13:笑いが止まらない
父のツボが浅い問題は横に置くとしても、笑い過ぎである。
涙目になるほど笑うのは、流石にレンブラント様に申し訳ない。
「お父様、レンブラント様が困っているわ」
「んふふふふふ、うん……ぶふふ。ふはぁ。うん、ごめんねぇへへへへ」
笑いが長い。
「いやぁもぉ、可笑しくて! あ、怒ってないからね、理由だけ気になってて。差し止めるかと思ってたのになぁって」
「その……私の尻ごときで記事になるのかと思いつつも確認に行ったのです」
そこで放置しないのが、レンブラント様の人の良さなのよね。
「尻ごとき!!!!! うははははは!!!!!」
ちょっと、本当に煩い。どうにかならないのかしら。
「お嬢様に言われなければ、たぶん気にも留めませんでした」
「んふぅ……いやぁ、私も気にも留めないと思うから、そこは大丈夫だよ」
「新聞社で見知りの記者に声をかけようとしましたら、向こうから駆け寄ってきまして――――」
庭園での出来事は本当なのかと聞かれ、素直に頷いたそう。そして、記事の担当者は別らしく話を通してもらったら、引き換えにインタビューをさせてほしいと言われたとのこと。
「ははぁん? 新聞が売れると踏んで削除をのんだふりをして強行したか。嵌められたね?」
「いえ。別に差し止めなくてもいいかなと思い、記事はある程度そのままでいいと言ったんです」
「「は!?」」
つい。驚きすぎて大きな声が出てしまった。それは父も同じようで、口をぽかんと開けている。
「いえ、お嬢様の部分は修正をするように言っていたので、嵌められたのは嵌められたのですが…………一時間近くクリステル――お嬢様の素晴らしさを伝えたのですが、ほぼ書かれてていませんでした」
「え、そこぉ!? クリステルについて、そんなに話すことある!?」
「足りませんが!?」
レンブラント様が前のめりで父に説明しようとしたので、慌てて止めた。興味本位で聞きたくはあるが、父とともには聞きたくない。
「正直なところ、私の無様な記事が出るのは歓迎だったのです。自分で言うのもおかしな話なのですが、妙に神格化されているようなことが多く…………その」
レンブラント様がチラリと私を見た。何が言いたいのだろうか。私には分からなかったが、父には分かったらしい。
「ははぁん。言い寄られてる?」
「はい」
「しかも、伯爵家程度ならうちのほうが利点あるから乗り換えないか?系もいる?」
「っ…………はい」
――――なるほど。
だからレンブラント様は、記事のことを気にも留めていなかったのか。
「メーヴィス伯爵やお嬢様にまで迷惑がかかることに思い至らず、誠に申し訳ございませんでした」
「うん? 迷惑? 何が?」
「無様な男と婚約している、公共の場でわいせつ行為を犯した者の婚約者など……破棄されても可怪しくはないと…………クッ」
「うはははははは! ふぐぅ……ぅひぃぃぃぃ! 息がっ! 苦しいぃひひひひひ」
なぜそこで大爆笑なんだ父よ。
「レンブラントくんがクリステルを好いてくれてるのが分かっているからね、そんな些細なことで破棄なんてしないよ」
声を震わせながら父がそう言い放つと、レンブラント様が史上最高に可愛い照れ笑いをしていた。




