第176話 密輸
2015年8月16日、M部隊第3支部では、高層部を含めた大型会議が開かれていた。その内容は、韓国にいる危険指定のムタチオンが、日本へ武器の密輸を行っているとの情報を得て身柄を確保する為の作戦が行われていた。
「奴は危険指定されている国際指名手配だ。強行手段はリスクが大きいので、戦略的に抑えるしかない。」
「奴の能力の情報はどこまで分かっている?」
高層部の里山健司は独自に調査した内容を報告した。
「奴は水を操る系統の能力です。体内から直接水を出す訳ではない、周囲にある水を自由自在に操る事ができる。」
「つまり、海際や川、排水口の近くだとほぼ無敵だということですか。」
「現代では、水道管などが街中の至るところに張り巡らされている。それは地方でも動揺、どこにでも水道管はある。つまり日本にいればどこにでも水源がある。奴にとっては水に恵まれた日本は最適な場所と言える。視界に入る場所に水源があれば、いくらでも操られるので、街で暴れられると甚大な被害を招くことになる。」
「奴の能力の特性を考えると、水が凍ってしまうような常に氷点下となる寒い地域は苦手のはずだ。温暖な南の地域にいるだろうから、奴を能力が使えない寒い地域に追いやる手もあるが、どうやって追いやるかだ。」
「中層部にスパイ活動を行わせて、奴をシベリア等の寒冷地に誘い込む事は出来ないかね?」
「奴もプロの運び屋だ。かなりの信頼を得ないと中々応じてはくれんだろう。その為には時間を掛けて奴の信頼を得なければならない。吉川、行ってくれないか。」
「私がですか。」
「これまで潜入調査をたくさん頼んでき来たが、今回は相当難易度は高い。長期戦も覚悟しなければならない。奴も情報に関しては鋭い、万が一に備えて君のM部隊の社員情報を一時的に凍結させてもらう。IDも登録情報も全てこちらで準備した。家族構成や職業など全て厳密に設定しておいた。情報の報告はM部隊に直接報告せずに、M部隊情報提供機関に報告してくれ。これは一般には知られていない秘密組織だ。一般市民同様に会社員を努めつつ情報を提供している。事務所を持たない個々で活動している組織なので身元がバレないようになっている。」
「分かったわ、行ってくる。」
「君は韓国語は得意だったね、完全な韓国人に成り済ましてくれ。韓国の当局には話を付けてある。君は完全に韓国の戸籍となっている。万全な体制だ。検討を祈る。」
こうしてM部隊第3支部の中層部、吉川は韓国の危険指定の運び屋ムタチオンを調査する為の大掛かりな潜入調査が開始した。




