8:みんな読んだらしい
お昼の時間になり、レンブラント様が食堂に行こうと声をかけてくれた。
騎士団の食堂は、キッチンカウンターで食べたいものを注文して席に行くシステムだ。
席は、どの階級でも好きに座って好きに食べていい。
ただ、やはり多少階級で固まりがちではある。
騎士団で雇われている女性職員は十人しかいないので、皆で固まってわいわいとおしゃべりしながら食べている。
私が雇われた当初、準備なしにいきなり雇われたことと、原因がレンブラント様だったので、私の研修の全てをレンブラント様が担当した。
そこでお昼の摂り方なども、わざわざ女性職員の中に混ざって教えてくれた。
それ以降は、私は女性職員たちの中で、レンブラント様は副団長と偉い方々が集まりがちなテーブルで食べていた。
婚約してからは、なぜかレンブラント様も一緒に女性職員の中で食べている。
「受け取ったので、先に席に行っていますね」
「ん。私もすぐに行くよ」
恋人がいる職員は、お昼の時間を使って二人で過ごすようにしている者もいるので、席にいるメンバーはわりと入れ替わるが、基本的に五人前後はいる。
「クリステル、こっち!」
「アニー、いつもありがと」
「いいよぉ。で、団長は!?」
「いま調理待ちよ」
アニーは食堂横の物品保管室で働いているので、よくみんなの席を確保してくれている。
「ねぇねぇ、今朝の新聞本当なの!?」
「見ちゃったのね……」
「その反応は本当なんだ? 侮蔑してたの?」
「え、そっち?」
まさかお尻のほうじゃなくて、私の視線というか表情の方だったとは。
「だって、貴女を庇って転けたんでしょ? それでちょっと酷い感じで転けて、ズボンが破れたのは不運としか言いようがなくない?」
庇われてはいない。
エスコートはされていたので、転ける瞬間に大慌てで私の手を解放してはくれていたけれど。
あ。それが、私を庇っているように見えていたのね。
「え? ねぇ、新聞の内容はちゃんと読んだの?」
「大見出しを見て、本文を読もうとしていたら、レンブラント様のインタビューに気付いて……丸めた」
「…………まぁ、分からなくはないわ。普通なら差し止めるものでしょ? なんでインタビューに答えて記事にさせたのかしら?」
そういえばそれを聞いていなかった。
「団長は、クリステルのことを話したくて仕方ないんだろうなってのは伝わってきたけどね」
「あ、サーシャ! サーシャも読んだの?」
受付のサーシャがアニーの隣に座りながら、頷いた。やはり、サーシャも新聞を見てしまったらしい。
どうやら、印象としては私を庇って転けたら、不運にもお尻が丸出しになっただけ、のようだった。
あんなに桃尻丸出しにしていたのに、社会的に死ななかったのは奇跡ではないだろうか。
「でも、クリステルの印象は悪いままじゃない! ただでさえ金の力で婚約者になったなんて言われているのにぃ」
「私は別に気にしてないわよ」
「って本人も言ってるくらいだし、まぁ良いネタが出来たってことでいいんじゃない?」
「もー、クリステルもサーシャもドライすぎ!」
アニーがバンバンと机を叩いていると、レンブラント様が苦笑いをしながら近付いてきた。
「なんだか不機嫌そうだな」
「団長ぉ! 団長が悪いんですよ!」
「んむ? すまん?」
レンブラント様がアニーに怒鳴られて、首を傾げつつも謝っていた。謝るにしても理由を聞いてからでいいんじゃないかと言うと、レンブラント様がふるふると顔を振った。
「アニーが怒るときは大体クリステルのためだろうから、私が悪い」
「んあー! もぅっ! 団長、男前ぇ!」
アニーがくねくねと身体を捻らせて悶えているのを見て、流石に私もレンブラント様もドン引きだった。




