少年、舌戦でも圧倒す。・・・だが①
「出頭命令?」
アウグスト王子が来てから三日後の朝、ラルカたちは学園へ突然やってきた騎士に告げられた。
「そうだ。拒否はできぬ。本日今から王城へきてもらう」
「理由は?」
「不許可でのポーションの製造および売却についてだ」
「製造はしているけど、販売はしていないよ。それに製造を禁じている法律はないはずじゃない?」
「申し開きは王城でしてもらう。抵抗するのであれば、強制的に連れていく」
口では騎士はすごんでいるが、態度は丁寧だ。本人もこの命令に納得はしていないことが見て取れた。
「わかりました。今回の件、首謀者は僕だから、僕だけでいいよね」
「ラルカ!?」
叫ぶライラをラルカが手で制した。
「いや、六名全員が対象だ。一人も欠員は許さぬとのことだ」
「・・・・」
ラルカの顔が悲しみに暗む。騎士も申し訳ない表情を浮かべた。
「ラルカ、そんな顔をするな。我々は何も悪いことをしていないってお前も言ってたじゃないか」
ライラはラルカと目線を合わせるため片膝をつき、ラルカの頬を両手で覆い、うつむくラルカの顔を上げさせた。
「ごめんね、みんな」
「謝ることなんかない。わたしはわたしの意志で、やっただけだ」
「そうにゃ。堂々と胸張ればいいにゃ」
「私だってぇ、むしろお礼を言いたいくらいですよぅ」
「我が君に、どこまでもお供いたします」
「・・・なんでオイラまで」
ゴンゾの頭をライラがげんこつで殴る。
「うん、ありがとう。騎士様、承知しました。今から向かいます」
「うむ、では私は城へ戻り、報告しておく。なるべく早く来るように」
騎士が去る直前、クリスティーナをちらりと見て、会釈をしたように見えた。それに気付いていたのはジュリアンだけだった。
「ここが謁見の間だ。入室したら許可があるまで発言は許さぬ。無礼の無いようにな」
王城へやってきたラルカたちは、謁見の間の前まで通された。通常であれば王の代行官が裁判を行うことになっているはずだが、なぜか連れてこられたのはここだった。
(な、なんで王様まで出てきたんだべ)
(わたしが知るわけないだろう)
(だ、大丈夫かにゃ。カレン、礼儀作法なんてわからないにゃ)
「大丈夫ですよぅ。一般的な礼儀さえ守っていればぁ、陛下は揚げ足をとるようなことはしない方ですよぅ」
ライラたちはクリスティーナの言葉に少しだけ違和感を感じたが、それに気付く間もなく、謁見の間の扉が開いた。先頭のラルカが落ち着いた様子で足を進め、その後にクリスティーナとジュリアンが続く。慌ててライラたちも続いた。謁見の間正面の玉座にはまだ王の姿はない。向かって左わきに髭の長い厳格な背の高い男が立っている。恐らく宰相だろうか。右わきにいるのは衣装は豪勢だが、さえない風貌の陰気な男だった。下卑た笑みを浮かべているその姿にライラは嫌悪感を覚えた。謁見の間のレッドカーペット上で歩を進めるラルカたちの両脇には屈強な騎士がハルバードを構えて立っている。玉座からだいぶ離れたところでラルカは立ち止まり、跪いて頭を下げると、クリスティーナとジュリアンがそれに倣い、ライラたちもそれをまねた。
「・・・・」
ラルカは一言もしゃべらず、跪いたままだ。しばらくすると、突然騎士がラッパを鳴らす。その直後靴音が聞こえはじめた。ラルカはまだ微動だにしない。やがてその靴音が玉座の前で止まり、靴音の主が席を下ろした。
「面を上げよ」
玉座の左側にいる背の高い男の発言に、ラルカはゆっくりと頭を上げた。ジュリアン達もそれに続く。玉座には立派な髭を携えた王冠を被った男性が座っていた。威厳がある精悍な顔立ちではあるが、どこか優し気な表情にラルカは感じた。クリスティーナが顔を揚げると、それを見た王の表情がゆがむ。だが、それも一瞬のことで、すぐに威厳のある表情に戻った。
「名を名乗るがよい」
「ブレディス学園一年生、ラルカ・エルメルと申します。まことに陛下のご威光は太陽のごとく輝き、陛下のご慈悲は大海のように深く、拝謁いただくこと僥倖の極みに存じます」
ラルカの言葉に驚いたのは王や宰相たちだけでなく、ゴンゾたちもだった。意外な顔でラルカを見つめている。ラルカは神国ヴェレクにて枢機卿や教皇との謁見もしており、礼儀作法についても母エリステルから教わっていたため、一通りのことはできる。あくまで最低限ではあるが。
「それでは審議を始める。此度の件は」
「宰相、そこから先はこのわしが話そう」
宰相の言葉を遮ったのは玉座右脇にいる貧相な顔の男だった。宰相が僅かに眉間にしわを寄せた。
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