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【連載版】婚約者が死んだ――――社会的に。  作者: 笛路 @書籍・コミカライズ進行中


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18/22

18:「愛している」への答え

 



 レンブラント様から、愛していると言われた。

 初めて。

 このタイミングで。

 私には別れの言葉にしか聞こえなくて。


「「っ…………」」


 ずっと言葉にしなかった『もしかしたら』が本当だったとしても、ちゃんと受け入れようと思っていた。

 だけど、無理そうだった。涙が出そうだった。

 …………でも、出なかった。


 レンブラント様の顔を見てしまったから。


「真っ赤」

「っあ! いや、うん。あー……うん。その、そうなんだが、いや……まぁ…………うん」


 顔も耳も手までも、全身を真っ赤に染めたレンブラント様が、ダラダラと汗をかきながら、暑いと言ってネクタイを緩め首元のボタンを外した。それだけでは足りなかったようで、立ち上がりジャケットを脱いでいる。


 ――――胸筋凄っ。


 この状況でその感想もどうなのかと思うが、騎士団のジャケットの下が制服のシャツにボディハーネスなのだ。

 胸筋というか、雄っぱいが、ハーネスでグッと押し上げられていて、あまりにもえっちだった。ネクタイが緩んだことでちょっと弛みが出来ていることも、なんか余計にえっちだった。

 巷でこれが『えっちベルト』と呼ばれている所以が分かる。


「ごめん、その……選ぶ言葉を間違えた。君のことが好きだと言いたかったんだが……つい」


 ソファに座り直し、しょんぼりしながら言われた。

 まさかの、ここのタイミングでドジ発生させていたとは。

 いつもはクールにやり過ごしているくせに、こんなときは真っ赤になるのかと思ったら、心臓がきゅんきゅんと締め付けられしまう。


 ドジではあったけど、彼は本心を言ってくれた。それなら、私も言わなければならないだろう。


「レンブラント様、私も愛しています」

「っ!?」


 少し落ち着き始めていたレンブラント様のお顔が、また真っ赤に染まった。

 右手の甲で鼻と口元を隠しているが、口の端がによによと動いているのが見えるし、眉間は皺が寄せられているのに目が明らかに潤んでいる。


「…………ちょっと待ってくれ」

「はい?」

「その、嬉しすぎて泣きそうだ。深呼吸……しないと…………拙い」


 いや、まさかそこまでとは思っていなかった。

 どちらの思いのほうがとか推し量るのは違うとは思うのだが、想定以上に愛されているのかもしれない。

 

「拙いのですか?」

「ん。顔のにやけがおさまらない。クリステルより年上なのに……なんというか余裕がないな…………恥ずかしい」


 あぁ、なんて可愛い人なんだろうか。

 二人きりでいると、レンブラント様が世間一般に見せる顔と、私に見せる顔が違いすぎる。それだけでも、私は特別扱いされていたのに。なんで疑ってしまっていたのだろうか。


「申し訳ございませんでした」

「は……?」

「レンブラント様が私と婚約したのは、私への贖罪からだろうと決めつけていました」


 そう伝えたときのレンブラント様のお顔は、まるで天国から突き落とされ、地獄を見てきた者のような絶望一色になっていた。




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