9:女子会に違和感なく入り込む男
くねくね動くアニーをジッと見つめ、「ちょっと気持ち悪いな」なんて真顔で呟くレンブラント様。
笑いを堪えるのが大変だった。
「っふ……そうですね。無視でいいと思いますよ」
「ん。それよりクリステルはそれだけしか食べないのか?」
私のプレートに乗ったビーフシチューとライ麦パンを見たレンブラント様に、何か分けようかと聞かれた。
そんなに入らない。
ビーフシチューは、スプーンに乗らないくらいのゴロゴロとしたお肉が四つも入っているし、お野菜もたっぷりだ。
何なら口を付ける前にレンブラント様に少し分けようかなんて考えていたくらいなのに。
「ほら、ステーキも食べるといい。焼き立てで美味しそうだ」
「食べ切れませんよ」
「あ、私欲しい!」
「ん? いいぞ、ほら」
分厚いステーキをなかなかの大きさに切り分けて、私のお皿の上に乗せようとしていたので、丁重にお断りした。本当に入らない。
その代わりというかなんというか、アニーがくれくれとお皿を突き出していたので、レンブラント様がナチュラルに与えていた。
「わーい、団長ありがとー。お礼にプチトマトあげますね!」
「嫌いなものを人に食べさせようとするな。残すくらいならもらうが……」
「あ、じゃぁ私の人参グラッセも食べてください」
サーシャがランチプレートのサイドで付いていた人参グラッセをせっせとレンブラント様のお皿に移し始めた。
「――お前、いつ見ても違和感なく女子会に入り込んでるよなぁ」
そんなときだった。ちょうど横を通りかかった副団長が私たち四人を見て、謎めいた感想とともにレンブラント様の横にしれっと座っていた。
副団長も、充分違和感なく女子会に入り込んでいると思うのだけど。
マリーやサーシャたち、あとから来た女子職員たちとも楽しくお喋りしながら、皆でお昼を摂り終えた。
「そういえば、副団長がこちらに参加されるのは珍しいですね」
サーシャが食後の紅茶を飲みながら、のんびりとした感じで副団長に声をかけた。
確かに珍しいなとは思った。ただ、割と自由な人なので、そんな気分だったのかなぁなんて思っていた。
「いやぁ、レンブラントはこれからどうするんだっての気になっててさぁ?」
「ん? これから? 今日は事務作業しかないから、終業になったらクリステルと帰るが?」
「あぁ、謝罪に行くのか」
「ん?」
「謝罪ですか?」
副団長に、二人して首を傾げるなと怒られてしまった。
レンブラント様を見たら、同じ方向に、同じように首を傾げていて、ちょっと笑ってしまった。
「クリステルの親父さんに謝罪だろうが! ご迷惑おかけしましたって。娘さんのことを護れず申し訳ございませんでした、婚約関係は継続したいって」
「あ。忘れていました」
確かに。今回の件について、謝罪は横に置くとしても、父にレンブラント様からの説明はお願いしたほうがいいだろう。
昨日の内に一応は伝えておいたけれど。差し止めるはずだ、という方向で。
「クリステルはいいよ。レンブラント……お前、帰り道デートしか考えてなかったろ? ったく…………何で俺が貴族のしきたりをツッコミしなきゃなんだよ!」
そういえば、副団長は平民出身だった。今は騎士爵を持っているけれど。
「あぁ、そうだな。マリウス、私は君という素晴らしい友が側にいてくれることに感謝し通しだよ」
「はいはい、俺もだよ」
二人がお互いを見つめ合いながらの愛の告白(?)に、女性職員たちが一斉にニヤニヤ顔になったのは言うまでもない。




