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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、苦悩す①

「ラルカ、どうしたんだ?さっきの話、何か気になることでもあったのか?」

 何も言わず歩き出したラルカに、訝しげにライラが尋ねる。

「わ、我が君、愚生が、何か無礼をしましたでしょうか」

「どうしたんだ、ラルカ。おめえ、ちょっと変だべ」

「・・・」

 ラルカは無言のまま、城の出口へと向かい、二日ぶりに外へ出た。大通りに向かって南へ歩き出す。

「これからどうする?」

「やっぱり、一旦学園へ行ったほうがええべか」

「ヒショウさんに会いに行こうにゃ。リリを、早く弔ってあげたいにゃ」

 カレンがまた涙を流す。と、ラルカの顔に向かって飛んでくるものがあった。

「っ!」

 ラルカの顔に当たったのは、石だった。飛んできた方向を見ると、貴族の青年と思われる人物が石を投げたようだった。

「人殺しめ!とっととくたばってしまえ!」

「そうだ、偽善者野郎が!」

 どこからか話が漏れたのだろう、王城の入り口を抜けた先にある広場に、群衆が集まっていた。恐らくほとんどが貴族の者だろう。石を投げた者たち以外も、ラルカに呪いの言葉を浴びせている。ラルカは何も言わず、そのまま歩き出した。ジュリアンは石を投げた人間を殺そうと右手にマナを集めたところ、ラルカに手首をつかまれ、阻まれた。

「二度とこの内壁に入ってくるな!この汚い下郎が!」

 再び石が投げられ、ラルカの頭に当たった。周りから歓声と笑い声が聞こえる。ラルカは何も言わず歩いている。

(この下郎共が。いずれ報いを受けさせてくれる。生きたまま臓腑を取り出してくれる。目の前で親族の首を刎ねてくれる。足先から顔まで皮を引きはがしてくれる)

 ジュリアンはラルカに手首を掴まれているため、手出しできず、彼らに対する殺意を必死でこらえていた。

「ほれ、何か言ってみろ、この卑怯者!」

 再びラルカに石が投げられる。が、その石をライラが掴んだ。

「ジュリアン、ラルカを頼む。ここはわたしに任せてくれ」

「承知した。さ、我が君」

 ジュリアンがラルカをかばうようにして、ラルカを連れていく。カレンとゴンゾも慌ててついていく。一人残ったライラは、石を投げてきた貴族たちに相対した。

「お、なんだ、ダークエルフの姉ちゃん、俺たちとやろうってのか?」

「へへ、今晩俺たちと付き合うって言うなら、許してやってもいいぜ、ふへへ」

 ライラは無言のまま、石を投げつけた貴族の青年へと近づく。目の前に来ると、その男の顔に拳を叩き込んだ。

「ぐべはっ」

 男は吹き飛び、地面に倒れ、動かなくなった。鼻はつぶれ、歯が十本ほどはじけ飛んでいる。周りの群衆は一気に静かになった。

「どうした、石を投げてみろ」

 ライラの言葉に返事を返すものはいない。

「どうした、先ほどと同じように、わたしを罵倒してみろ」

 皆、黙っている。

「おいお前、ラルカに卑怯者と言ったな。今この場でわたしと決闘しろ。卑怯者でないのならできはずだろう?武器がないのなら取ってくるがいい。わたしは素手で構わんぞ。安心しろ、死なないように手加減してやる。上手くできればの話だが」

 ライラは紫の闘気を拳に込める。仮にその拳で一般人を殴れば、頭はトマトのようにはじけ飛ぶだろう。その男は両手を横に振り拒否の意志を示している。顔は今にも泣きだしそうだ。

「どうした。他に誰かわたしと決闘する者はいないか。何人同時でもかまわんぞ」

 誰も声を上げるものはいない。無理もないだろう、ライラの戦闘力を仮に100とすると、この場にいる群衆は全員合わせても3にも満たない。一人の男が、少し後ずさりする。

「逃げるな!」

 ライラの怒声にみな、足がすくんで動けなくなった。

「お前たちの誰か一人でも、ラルカに何かされた者がいれば言ってみろ」

 声を出すものはいない。

「お前たちの誰か一人でも、ラルカが今回の事件の犯人と言う証拠を知っている者がいれば言ってみろ」

 誰も声を上げない。ライラはふん、と鼻を鳴らした。

「お前たちは、何もされていない相手に石を投げた。確たる証拠もないのに犯人扱いし、罵声を浴びせた。相手は、まだ十二の子供だ。あまつさえ、わたしの身体を要求してきた」

 ライラの言葉に、返事をする者はいない。皆、下を向いた。

「そして、今わたしに罵倒されても、何も言い返さない。まだ十五の小娘一人に脅えている。先ほどまで、集団で子供をいじめていたのに、少し痛い目を見ただけで小鼠のように震えている。人を大いに傷つけておいて、自身はかすり傷をつくことすら脅えている。小心極まれりだな」

 ライラは彼らを心から蔑んだ。ライラが彼らを見る目は、人間を見るそれではなくなった。

「恥を知れ」

 ライラが踵を変えす。去り際、地面へ唾を吐きかけた。彼らは一生涯消えぬ汚辱を心へ刻みこまれた。烙印は二度と消えない。彼らは今日から人ではなくなった。ただの卑怯で臆病で醜悪な、見下げ果てても過ぎることのない下衆となった。誰もライラに向かってくるものはいない。彼らの尊厳は地に落ちた。誰も言葉を発さず、呆然とその場に立ち尽くしていた。

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