4/20
冴える三日月
ミニゴールのネットが激しく揺れる。その音を聞きながら、ダンはピッチに視線を落とした。
(……打てた。いや、「置いて、弾けた」)
胸の奥の、一番柔らかい部分に刺さっていた棘が、ほんの少しだけ揺らいだ気がした。
ダニエルさん戦以来、右足が勝手に記憶の底から引っ張り出してくる『大きな円』の残像。
ラ・リーガの並のDFなら誤魔化せても、本物には通用しないと知っていた。その歪みが、プレースピードを殺していた。
その恐怖の正体を、今、アヤックスの狭いグリッドの中で、自分の左足と、コンパクトに畳んだ右足が証明して見せた。
だが、ダンの表情に笑みはなかった。
(球威が足りない。フォームを縮めた分、まだインパクトの瞬間の『爆発力』が逃げている。左足の盾も、一線級のDFなら力ずくで剥がしにくるはずだ)
治りかけている。だが、まだ道半ばだ。1年半というレンタル期間は、この未完成のプロトタイプを、CLの狂気のようなプレッシャーの中で『本物』に鍛え上げるための時間だ。
ダンはビブスで顔の汗を乱暴に拭うと、再び、牙を剥くような鋭い瞳で次のパスコースへと走り出した。




