18:「愛している」への答え
レンブラント様から、愛していると言われた。
初めて。
このタイミングで。
私には別れの言葉にしか聞こえなくて。
「「っ…………」」
ずっと言葉にしなかった『もしかしたら』が本当だったとしても、ちゃんと受け入れようと思っていた。
だけど、無理そうだった。涙が出そうだった。
…………でも、出なかった。
レンブラント様の顔を見てしまったから。
「真っ赤」
「っあ! いや、うん。あー……うん。その、そうなんだが、いや……まぁ…………うん」
顔も耳も手までも、全身を真っ赤に染めたレンブラント様が、ダラダラと汗をかきながら、暑いと言ってネクタイを緩め首元のボタンを外した。それだけでは足りなかったようで、立ち上がりジャケットを脱いでいる。
――――胸筋凄っ。
この状況でその感想もどうなのかと思うが、騎士団のジャケットの下が制服のシャツにボディハーネスなのだ。
胸筋というか、雄っぱいが、ハーネスでグッと押し上げられていて、あまりにもえっちだった。ネクタイが緩んだことでちょっと弛みが出来ていることも、なんか余計にえっちだった。
巷でこれが『えっちベルト』と呼ばれている所以が分かる。
「ごめん、その……選ぶ言葉を間違えた。君のことが好きだと言いたかったんだが……つい」
ソファに座り直し、しょんぼりしながら言われた。
まさかの、ここのタイミングでドジ発生させていたとは。
いつもはクールにやり過ごしているくせに、こんなときは真っ赤になるのかと思ったら、心臓がきゅんきゅんと締め付けられしまう。
ドジではあったけど、彼は本心を言ってくれた。それなら、私も言わなければならないだろう。
「レンブラント様、私も愛しています」
「っ!?」
少し落ち着き始めていたレンブラント様のお顔が、また真っ赤に染まった。
右手の甲で鼻と口元を隠しているが、口の端がによによと動いているのが見えるし、眉間は皺が寄せられているのに目が明らかに潤んでいる。
「…………ちょっと待ってくれ」
「はい?」
「その、嬉しすぎて泣きそうだ。深呼吸……しないと…………拙い」
いや、まさかそこまでとは思っていなかった。
どちらの思いのほうがとか推し量るのは違うとは思うのだが、想定以上に愛されているのかもしれない。
「拙いのですか?」
「ん。顔のにやけがおさまらない。クリステルより年上なのに……なんというか余裕がないな…………恥ずかしい」
あぁ、なんて可愛い人なんだろうか。
二人きりでいると、レンブラント様が世間一般に見せる顔と、私に見せる顔が違いすぎる。それだけでも、私は特別扱いされていたのに。なんで疑ってしまっていたのだろうか。
「申し訳ございませんでした」
「は……?」
「レンブラント様が私と婚約したのは、私への贖罪からだろうと決めつけていました」
そう伝えたときのレンブラント様のお顔は、まるで天国から突き落とされ、地獄を見てきた者のような絶望一色になっていた。




