少年、人の醜さを思い知る③
「ふー、おなかいっぱいだべ。もうなんもはいらねえだよ」
ゴンゾが膨らんだ腹をさする。食事も終わり、寮の自室に戻るところだった。
「カレンもにゃ。こんなにお腹いっぱいになったの初めてかもにゃ」
「まったく食べ過ぎた。子供じゃないんだから、腹が痛くなっても知らないぞ」
あきれたようにライラがつぶやく。因みにラルカはライラの背中ですでに夢の中だ。
「しかしあのお方の料理は見事であった。普段の料理も確かに素晴らしかったが、あのような繊細な料理もできるとは」
「はいぃ、最後のプディングも最高でしたぁ」
「オイラ三回もおかわりしちゃっただよ」
「カレンは五回にゃ!」
ライラは仕方ないな、と息をついた。とは言え怒る気にはなれない。皆安心から連日の疲れがどっと押し寄せていたところだった。もちろんライラ自身もだった。
「よし、じゃあ明日は授業だ。遅れるんじゃないぞ」
ライラは寝たままのラルカをジュリアンに託し、男性陣に別れを告げた。その時、遠くから走ってくる人影が見えた。
「あれ、あの人・・・」
「か、カレン!!」
「ポールさん?」
やってきたのは義勇士のポールだった。必死に走ってきたのだろう、汗だくになっている。
「どうしたにゃ?ポールさん。そんなに急いで」
呼吸を落ち着かせたポールに訝しげに尋ねる。走ってきたにもかかわらず、顔が青ざめている。
「ポールさん?どうしたんだ?」
尋常ではない様子に、ライラも尋ねる。
「みんなも一緒か、ちょうどよかった。どうか、落ち着いて聞いてほしい」
「・・・なんでにゃ」
「・・・・」
「・・・・」
カレンの言葉に、返事をする者はいない。ラルカも、ライラも、皆呆然としている。孤児のユン、リリ、フウが住んでいた小屋の中には、貧しくとも小さな幸せがあった。だが、今あるのは絶望だけだった。
「・・・なんで、なんでなのにゃ」
六人の目の前で、ユンとフウが泣いている。今までの幸せな生活がもう戻らないことを知り、言葉にならない感情を吐き出すように。大声を張り上げ、体の中からあふれ出る悲しみを洗い流すように。
「・・・なんで、なんで、なんでにゃ」
ヒショウの眼からは涙がこぼれている。拳を握り締め、床にたたきつけた。その衝撃で空になったポーションの瓶が乾いた音を立てて転がった。
「なんで、リリが死んじゃったにゃ!!」
冷たくなったリリにすがりつき、カレンが叫ぶ。夜空の月は、しかしそれでも美しく輝いていた。
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