入り口へ
十八歳になった僕は、あの路地裏へと向かっていた。
紫恩さんから教わったことを守り、今なお僕は、魔法について知りたいと思っている。
僕は一つの質問をしていた。
紫恩さんと別れる前に、僕はとある質問をしていた。
なぜ僕の両親は魔術を習わなかったのか
「必ずしも全員が、魔術を習うとは限らない。君の両親は、魔術よりも人間達の世界に、興味を持ったんだろうね。」
少し間を開けて、話を続けた。
「これは君にも関係する事なんだかね、まぁ知っておいて損は無いと思う。覚えておくんだ、魔術師達は基本的に、『人の心が欠けている』ということを。」
その言葉に僕は、衝撃を受けた。というのも、僕には心当たりがあったのだ。僕の両親について、思い当たることがある。
「何となく察しているだろうが、君の両親も、魔術を習っていないとはいえ、本質は魔術師だ。だから、君に対して、熱く接する事が少なかったんだろうね。でも君の両親は、ほとんどの時間を人間界で過ごして生きてきた。だからそこら辺にいる魔術師達よりも、『ずっと心のある魔術師』だよ。」
その言葉に、僕はなんて返せばいいのか分からないけど、不意にこんなことを質問した。
━━━━━姉さんは、どっちなの?
その質問により、眉間にしわを寄せ、難しい表情をしていた。そして、出した答えは、当時の僕には難しい回答だった。
「私も君の両親と同じで、特殊なものでね。人の心はあれど、どこか欠落している。人を思いやったり、人の気持ちを理解するのは正直…苦手だ。」
本当に、なんと言っていいのか分からない。適切な言葉ないのだろうか、と考えていた。当時の僕では、言葉の引き出しがあまりにも少なかった。
「すまないね、尊夜。私は君が思っているほど聖人と言うわけではないんだ。」
悲しげな表情を浮かべ、僕に視線を送る。
ガッカリしたわけではない。姉さんからの言葉に嘘はなく、寧ろ、その正直な姿勢に安心感を覚えた。
「ま、私から言いたい事は、魔術師は嫌な奴が基本的に多いって覚えておいてくれ。もしかしたら、いつかの役に立つ情報かもしれからな。」
そんなことを思い出しながら、路地裏へと到着した。
果たして何があるのか、分からない。この先には、未知が海のように広がっている。
僕は深く、深呼吸をした。
いざ━━━━━路地裏へ
八年前の路地裏とこれといった変化は無かった。
多少、周りの建物や木々の劣化を感じられ、雑草も多くなっている程度だ。
奥へ、さらに奥へ
進み続け、月の光も通らない、暗い路地裏に溶け込むように、黒いローブを纏った人物が立っていた。
傍から見れば、不審者極まりないだろうが、恐る恐る近づいていく。
そして、その人物に近づき、声をかけようとしたが、先に口を開いたのは黒いローブの男の方だった。
「君が、竜胆尊夜君…かな?」
低い男性らしい声で、僕の名前を呼ぶ。
暗い夜に溶け込んでいるため分からなかったが、黒いローブの男は非常に若い。
「君のことは、紫恩さんから聞いているよ。八年経って、君はまた、この路地裏に戻ってきた。ここに来たということは、こっちの世界へと足を踏み入れる準備ができた…ということで良いんだよね?」
僕は縦に頷いた。
男が僕の動作を確認すると、一歩前に出る。
「一応言っておくんどけど、君のご両親については、心配しなくて大丈夫だ。後々、私達が事情を説明して、了承を得るよ。」
「出来るんですか?」
「もちろん可能さ。では、我々の世界の入り口を作るとしますか。」
そう言うと、男は振り向き、三歩先へ移動した




