10:騎士団の危機
午後の職務のため、騎士団長室へと戻る途中で、レンブラント様に父が今日は家にいるのか確認された。
今朝、ダイニングルームでゆっくり朝食を摂っていた感じからいうと、父は今日は家にいそうだったが、慌てて出てきたために確認をしていなかった。
「たぶん、いるとは思います。確認しましょうか?」
「ありがとう。私の方で訪問の手紙を出すよ」
「承知しました」
君には迷惑をかけてばかりだねと、隣で少し落ち込むレンブラント様。
迷惑だと思ったことはない。彼のドジな部分も全て見ていて楽しいと思っている。
どうやら私は表情に出にくいらしいので、伝わっていないことが多い。
むしろ、私が迷惑をかけているのではないかと思うことが多い。
父が間違わなければ、彼が私と婚約することはなかっただろう。
レンブラント様は優しい。とても、優しい。だから、私が王城で働くチャンスを奪ったことを今も気に病んでいるのだと思う。
…………だから、婚約してくれた。
今はいい関係を築けていると思うけれど。きっかけは、少し苦い。
「クリステル?」
少し余計なことを考えすぎた。いつの間にか俯いたまま立ち止まってしまっていた。
これは私の悪い癖だ。
「すみません。少しボーッとしていました」
「……ん。行こうか」
「はい」
騎士団長室に戻ると、レンブラント様は直ぐに父宛の手紙を書いて、見習い騎士に届けさせていた。
職権乱用な気がすると漏らすレンブラント様に、副団長が騎士団の危機なんだから使えるものは使えと呆れていた。
「騎士団の危機? なぜだ?」
「お前なぁ。さっきも言ったが、婚約は破棄してもらうとか言われたら仕事になんねぇだろうが」
「……仕事には、来る」
仕事と恋愛や家庭の事情はあまりイコールさせたくはない。なので私も仕事はちゃんとするつもりだ。ただ、二人の会話に入っていくほどではないと判断し、手元の書類に集中した。
「――――テル、クリステル? 今いいか?」
「あっ、はい」
「集中しているときにすまない」
どうやら父からの返事が来たようで、手紙には仕事終わりにぜひ立ち寄ってくれと書いてあったらしい。
手土産などを用意してから行きたいから、父が好きなものを教えてほしいとのことだった。
「好きなもの? 面白いネタ、ですかね」
「あ、いや。食べ物とかワインとか。面白い話は……少し苦手だな」
危うく、レンブラント様の行動は面白いので、父は大好きなんですけどね、と口を滑らせるところだった。
ワインは辛口が好きなので、それを伝えるとレンブラント様が少し考えた後に、帰りに一度家に寄ってから私の家に向かいたいと言われた。
「付き合わせることになる。すまないね」
「構いませんよ」
そういえばレンブラント様のお屋敷に行ったことがなかったなー、なんて考えつつ書類仕事に戻った。




