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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、王子と話す②

「グズル・・・?」

「フリード王子の母は彼の誕生の数年後に死に、その後グズルの妹が王妃となり、その子がアウグストだ。アウグスト王子が王になれば、彼は王の伯父だ、影の王になることも可能となる」

「そう言えば」

 カレンが何かを思い出したように口を開いた。

「入学する前にゃんだけど、オーザカさんが噂話してたのきいたにゃ。グズルは王に取り入って、自分が宰相になろうとしてるんじゃないかって」

「じゃ、じゃあ、グズルが犯人ってことだべか?」

「可能性はあるな。ラルカ、どう思う?」

 ラルカは作業しながら考えているようだ。

「ねえ、なんでグズルって人は、狂戦士の栄誉(グラディオル)と契約したんだろう」

「は?」

 突然話が飛んだと思ったライラは素っ頓狂な声を出してしまった。

狂戦士の栄誉(グラディオル)と数年前契約したって言ってたよね。そしてそれから狂戦士の栄誉(グラディオル)も傘下のパーティを増やし始めたって」

「そう言えば、ヒショウ先生が言ってたな。でもそれが、何の関係があんだ?」

「そう、ないから変なんだ。自分が影の王になるためなら兵を集める必要なんてないでしょ。放っておいてもアウ君が王になるんだから。だから、何か計画に狂いが生じたか、それとも他に理由があるのか」

「他の理由?」

「何だべ?」

 ライラとゴンゾが顔を見合わせる。

「我が君、一度整理をしましょう。まず、仮に十一年前のフリード王子殺害の真犯人をグズルとします」

「うん」

「その目的は、アウグスト王子を次期王とし、自身が傀儡子となること。その数年後、狂戦士の栄誉(グラディオル)と契約した。即ちその数年の間に起きた変化があるはず、とのことでよろしいでしょうか」

「そうだね、なにが起きたんだろう」

「騎士団長ですぅ」

 今まで会話に参加してなかったクリスティーナが突然口を開いた。全員の視線が集中する中、クリスティーナが作業の手を止めずに話し続ける。

「フリード王子がお亡くなりになったとき、当時の騎士団長も大けがをしたんですぅ。命は助かったんですけどぉ、結局その怪我がもとで亡くなってしまってぇ。その後今の騎士団長、ハル・ベルンシュタインさんが任命されたんですぅ」

「そうなんだ。それで?」

「ハルさんはぁ、貴族の出身ではあるんですけどぉ、平民の方々とも仲が良くてぇ、いっぱい平民の方を騎士に登用したんですぅ。だけどぉ、それがグズルさんは気に入らなかったみたいでぇ。だからぁ、もしかしたら狂戦士の栄誉(グラディオル)と契約したのはぁ、騎士団に対抗するつもりかもしれません」

「・・・・」

 みな、黙ってクリスティーナの言葉を聞いていた。クリスティーナがはっとして顔を上げると、気まずそうに目を伏せた。

「詳しいんだね、クリス。ありがとう、なんか分かったような気がするよ」

 クリスティーナは下を向いたままだったが、少しだけ頬を染めた。

「そっか、でも兵隊必要なら、なんで自分の私兵に頼らないんだべ。あいつ大貴族、しかも辺境伯だろ」

「ルクスカーナ王国では、貴族が私兵を王の直轄地や他の貴族の土地へ入れるのは護衛以外は基本禁止だからな。王都で自由にできる兵が必用になったんじゃないか」

 ライラの言葉に一同が納得したその時、部屋のドアが乱暴に開けられると、三人の生徒がずかずかと入ってきた。

「ふん、こんなところでこそこそと作っていたとはな。無法者どもが」

 アウグストが二人の従者の生徒を引き連れてきた。

(なんでここに、こいつが!?)

 先ほどまで噂をしていた人物の登場に、ライラたちが動揺する。平常心なのはラルカとジュリアンだ。

「アウ君、久しぶり。何か僕たちに用事?」

「平民の分際でなれなれしく話しかけるな、汚らわしい」

 羽虫を払うようなしぐさをする。

「始末しましょうか」

「ダメだよ」

 ジュリアンをラルカがたしなめる。

「よくここがわかったね」

「私は王子だぞ。どこにも私の目と耳はあるのだ。貴様ら、わかっておるであろうな。教会の許可なくポーションを製造するのは重罪だ。お前ら全員牢に入れてくれるわ、覚悟しておけ」

 それだけ言うと帰ろうとする。

「ねえ、アウ君。アウ君は、教会が有料でキュアポーションを売ることをどう思う?」

 アウグストの足が止まった。

「教会はキュアポーションを5アウグス(6万円ほどの価値)で売ろうとしていたんだけど、その金額じゃあ貧しい人は買えなくて、疫病の被害は増えると思うんだけど、アウ君はそれに賛成なの?」

「それが神のご意志だ」

「人の意志だよ」

 即座に反論され、言葉に詰まった。

「教会の神父は、金持ちは善行をしたから金持ちで、貧しい人は悪人だからそれを選別してるって言ってた。アウ君はどう思うの?」

「善行をした者が救われるのは当然だ」

「じゃあ、善行を積むってことは金を儲けることと同義なのかな」

「そうではない。善行を積んだものには神の恵みがある。だからこそ金も入るのだ」

「そうかな。善行を積んだ人が全員金持ちになるのであれば、貧しい人は全員悪人てことになるよね。じゃあ貧しい人を全員牢に入れる必要がある。そうすれば世の中善人だらけになるはずなのに、なぜしないの?」

「そ、それは・・・」

「それに、今すぐ生まれた子供はどう?その子たちは善行を積めていないよね。金持ちの子は生まれながらに善行を積んだってこと?」

「く・・・」

「今ね、スラムの獣人たちの間で重症化した人たちがたくさんいるんだ。僕たちはその人たちも助けたい。結果それは、王都全体の利益にもなるって信じてるから」

「黙れ!獣人どもなぞ何人死のうが知ったことか!奴らが死ぬのは自業自得だ!」

 再度立ち去ろうとする。その背中に、ラルカが声をかけた。

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