21:はじめての……
◇◇◇
レンブラント様から好きだと言われた。愛しているとも。
顔が熱い。
ニヤけそうな頬にしっかりしろと叱咤した。
「ありがとうございます」
そう返事をした瞬間、レンブラント様がまた淋しそうに微笑んだ。彼はなぜこんなにも諦めたような空気を出すのだろうか。
彼から聞いた話を総合すると――――。
「ラッキースケベ、というやつですね」
「うん……ん? んん!? いや、なんか違うと思うのだが」
「偶然の産物を享受することですよね?」
「う……ん? そうではあるだが……す、スケベではないからな!?」
誰から教えられたんだと聞かれたので、副団長から聞いたと話した。レンブラント様が笑顔で明日対処すると宣言。目が笑っていないのだけれど、大丈夫なのだろうか。
「その…………私も、好きです。レンブラント様が勘違いして受理したと思い、これはラッキースケベだなと黙っていました」
「だから! スケベはやめなさい!」
レンブラント様が真剣な顔で中腰になると、バンッと机を叩いた。
怒らせてしまった。
「申し訳ございません」
「っ……驚かせたよな、すまない。クリステル、隣に座っても?」
「ええ」
どうぞと手で指し示すと、レンブラント様が嬉しそうに微笑みながら移動してきて、ピッタリと身体を寄せて座った。
――――近っ。
落ち着かない。
腰を浮かせ、レンブラント様からほんの少しだけ離れた。
「むっ?」
一瞬にして不機嫌顔になったレンブラント様が、せっかく空けた隙間を詰めてくる。
近過ぎて落ち着かない。また少しだけ離れたが、レンブラント様がどんどんと近付いてくる。
最終的にソファの端に追い詰められてしまった。
「あの……近いのですが」
「愛し合う者同士なんだ。問題ないだろう?」
問題ないのだろうか?
他人同士や同僚程度の仲なら、この距離感は駄目だろう。だけど私たちは婚約をしているから、問題ない……? 紳士と淑女の距離感……でも、婚約者だし。
うん。問題ないのだろう、たぶん。
「クリステル、私たちは両思いということでいいんだよな?」
「はい。そう、思います」
「ん」
レンブラント様が春の日差しのように柔らかく笑った。それはあまりにも眩しく美しくて、ポーッと見とれてしまっていた。
「クリステル、目を」
「め?」
「目を瞑ってくれると嬉しいのだが……」
ふと気付けば、両頬に手が添えられおり、レンブラント様の鼻と自身の鼻が触れるほど近くなっていた。
これは――――。
「キス?」
「ん……したいんだが…………良いだろうか?」
掠れるような低い声に、喉と心臓がギュムムムムムと締め付けられる。
「はい――――」
それは、甘く切なく苦しいのに幸せな、初めてのキスだった。




