第156話 紀元前のムタチオン
夜になり、街の灯りも消え住民達も寝静まった頃、宮殿の屋上で一つ灯りが付いていた。そこにさとしとエディンが語り合いをしていた。
「星が綺麗だ。現代ではまず有り得ない。」
「そなたの時代では夜でも明るいと言っておったな。」
「電気の事ですね。火を使わなくてもより明るく周りを広く照らす事が出来ます。」
「それだけでも信じられない話だが、そなたの技術力を見れば本当にあるのだろう。」
「先日襲ってきたセム族の族長とロイという奴ですが。」
さとしはエディンにムタチオンの説明をした。生まれながらにして人間離れした特殊能力を持った者の総称である。能力は様々で、現代においても既に数千人のムタチオンが確認されている。しかし実際には1万人以上いるとのデータもある。
「この時代でも少なくとも2人は確認してる。恐らく現代と同じくらいいると思う。」
「そのムタチオンというのはなぜ限られた数しかおらんのじゃ?」
「それは俺にも分からないんだ。ある研究データによればムタチオンの出現率は1000年だと言われている。ここは紀元前3800年だから、およそ6000年前、正確には5815年前。もし1000年説が正しかったら今はムタチオンが衰退している時期になる。」
「どうしてなんだ?」
「仮に6000年前、つまり紀元前3985年頃が出現時期だとすれば、それから185年が経過している。この時代の人の寿命を考えると、既に4世代ほど変わってる。少なくとも遺伝していると考えるのが自然だ。現代にあるんだけど、ムタチオン研究所があり、発表された論文には、ムタチオンは1000年周期で出現し、100~200年程度で衰退し消失すると書かれている。この時代では既に初出現から185年が経過してるから論文に書いてあった200年がそろそろ経とうとしている。そこから考えるともう人数は少ないはずだ。」
「なんだが難しい話だが要するに、いつの時代にもいるとは限らないという事じゃな。」
「その通り、ムタチオンの痕跡が無い、空白の時代もあるんだ。そしてどういう偶然かその空白の時代では特に歴史的イベントは起きていないんだ。」
「歴史的なイベント?」
「文明の誕生や、世紀の発明、人類に大きな影響を及ぼすような出来事を歴史的なイベント、または事件と呼んでいる。それらはムタチオンが繁栄していた時代と全て重なってるんだ。」
さとしは淡々と話を続けた。




