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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、舌戦でも圧倒す。・・・だが③

「ラルカ・エルメルと申したな」

 国王が初めて口を開いた。威厳のある低い声だが、どこか父のような慈愛も感じるような声だった。

「その方の言、しかと聞いた。確かに一理ある。だが、本来ポーションの扱いの領分は教会にある。またポーションの配布が不足があったからとはいえ、許可なく製造および配布したことは問題がないとは言えぬ」

「申し開きもありませぬ。すべての責は私が負いますゆえ、どうか他の者にはご容赦を」

 ラルカの言葉に、ライラたちが驚いて顔を上げる、が、王が手でそれを制した。

「だが、そなたの行動により、多くの者たちの命が助かったのは事実じゃ。また、法令に当てはめてみても違反はない、そうだな」

「仰せの通りにございます」

 宰相が答える。

「それゆえ、罰に問うことはできぬ。また、行動も私欲に駆られてのものとは言えぬ。それどころか我が愛する臣民のためにおこしたことである。大義であった」

「ありがたきお言葉。しかしながら、此度の件は私一人の功績ではありませぬ。どうか、他の者たちにもねぎらいのお言葉を賜りたく存じます」

「責は己一人でとり、功績は他の者へ譲るか」

 王が機嫌よさそうに笑い、宰相をみると、彼が軽く頭を下げる。彼自身ここまで機嫌がよい王を見るのは久しぶりだった。

「では、今回の件、不問とすることで―――」

「なりませぬぞ、陛下」

 宰相が審議の終了を宣告しようとしたとき、謁見の間の扉の外から声が聞こえた。扉が開き、一人の聖職者が入ってきた。

「おお、大司教!!」

 グズルがほっとしたような声を出し、扉のほうを見た。ラルカたちも思わず振り向く。すると、ライラの顔がみるみるこわばり、怒気があふれそうになったが、ジュリアンがライラの肩を掴み、それを抑えた。

(あの野郎!!)

 ライラは拳を固く握りしめる。爪が手のひらに食い込み、血が流れるが、痛みは感じなかった。それほど強い憎しみがライラの心を支配していた。

(なんだ?フロイラン・ライラはなぜここまであの大司教へ憎悪をむける?何かあったのか?)

 ジュリアンが疑問に思う。が、今ここで確かめることはできない。

「ブラバド大司教、今は審議中になります。勝手に入られては困ります」

 宰相がめんどくさそうに尋ねた。内心、邪魔をしにきおってと思っているのだろう。

(ブラバドって、ライラが言っていた、あの)

 ラルカは大司教の名前を聞いて驚いていた。五年前、ライラの両親の埋葬を拒否し、ライラを街から追い出した司教の名前と同じ。何より、ライラの殺気がそれを証明していた。ブラバドはあの事件の翌年に死んだ当時の大司教に代わり、様々な裏工作の末、新たな大司教へとなっていたのだった。ブラバドは王を上回るほどの豪華な衣装と、多種多様な宝石をちりばめた杖をつきながらもったいぶったようにゆっくりと玉座へ近づいて行った。

「宰相閣下、此度の件は我ら教会に対する不敬にあたる。我ら教会は重大な懸念の意を示させていただく」

 ブラバド大司教はラルカ達を見下ろす。カレンを見ると、鼻をつまみ見るのも汚らわしいと言った表情をした。

「大司教、この者たちは貧しきものが救われるよう行動を起こしたのじゃ。それが教会への不敬に当たるとはどのような道理じゃ。申してみよ」

 国王も不機嫌な様子を隠していない。

「陛下、貧しきものに配るのが問題なのではありませぬ。獣人どもに配っていたのが問題なのです」

 その言葉に、今度はカレンの怒気があふれそうになった。

「獣人どもがしでかしたこと、忘れたわけではありますまい。のう、シザリオ辺境伯閣下」

 ブラバドが嫌らしい笑みを浮かべる。それにはグズルさえ顔をしかめた。

「・・・容疑者はすでに死罪になっておる」

「それだけではございませぬ。獣人に与することは我ら聖輪教の教えに反することでございますぞ」

「なぜでございますか」

 突然ラルカが、大きくはっきりとした声で反論した。一瞬驚いた顔をしたブラバドだが、ふん、と大きく鼻を鳴らし、さげすむような視線でラルカを見下した。

「獣人は罪深き存在だからだ。そんなことも知らんのか」

「そのようなこと、誰が仰せになったのでしょうか」

「そなたは聖書も読んだことが無いのか。よいか、教えてしんぜよう。“神は世界に自身の現身(うつしみ)として人をお作りになった。しかしながら罪深きものたちは獣と交わり、人と獣の間の子が産まれた”とある。すなわち獣人とは、罪深きものと獣の子孫なのだ。救われるものと救われぬ者が出るのは神の御意志だ。よいか、神は正しき人に慈悲をくださるのだ」


 ―――神は正しき人に慈悲をくださいます


「―――――っ!!!」

 っその言葉を聞いた途端、ライラの脳裏に過去の記憶が戻った。父と母の埋葬を許さなかったこの男の顔、物言わぬ両親を引きずりさまよった雨の冷たさ、埋葬するため掘った土の感触、押さえつけられ時の絶望、死んだトーマスの悪鬼のごとき表情。瞬間、ライラの感情が爆発しそうになる。

(いかん!!)

 ジュリアンが察知する。いまライラが暴れればすべて台無しになる。最悪力づくで抑えねばならぬ、と覚悟した。その時、ラルカが大げさに両手を広げた。

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