19:それが理由ではない
絶望一色のレンブラント様へ、さらに言葉を続ける。
「王城での登用面接のこと、未だに悔いていらっしゃいますよね?」
そう聞けば、レンブラント様は必ず頷く。だって、彼は優しい。優しすぎるから、ずっとそのことを忘れられないのだ。
「一生……悔やみ続けるよ。クリステルの夢を、未来を奪ったのだから」
「もう、いいんです。それに、レンブラント様は勘違いしています」
私は王城で働くのが夢なのではなく、安定した職業かつ、自分の得意なことで国に何かしらでも携われればいいのだ。そうすれば、何があっても食に困ることはないから。
こうもハッキリと言うことは、少なからず戸惑いがあった。
騎士になるという強い思いを実現し、国や国民を守るために尽力しているレンブラント様たちの思いを踏みにじるようだったし、ともに働く資格を失いそうで怖かったのだ。
「……すみませんでした」
「うん? なんでクリステルが謝るんだ?」
「ですから、騎士様たちの志を――」
「騎士にだって、給料がいいからとか、モテるからとかで入るヤツは多いぞ?」
え、そういうものなの?
前に話を聞いたとき、国のためとか、国民のためとか、家族のためとかって、皆ちゃんと志があったけど。
その話をするとレンブラント様に苦笑いされてしまった。
「あー、うん。その女性に聞かれたら、そう答えるのが男の性だな。ははは」
あとは、騎士団の印象のためにも、あまりにも酷い理由は言うなと新人騎士のころに先輩騎士から注意されるそう。
まさか、そんな感じだったとは。
そういえば副団長がボヤいていたっけ。
『せっかく騎士になったのに、全然彼女が出来ないじゃねぇか』
『何のために騎士になったんだか……』
ああ言っていたのは、かなり本気のボヤキだったのだろうか。
「どういう理由であれ、あの面接の日のことを後悔しない日はないよ。でも、君と婚約した理由はそこにはない」
ハッキリと言われた。
理由ってなんなんだろうか? それなら何を後悔しているのだろうか? あのこと以外にも何かどデカいドジをやらかしていたのだろうか?
思い出そうとするが、小さくて可愛らしいクールでドジな姿しか思い出せない。
「それなら、なぜ婚約を? なぜそんなに怯えて……?」
「愛想を尽かされるのではないかと、ヒヤヒヤしていたと言ったよね?」
「はい――――」
レンブラント様が、怒りに耐えられなくなったら殴っていいと言って、話し始めた。




