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来たる決戦の時

UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ノックアウトステージ ベスト16 アヤックス-アーセナル アウェー戦 その1

アムステルダムから北海を越え、チームのチャーター機が降り立ったのはロンドン郊外の空港だった。

遠征用の大型バスに乗り込み、市街地へと向かうハイウェイを進む。初めて訪れる霧の都、ロンドン。

ダン・ホルトーリはバスの車窓に額を近づけ、流れる景色をじっと見つめていた。

車窓の向こうには、歴史を感じさせる重厚な赤レンガの街並みと、近代的なガラス張りの高層ビルが奇妙に調和した輪郭が広がっている。

薄暗い冬の雲の隙間から、傾いた陽光がロンドンアイの大観覧車を鈍く照らしていた。

テムズ川を渡る瞬間、遠くに見えたビッグベンの時計塔。

マドリードともアムステルダムとも違う、どこか厳かで、そしてフットボールの伝統が深く息づく街の空気が、ガラス越しにも伝わってくるようだった。

(ここが、プレミアリーグの聖地か……)

20歳になったダンの碧き瞳に、静かな闘志が灯る。

チャンピオンズリーグ・ベスト16。アウェーでのアーセナル戦。これ以上ない最高の舞台が、すぐそこまで迫っていた。

 

その日の夜、チームが宿営するロンドン市内の高級ホテル。

夜を徹して静まり返るラウンジの片隅で、ダンは懐かしい人物と向かい合っていた。

フィンランドサッカーのレジェンドであり、少年時代からダンの行く先を導いてくれた恩師、ハリ・モトマネンだった。

「わざわざロンドンまでありがとうございます、モトマネン先生」

「気にするな。教え子がエミレーツ・スタジアムで戦うんだ、来ないわけがないだろう」

モトマネンは温かい笑みを浮かべ、手元に置いたコーヒーカップに目を落とした。

「先だってのスパルタ・プラハ戦、それにドルトムント戦……素晴らしいパフォーマンスだった。マドリードで培った基礎の上に、アムステルダムの自由なフットボールが完璧に融合している。ダン、君は私の想像を超えるスピードで成長しているよ」

「……ありがとうございます」

偉大な先達からのストレートな賛辞に、ダンの胸が熱くなる。


しかし、モトマネンの表情はすぐに引き締まった。

「だが、次の相手はアーセナルだ。チームとしての完成度は今や欧州屈指。アヤックスにとっては間違いなく厳しい戦いになる。……いよいよだな、ダン。あの男と戦う時が来た」

「はい。マルティン・ユーデゴール……」

その名を口にするだけで、ダンの心臓がトクンと跳ねた。

「憧れ、でした。ずっと彼の背中を追いかけて、俺はここまで来ました」

「なら、思いきりぶつかってこい」

 モトマネンはダンの肩をがっしりと掴み、力強く告げた。

「今の君なら、今の君のフットボールなら、欧州最高クラスの司令塔を相手にしても十分に通用する。委細構わず、自分のすべてをピッチにぶつけるんだ。――ただし、怪我にだけは絶対に注意しろよ。無理な接触で自滅することだけは。私との約束だぞ」

「分かっています。最高の状態で、彼に勝ちます」

恩師の激励を受け、ダンの心はより強固になった。


そして、迎えた決戦の夜。

エミレーツ・スタジアムを埋め尽くす6万人の大歓声が、地鳴りのようにピッチへ降り注ぐ。アンセムが鳴り響き、運命のホイッスルを待つ緑の芝生の上。

コイントスを終えたアーセナルのキャプテン、マルティン・ユーデゴールが、アヤックスの14番を背負うダンのもとへと歩み寄ってきた。

「久しぶりだな、ダン。だいぶ前に会ったきりだったな」

ユーデゴールが穏やかな、しかし絶対的な王者の風格をまとった笑みを浮かべ、右手を差し出してくる。

「覚えているよ。カスティージャに、とんでもない素材の北欧の少年が入ってきたと噂になっていた。まさか、こんなに早くチャンピオンズリーグの舞台で戦うことになるとはね」

憧れの人の温かい掌を、ダンは力強く握り返した。

「お久しぶりです、マルティンさん。あなたとこの舞台で戦うために、俺もヨーロッパを渡り歩いてきました。今日は、手加減なしでお願いします」

「もちろん。歓迎するよ、ロンドンへ。だけど、僕たちもここで負けるわけにはいかないんだ」

ユーデゴールの瞳に、鋭いプロフェッショナルの光が宿る。

互いに手を離し、それぞれのポジションへと散っていく。

ダンの胸の奥には、誰にも明かしていない秘めたる決意があった。

(待っていてください、マルティンさん。俺は今日、あなたを越える。そして――)

動き出している未来への糸。それを手繰り寄せるためにも、今はただ、この目の前の90分間にすべてを懸ける。

主審がホイッスルを口に咥えた。

少年から青年へと脱皮を遂げたダン・ホルトーリの、新たな伝説の幕が今、ロンドンの夜空に切って落とされた。

背番号14はダンのこだわり番号です。

10にも憧れはあるけど、もっと14にこだわりが。

出すのつい忘れてしまうけど、背番号出す時は必ず14。

それと、現行のレギュレーションとちょっと違う。正直うっかり笑、もありますが、僕はノックアウトステージはベスト16からが良いな。

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