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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
賢者編
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96 似た人種


 いやぁ~、とても良い露天風呂だった!


 浴衣に着替えた私は、自販機でコーヒー牛乳を買いながら感慨に浸る。


夏芽(なんか、一気に頭がすっきりしたような気がするわ)


 更衣室から出てロビーに行き、適当な窓から夜景を見る。ここは二階だが、それでも綺麗な光景だった。


 都会の喧騒から少しだけ離れたここは、田舎チックなところもあるが月明かりに照らされた雄大な自然は、それだけで人を癒してくれる。


夏芽(しかも、ディナーの時は穂塚君と一緒だしね。気合い入れて、メイクしますか!)


 瓶に残ったコーヒー牛乳を飲み切り、最後に景色を一目見ようと目を凝らして窓ガラスを睨む。


 そこに、私の後ろから3人の外国人観光客の人たちの声が届いた。


夏芽(……? 何言ってるか分からないけど、あの発音はヤンちゃんの国と同じ嘘零語かしら?)


 まあ、ここは様々な国の人たちが観光に来ているし、別に珍しくもないだろう。


 直接見るのは憚られるので、窓ガラスに反射した彼らを興味本位で観察する。


 3人はそれぞれがコーヒー牛乳を持ちながら、ロビーを見て回る。


夏芽(……へー。あの入れ墨と黒人はかなり強いわね。特に黒人の方は、さっきから入れ墨を守るように死角にいながら歩いてる)


 本で聞きかじった程度の知識を並べながら、彼らの戦力をなんとなく想像する。


夏芽(すごいわね。まるで、今から人さらいでもするかのよう)


 のんきにクレーンゲームで遊んでいる姿からは想像もできないほど、彼らの肉体からは強さが醸し出されていた。


 というか、さっきから胸ポケットが妙に膨らんでるのは気のせいよね? そうよね?


 なんか拳銃の形に見えるが、深く考えるとドツボにはまりそうなので、これ以上は考えないことにする。


 それより、一番気になるのが、案内人らしき優男だ。中肉中背の彼は、笑いながら入れ墨にガイドをしている。


 一見すれば、そこまで気になるようなところはない。それどころか、あの3人のなかでは一番弱そうですらある。


夏芽(……けど、なーんか気になるのよね。漠然と似てるやつを知ってるせいかしら?)


 そう、響生と呼ばれている彼に、私は弟と似たものを感じるのだ。


 体の使い方も、言動も、何もかもが涼斗とは違う。けれど、なぜか似たものを感じる。



ワン「……クソッ! なんだこの機会は!? まったく取れねぇぞ!」


ユッケ「イエスボス」


響生「落ち着いてくださいワンさん。これはクレーンゲームと呼ばれるものです。これは、確率でアームの力が強くなるので、何度もチャレンジするのが基本ですよ」


ワン「ハッ、本当にそうかぁ? 俺に取らせないために、店側が遠隔操作してんじゃねぇだろうなぁ?」


響生「そんなわけないですよ。まあ、欲しければ通販で買った方が確実ですよ」


ワン「そんな面倒な事、する必要もないねぇ。こうすりゃすぐ取れるだろ!」


 ワンは、大きく腕を後ろに振りかぶり、クレーンゲームのガラスに向かって思いきり拳を放った。


 しかし、その拳はガラスに触れる直前に何者かの手によって止められる。


響生「駄目ですよ、ワンさん。言いましたよね? ことが起こるまでは騒ぎを起こさないと」


 止めたのは響生だ。一般的な体躯しか持ち合わせていない彼は、こともなげにワンの拳を受け止めた。


 拳を止めた瞬間に生じた『パァン!』という音から、決してちっぽけな威力ではないことは容易に想像がつく。にも関わらず、彼は身じろぎ一つせずワンを止めたのだ。


ワン「……チッ! 分かったよ。おい、部屋に戻るぞ」


 ワンは、不機嫌そうにしながらも黒人を連れて部屋へと戻っていく。


 響生は少し遅れて、彼らについていった。



夏芽(……なるほどね。彼もそっち側なんだ)


 背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、私は身震いする。


 そう、今私は弟と彼を重ねていた。


 見た目に合わない怪力や体力、これらは全て弟に似ている。


 昔、弟に『なぜ、そんなに強いのか?』と(恥を押し殺して)聞いたことがある。


 その時の返答は、まだ鮮明に思い出せた。曰く


涼斗『なぜ強いのか? 理由は単純、俺だからだ。

 ―――ああ、分かっている、夏芽の言いたいことの意味はそういうことではないだろう? そうだな、強いて言うとすれば凡夫を強化する世の理があるから、さ。ホルダーと呼ばれている』


 まあ、鮮明に思い出したところで、今でも理解はできないが。


 しかし、今大事なのは彼らの目的だろう。ただの観光目的ならばいいが、もし私や仲間に危害を加える気なら――。


穂塚「……お、おう夏芽さん。早かったね、もう終わったんだ……」


 そこまで考えた辺りで、穂塚君が浴衣姿であらわれた。


夏芽「う、うん……。っていうか大丈夫!? すごい顔が赤いよ」


 現れた穂塚君は、顔どころか全身が赤くゆであがっており、とても平常には見えなかった。歩き方もフラフラで、気を抜いたら地面に倒れてしまいそうだ。


 私はすぐに肩を貸し、近くの椅子に座らせる。


夏芽「だ、大丈夫?」


穂塚「あ……うん。ちょっとのぼせただけだから」


穂塚(あの後、3人組が出た後も怖くてしばらくの間留まってたせいだけど)


夏芽「はいこれ。近くの自販機でスポーツドリンク買ってきたから飲んで」


穂塚「あ、ありがとう夏芽さん。すぐにお金払うから……」


 バッグから財布を取り出そうとする穂塚君に、私は少し苛立ちを感じた。


夏芽「いいから、早く飲んでください!」


 キャップを開け、無理やり穂塚君にドリンクを飲ませる。


 穂塚君は、少し驚いた顔をするが私は有無を言わさずに飲ませ続けた。


 そして、少し時間をおいてようやく穂塚君の顔に白みが戻ってきた。



夏芽「ようやく、戻ってきたね」


穂塚「本当にありがとう夏芽さん。じゃあ、すぐにディナーに行こうか。時間もないし」


夏芽「――待って!」


 急いで立ち上がろうとする穂塚君の手を掴み、無理やり椅子に引き戻す。


穂塚「……どうしたの? 急がないと」


夏芽「ごめん。この埋め合わせは絶対に後でするから。それよりも、穂塚君と話したいことがあるの」


 本当は、ディナーに行きたかったのも私が穂塚君と話したかったからだ。酒でも飲めば、少しでも彼の本音を引き出せると思ったから。

 だが、こんなヘロヘロの状態の穂塚君と無理やり行ったところで、どうせまともな会話など出来るはずもない。


 目的は、一緒に『食べる』ことではなく『話す』ことなのだ。



夏芽「穂塚君ってさ、私のこと()()()()よね?」




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