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時差1時間

窓の外、アムステルダムの夜を濡らす雨音が、静かな部屋に響いていた。

一日の終わり、スマホを手に取るが、ヘルミのアイコンを前に指が止まる。

(……今、あっちは何をしてるだろう。迷惑じゃないか)

同じ頃、ヘルシンキの自室で、ヘルミもまたスマホを握りしめていた。

『がんばって』

その五文字が、今の彼にとって重荷にならないだろうか。画面に打ち込んでは消す作業を、もう何度も繰り返していた。

その時、手元が短く震えた。

『アムステルダムは雨。ヘルシンキはもう雪?』

ダンからの、なんてことのないメッセージ。ヘルミの胸に、張り詰めていたものがじんわりと溶けていくような温かさが広がった。すぐに通話ボタンを押す。


◇┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◇


21時を過ぎても、アムステルダムの空はまだ淡い青色を残していた。

寮を出て、近くの運河沿いへ足を向ける。

スマホを開くと、フィンランドのニュースが目に入った。「ヘルシンキ、今年も白夜の季節へ」。

マドリードの冬に灯したあのキャンドルは、大切な思い出としてトランクの奥に眠っている。

今のダンを包んでいるのは、運河を吹き抜ける爽やかな夏の風。

アムステルダムとヘルシンキの時差は1時間。

読書しながら寛ぐヘルミ。

画面が震え、ダンからの写真が届く。オランダのレモネードの瓶と、夕暮れの運河。

『まだ昼みたいに明るい。夕食後にちょっと散歩』

『ヘルシンキもずっと明るいです。遠くにいるのに、不思議だね』

画面越しの短いラリー。お互いの街を照らす同じ夏の光が、二人の心を確かに繋いでいた。




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