試合の中で、相手より学べ
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ7節 アヤックス-スパルタ・プラハ(アウェー戦)その2
後半30分を過ぎ、プラハの「ガッツ」にわずかな陰り(疲労によるズレ、遅れ)が生じて来た。
概ねダンの予測通りだ。
相手の予測の逆を突くポジショニングでボールを受け、焦って飛び出してきた相手の逆モーションを取ってファウルを誘う。
後半35分:
20m 右30°弱の位置からのFK。
FKであれば、懸河ドライブを落ち着いて蹴る事ができる。
プラハの壁は高くとも、懸河ドライブの弾道には無効。止める術は無い。
それでもゆったり助走を始め、骨盤の動きと小さな弧を意識して、インパクトのポイントを正確に捉える。
蹴り出されたボールはクロスバーを高く超えるかのようでいて、懸河の如く落下する。
ゴール左上にあっさりと吸い込まれて行った。
後半43分:
懸河ドライブを警戒し、前に出て潰すのか、一歩引いて守るべきか躊躇いが見られるプラハDF陣。
その心理のエアポケットを突き、ダンは鋭い切り返しからペナルティエリア外で右足を一閃。
地を這うような鋭いシュートがネットを揺らす。土壇場で同点に追いつく。2-2
そのまま試合終了。しかし追いついたものの、リーグフェーズ突破は次戦のアウェー・ドルトムント戦に勝利が必要な、絶望的状況だった。
追いつかれて不機嫌そうに葉巻を燻らせるベトベト会長。しかし、その鋭い眼光は真っ直ぐにダンを捉えていた。
(ダン・ホルトーリか。ウチの走るエネルギーを逆算してやがった。……気に食わんが、極上のインテリジェンスだ)
言葉なきレジェンドからの最大の賛辞であった。
試合後のロッカールーム:
「……次はドルトムントかよ。しかもアウェー」
「勝たなきゃリーグフェーズ敗退なんて……ほぼ絶望的だろ」
下を向き、ハナから諦めたような、情けない愚痴が若きメンバーから漏れ出す。アウェーの圧倒的な圧力と、スパルタ・プラハの肉弾戦で心まで削られた彼らの魂は、すでに折れかけていた。
「お前ら!気合いが足んね-! 次のドルトムント戦こそあいつらのように、ガッツでガッツンガッツンだっ!」
ダンの力強く大きな声が、プラハの夜にこだました。




