少年、君は何をするべきか④
(ふむ、大筋は予想通りか)
ジュリアンは一人思案していた。心が沈んでいるラルカのためにもクリスティーナの無実を証明しなければならない。それにクリスティーナはラルカの有望な“妾”候補の一人だ。失うわけにはいかない。
「一つ聞きたい、アウグスト王子の毒殺未遂の件、真犯人は誰か?」
「知らぬ。本当だ」
短いが、それ以上何を聞かれても答えない、との意思を感じさせる返答だった。
「言い方を変えよう。その事件で、最も得をした者は誰か?」
「・・・」
ハルは黙った。答えは明らかだが、証拠がない。軽々しく発言はできなかった。
「此度のリリ殿殺害の件、死因は毒化だな?」
ハルは答えない。頬に汗が流れる。
「ちょ、ちょっとまて、お前、それって、まさか・・・」
ライラがジュリアンを見つめる。ジュリアンは視線をハルからそらさず、核心に触れた。
「此度の真犯人は、辺境伯か。それとも、教会か」
「めったなことを言うな」
ハルはそう言うのが精いっぱいだった。だが、ジュリアンはその言い方で確信を得たようだった。
「フロイラン・クリスティーナのみ釈放されないのは、教会からの圧力か」
「・・・グズルのほうだ」
騎士団長は観念した。理由はわからないが、この場で嘘はついてはいけない気がしていた。そして、その直感は正しい。
「ま、待つにゃ、じゃ、リリを殺した犯人って・・・」
「辺境伯か、大司教のどちらかであろう。もしくは、二人の共犯か」
「でも、なんでだ?あいつら、別にリリとは何の関係もねえべ」
「リリを殺すことが目的なんじゃない。恐らくその罪を我らに着せることが目的なんだろう。この前の舌戦で、恥をかかされたことの報復と、ついでに邪魔者のクリスを葬ろうとしたのだろう」
ライラの声に怒気がこもる。ブラバドに対する憎しみが再び燃え上がった。
「そ、そんな、ひ、ひどいにゃ。そんなことのために、何の関係もないリリを」
カレンの目に涙が浮かんだ。彼女の心は怒りより悲しみの比重が多いようだ。ライラがカレンの肩を抱きしめ、慰めている。
「全ては君の勝手な想像にすぎぬ。真実は全く違うところから出る可能性もある。調査はわたし達がするから、君たちは帰りなさい」
ハルの言葉に、ラルカが立ち上がり、何も言わず部屋を出た。慌ててライラたちも続く。最後に出たジュリアンが、ハルに丁寧にお辞儀をした。
「・・・はっ」
全員が退出すると、ハルの顔からどっと汗が出た。体が小刻みに震えだす。
(なぜだ?私はなぜ、こんなに安どしているのだ?)
理由はわからないが、先ほどまで自身を恐怖が支配していたことに今気づいた。
(いったいなぜ!?彼らは、私に殺気など向けていなかった。いったい!?)
ハルも騎士団長を務めるほどの男である。今まで何度も死線を潜り抜けてきたし、死を覚悟したことも何度もある。だが、今感じた恐怖は、それらよりはるかに強いものだった。必死に身体を抱くも、震えはなかなか止まらなかった。
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