7:騎士団で働くようになったのは……
私が騎士団長付きの補佐官として働くことになったのは、レンブラント様のドジからだった。
貴族や豪商の子息令嬢たちは、十三歳から十八歳までの五年間を寄宿学園で過ごす。そして卒業後に、男女ともに社交界デビューをする。
令嬢たちは幼い頃からの婚約者と直ぐに結婚したり、婚約者を探すために茶会や夜会に参加することが多い。
一部、追加で学びたいと学園に残り教師の手伝いをしながら、勉強する者もいる。
私もその一人だった。
卒業して二年ほど組織運営や経理について学んでいた。そこで、補佐をしていた教師から、今年は王城文官の求人が何件か出ると聞いて、応募することにした。
希望していた財務官補佐の募集は一人のみ。応募者は何百人といるだろうが、貴女なら大丈夫だと教師たちに言われ、学園長から推薦状ももらえた。
面接当日、王城に少し早めに着いてしまった。
同じように早く来てしまった数人に面接官がこういった時にしか見ることの出来ない場所というのを教えてくれた。
「予想外に思うかもしれませんが、掲示板に城内での職員募集は結構出ているんですよ」
外部から雇うには、面接の他に素行調査や既往歴と健康診断なども必要なのだが、一度雇われると面接以外が不要になるらしい。希望した職務に就けなくても、職種変更という手段があるのだと教えてくれた。
なるほど、それで求人がなかなか出ないのかと納得。
殆どの人は直ぐに興味を失ったようで、待合室に戻っていった。
私の他に男性二人が掲示板の前に残っていた。
男性二人は知り合いのようで、外部募集は全くされないのに、内部募集はずっと出ているんだなと話しているのを聞き、よく見ると掲載日が書いてあることに気が付いた。
左が古く、右が新しいもののようだった。
古いものはどんなものがあるのかと五メートルほどある掲示板の端に行くと、ピンが外れて落ちかけているものを見つけた。こういうのはどうしても気になる性分なので、一度ピンを抜いて貼り直しすることにした。
「お待たせ」
「はい?」
騎士のような格好でシャツを腕まくりした、恐ろしく顔のいい金髪男性に声をかけられた。
眩しすぎて目が痛い。
「剥がしてくれていたんだね、ありがとう。案内しよう。ついてきなさい」
「はい? あの! どちらへ?」
「ん?」
髪のてっぺんが寝癖なのか一房はねていて、男性が動くたびにピコピコと動く。ちょっと面白い。
「ああ、君の面接場所はこっちじゃないんだ」
「え……そうなんですか?」
「あぁ、今日は人が多くて間違えやすいからね。迎えに来たんだ」
「ご迷惑おかけいたしました」
「ん、かまわない」
男性の態度があまりにも堂々としすぎていたことと、首にかけた入城証に面接での入城と希望部署も記入していたので、てっきりそれを見て呼ばれたのだと思い込んでしまっていた。
まさかそれが全て勘違いだなんて思いもよらなかった。
王城から一度出て、王城敷地内にある騎士団舎に向かっていると知って、何かが可怪しいと男性に話しかけて勘違いが発覚。
慌てて面接会場に戻ったのだが、時すでに遅し。
私の順番は終わっていた。
「す……すまないっ。私の勘違いで君の未来を奪ってしまうとは……」
「いえ。ちゃんと確認せずについて行った私が悪いので。気になさらないでください」
「君は、凄くいい子だな。ん? 財務官希望? ってことは、事務系のことや会計処理とかも、できるのかな?」
「ええ。一通りこなせますよ」
そう伝えると、金髪の男性がふわりと微笑み、レンブラント・ファルハーレンと名乗った。そして、じゃあ次の内部募集が出るまで、騎士団で働くというのはどうだろうか? と笑顔で言い放った。
まさか、そこからとんとんと話が進み、本当に騎士団で雇ってもらえるとは思ってもみなかった。
当初は、内部募集が出たら移動なんて話だったが、レンブラント様があまりにもクールなドジっぷりを披露するものだから、放っておけなくてずっと騎士団で働いてる。
ちなみに、その日レンブラント様が面接する予定はなく、翌週の男性見習い騎士と勘違いしていたらしい。
全部違うじゃないの! ってちょっと怒りそうになった。




