚にございます」
ジュリアンはラルカへの罪悪感、先ほどの者たちへの殺意等で感情がぐちゃぐちゃになっていた。ラルカは先ほどから何も言葉を発さないままだった。
「あ、ライラ、追いついて来たにゃ!」
ライラが小走りでラルカたちに合流した。
「すまん、遅くなった」
「ライラ、大丈夫だったべか?」
「ああ、心配ない。安心しろ、奴らはもう何もできんさ」
ライラは微笑んだ。膝をつき、ラルカと目線を合わせる。
「ラルカ、何か言いたいことあるんだろ?言ってみろ。きっとすっきりするぞ」
だだをこねる子供を諭すようなライラの言葉に、ラルカがやっと口を開いた。
「・・・僕のせいだ」
「え」
「僕が、クリスにポーション作りを頼んだから。僕が、あの二人を言葉で責めたてたから。僕が、余ったポーションをリリちゃんたちに分けたから」
後半は、嗚咽になっていた。
「僕、が、リリちゃん、を。クリス、を。僕が、僕、が・・・」
「ちがう!!」
叫んだのはライラだった。その言葉に、ラルカが顔を上げる。その顔は涙で濡れていた。
「それはちがう!お前は正しいことをした!!お前は、クリスの夢をかなえようとしただけだ!お前は、あいつらへ正義の鉄槌を食らわせようとしただけだ!お前は、獣人のみんなを、助けようとしただけだ!」
ライラがラルカを抱きしめる。ラルカはいやいやと首を振ったが、ライラは離さなかった。
「だれがお前を責めようが、だれがお前を非難しようが、わたしはお前を誇りに思う!わたしは、お前のやってきたことは正しいって、大声で叫んでやる!!」
「そうにゃ!ラルカは何にも悪くないにゃ!」
カレンも叫んだ。目に涙をいっぱい貯めながら。
「ラルカがいたから、スラムの人たちは病気治ったにゃ!ラルカがいなかったら、いっぱいいっぱい病気で死んじゃう人出てきたにゃ!ラルカは、何にも間違ったことしていないにゃ!!」
「我が君、フロイラン・ライラと、フロイラン・カレンの言う通りにございます。我が君のなされたこと、何一つ間違いなどあろうはずがありません。このジュリアン、我が君の偉業、後世まで語り継ぎましょうぞ」
ジュリアンも必死に熱弁する。先ほどラルカを罵倒した人間の顔を思い浮かべ、どのように苦しめて殺してやろうかと考えながら。
「ラルカ、一旦帰るべよ。いっぱい飯食って、いっぱい寝て、それから考えたほうがいいっぺよ」
ゴンゾが、わざと呑気な声を出した。その方が、ラルカが楽になると思ったからだ。
「やれやれ、まるでおままごとだな」
その声に全員が振り向く。怒りの感情がはじけそうになったが、声の主を見ると、恐怖で凍り付いた。
「だ、だ、ダイガン・・・!!」
「様をつけな、嬢ちゃんよ」
ダイガンが嘲るような冷笑を浮かべて立っていた。
「だから言っただろ、坊や。大人の世界に入ってきた奴は、子ども扱いされねえって。坊やは確かに腕っぷしは見事なもんだ。だが、大人の世界はな、力だけじゃどうにもならねえことだってあるんだぜ」
ラルカは、涙目のまま、黙って話を聞いていた。
「大人ってのはそんな世界を毎日生きてんだ。理不尽でどうしようもない世界をな。そこにガキが蜂蜜のような甘い正義感を振りかざされちゃ、そりゃ頭に来るだろうぜ。いいか、あの獣人の小娘が死んじまったのはおめえのその安っぽい正義感のせいだ。これに懲りたら、二度と大人の世界に首突っ込むんじゃねえぞ」
それだけ言うと、ダイガンは立ち去ろうとした。
「待て、ダイガン」
初め、ダイガンは自分が言われたことに気付かなかった。凶獣と恐れられた自分に、そんな物言いをする人間はほとんどいなかったし、した者は全員この世から消したからだ。
「何処に行く気だ、逃げるな」
発言したのはライラだった。ラルカを背中にかばい、ダイガンをにらみつけていた。
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