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屋根裏の花嫁――ソーンフィールドの三つの魂  作者: はまゆう


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第四話 灰色の国

 イングランドの空は、いつも同じ色をしていた。灰色の空、灰色の石造りの屋敷、灰色の人々の目。ジャマイカの熱い風を知る私には、その静けさそのものが、拷問のように感じられた。


 ソーンフィールド・ホールに着いた日のことを、私は今もはっきり覚えている。石造りの、荘厳だが冷たい屋敷。使用人頭のフェアファックス夫人という女が、私たちを出迎えた。彼女は最初、私を見て戸惑った顔をした。おそらく、噂はすでに屋敷中に広まっていたのだろう。「旦那様が外国から連れ帰った、少し変わった奥様」という噂が。


 夫は、私をこの屋敷の主として扱わなかった。私の部屋は用意されたが、それは屋敷の中心からは離れた、北側の一角だった。日当たりも悪く、いつも冷えていた。


「療養に適した静かな部屋だ」


 夫はそう説明した。だが私にはわかっていた。これは療養ではなく、隔離だということが。


 言葉の壁も、私を追い詰めた。屋敷の使用人たちの話す英語は、私が学んだものとは違う訛りを持っていて、聞き取るのに苦労した。彼らもまた、私の話す言葉——クレオール訛りの混じった英語——を、奇異な目で聞いていた。


 誰も、私に話しかけなかった。夫でさえ、必要最低限の言葉しか交わさなくなっていった。


 私は次第に、自室に籠るようになった。籠ったというより、籠らざるを得なかったのだ。屋敷の廊下を歩けば、使用人たちが目を伏せて道を空ける。まるで私が、触れてはいけない何かであるかのように。


 夜になると、私は窓の外を見つめる時間が増えた。ジャマイカでは、夜も虫や鳥の声で満ちていた。だがここでは、ただ風の音だけが聞こえた。乾いた、冷たい風の音。


 ある夜、私は夫の部屋に忍び込んだ。ただ、話をしたかっただけだ。彼が何を考えているのか、私たちの結婚に、まだ何か残っているものがあるのか、確かめたかった。


 だが彼は、私の姿を見るなり、まるで幽霊にでも遭遇したかのような顔をした。


「なぜここにいる」


「あなたと、話がしたくて」


「今すぐ部屋に戻れ」


 私は動かなかった。動けなかった、というのが正しいかもしれない。あの瞬間、私の中で何かが決壊した。二年以上溜め込んできた孤独と、怒りと、誰にも届かない言葉のすべてが。


 私は叫んだ。何を叫んだのか、正直よく覚えていない。ただ、あらん限りの声で、夫に、この屋敷に、この灰色の国全体に向かって、私はここにいるのだと、叫び続けた。


 翌日、屋根裏の部屋が用意された。


 夫はグレース・プールという女を雇い、私の世話——という名の監視をさせるようになった。屋根裏の部屋には鉄格子が取り付けられた。ジャマイカで見た、母の部屋とまったく同じ鉄格子が。


 私は悟った。ああ、とうとう私も、あの部屋の住人になったのだと。


 だが不思議なことに、鉄格子の中に入れられてから、私の心は、むしろ静かになっていった。もう誰にも言葉が届かないのなら、言葉を発する必要もない。もう誰にも見られていないのなら、笑おうと、泣こうと、獣のように吠えようと、それは誰の目にも「症状」としか映らないのなら——ならば、いっそ、その通りの生き物になってしまえばいい。


 正気を保つことに、もう何の意味があるだろう。


 夜、屋根裏の窓から、私は遠くソーンフィールドの庭を見下ろした。そこにはいつも、一人の若い女性の姿があった。地味な服を纏った、小さな体の女性。新しく雇われた家庭教師だと、グレースが教えてくれた。


 名は、ジェーン・エア。


 私はその名を、暗闇の中で何度か呟いてみた。この屋敷に来て初めて、私が自分の意志で口にした、他人の名前だった。



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