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「ムタチオン」  作者: 使徒佐さとし
第三章 中層部編
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第21話 消息不明

 幸子はさとしに経緯を話した。幸子はこの後さとしを第3支部に連行するつもりだが、さちこは現在当時の未解決事件について再調査しているので、先にこの事件の解決をしようとしていた。

 幸子の家庭を崩壊させた犯人はムタチオンであり、突風を起こせる能力を持つ者である。その男の身長は190cmの長身であり、名は北村大輔という。北村の経歴を見ると、前科があり、過去2度警察と面倒事を起こしていた。北村の年齢は当時の事件の時で25歳だったので、現在は54歳になっている。しかし、あの事件以降北村の消息は不明で、死亡説も出いているくらいだが、幸子はまだどこかに潜んでいると見ている。

 幸子の家庭は非常に裕福であり、父親は貿易会社に勤めていて、何億円という資産を持っていた。しかし、北村によりそれらは一瞬にして失った。楽しい時間を一瞬にして奪い去った北村を幸子は絶対に許さなかった。

 その頃、新潟では西村が現在地を突き止め、しばらく動きがないので、みゆにここから300kmも離れている埼玉の高速道路のパーキングに能力で行けと指示した。さすがのみゆもこれほどの距離は走ったことはないがそんなことは言ってられない。みゆは全力で高速移動をして、300km離れているさとしの所に向かった。

 一方、さとしらは幸子とネットで突風関連のニュースを見ていた。すると先月の9月から立て続けに名古屋で突風の被害が起きていることが分かった。その影響で各地で食料が不足したり、ライフラインが寸断されたりなど、都市機能が麻痺している状態になっているという。既に全国ニュースで報じられていてこれは竜巻の災害の扱いにされている。さとしも既にこのニュースを知っていて前から薄々気になっていた。突風といっても被害は局所的で竜巻やスーパーセルなどの大規模なものではなかった。自然現象にしては不自然だということで、さとしも少々気にはしていたが、幸子の北村の能力を聞いてもしかしてと考えたのだ。さとしは名古屋に行くように指示を出した。さとしはあくまで任意同行なので、直ちに連行する必要はないので、いったん名古屋へ進路を変更した。

 名古屋に向けて車のエンジンを掛けると、みゆが車の方へやって来た。さとしと幸子は驚いた。なんとみゆは300kmもの距離をわずか50分で進んできたのだ。300kmを1時間もかからないということはみゆは既に新幹線を超える速度を出せるようになっていた。さとしは事情を説明し、西村達にも連絡を入れておいて、みゆも名古屋へ行くこととなった。

 現在の時刻は夜の10時であり、このままだと次の日の学校へは完全に間に合わないということで、西村と健太は学校に行き、みゆとさとしは次の日は休むことにした。名古屋までは車で5時間ほどかかる。このまま行けば名古屋には明日の朝に付く。

 車を走らせて2時間ほどたった。さとしとみゆは後ろの席に座っている。時刻は既に夜中の1時をまわっていた。幸子は後ろに座っているさとしらを時々ミラーで見ていた。

 「明日学校行けないね。」

 「仕方ないだろ、こんなことになってしまったんだ今更引けないよ。」

 「みゆは俺みたいにムタチオンの研究をして、一線を超えてしまったことをしているけど、嫌だと思ったことはないか?」

 「嫌だとは思ったことはないよ。だって私もムタチオンだし、生まれてきた時点でいろんな敵に狙われる運命だし。ムタチオンってなぜか引き合う性質があるからね。」

 「そうだよな、みゆと出会う以前でも普通にいろんなムタチオンと俺は遭遇してきた。日本には数十人しかいないと言われているけど、実際はもっといるんじゃないかって思う。俺は疑問を持ってる。」

 「疑問?」

 「ムタチオン同士ってなぜ戦うのだろうかって。この世界には人間離れした能力を持つ者がいるけど、その者同士で争い合う。」

 「私が知ってる中では歴史をたどるとムタチオンってどの時代にもいるわけじゃなくて、ある時突然世界に現れて争いが起きるそうだよ。イエスの誕生で西暦ができたけど時代の節目に世界規模の大きな戦争が起きてる。これってムタチオンと関係があるんじゃないかって。」

 「時代の節目にムタチオンが現れるか。たしかにここ最近歴史的な事件がよく起こるようになってるな。」

 「私の予想だけど、時代が変わろうとする時期にムタチオンが現れるんだと思う。」

 みゆは黙々と話していたが次第に声のトーンが小さくなりいつの間にか眠ってしまった。その後さとしも眠った。ムタチオンとは言え、二人はまだ少年少女である。昨日から連続で動きっぱなしで全く眠っていなかったのだ。ムタチオンは能力が優れているだけで、実際は普通の人間となんら変わりない。幸子は二人を見て複雑な気持ちになっていた。

 「最初は下層部の3人のことで何かを知ってると思ってあなた達の事を調べたらムタチオンだっていう情報を得たからあなた達の所に行ったの。私はムタチオンに大切な家族を奪われてる。だから私はムタチオンを許さない。だけど私自身もムタチオンだと分かったときはショックだった。だから非行をするムタチオンをこの手で仕留めると決めたの。二人共まだ高校生だったんだね。私は学生の時一人ぼっちでだれも相手をしてくれる人がいなかった。ムタチオンだと皆にバレて避けられてきたから。でも使徒佐くんとみゆちゃんも同じムタチオンなのに、楽しそうにしてるね。」

 これまでにたくさんのムタチオンと対峙してきた幸子は、高校生のムタチオンと出会うのは今回で初めてだった。幸子はM部隊はなぜあるのか疑問を持ち始めていた。

 朝になり、ようやく名古屋に着いた。さとしとみゆを起こして早速被害が出た現場に向かった。

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