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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
賢者編
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94 到着! 堅称神社!


 堅称神社は、綾都の中でも随一の歴史を誇る。


 その昔、この国を治める【青鹿家】が国を管理・統括するために建てられた宗教的な建造物で、大きさは16万平方メートル。


 当然、常人には一日で回り切ることはできない。なので、普通は数日掛けてゆっくりと回るのが通例だ。



夏芽「見てみて穂塚君。この屏風。縄一本で龍を追い払ったんだって。すごいね王様って」


穂塚「そうだね。俺はそんな強そうな獣には近づきたくもないよ」


 車を駐車場に停め、俺たちは神社を見て回っていた。シーズンオフということもあり、人は少ないがそれでも活気ある街並みだった。


 近くの喫茶店に寄り、抹茶ラテを飲みながら俺たちは会話を弾ませる。


夏芽「つまりね、この神社は昔から神が住む天界に続いてたっていう逸話があるくらいなの」


穂塚「まあ、確かにけっこう標高も高いしね」


夏芽「で、この標高でしか取れない貴重な鉱石や水が近隣の地域経済を活性化させてたんだ」


穂塚「へ~。博識だね」


 まあ、弾んでいるのは夏芽さんだけで、俺は適当に相槌を打つだけなのだが。


 しかし、生まれてこの方ずっと他人の顔色を窺って生きてきた俺にとっては、軽いものだ。


 適当なタイミングで相槌やら質問をぶつけておけばそれなりに会話が成立する。



 そのまま、夏芽さんと様々な建物を見て回り夕焼けが見える時間になった。


夏芽「そろそろ宿に行こ!」


穂塚「そうだね。じゃあ、駐車場に――」


 俺が現在地を確認しようとマップを開いた時、子供の泣き声が聞こえた。


 夏芽さんも気付いたのだろう、声が聞こえる方向へ首を向ける。


夏芽「……迷子かな? どうしよう穂塚君」


穂塚(……ん?)


 その『どうしよう?』というのは、助けるかどうかという二者択一の問い、でいいのだろうか?


 それなら迷うべくもない。


 今日は朝から車で移動したし、歩き回ったし色々とあった。こんな疲れた体に鞭を打つなど俺にはできない。


夏芽「やっぱり警察は大げさすぎるかな? 近くの迷子センター探すか、もしくは私達で保護者を見つけるしかないよね?」


 なるほど、彼女にとっての『どうしよう?』とは助ける方法の種類だったようだ。



夏芽「――君、大丈夫? お名前言える?」


 夏芽さんは、俺の返答を聞く前にさっさと子供のところへ行ってしまう。


 子供――いや少女はライトグリーンの髪色を三つ編みにし、綺麗な蒼い目を持っていた。年は10歳に

届くかどうかというところ。いや、こんなところで泣きわめく子供ならば10歳未満だろう。


穂塚(泣く暇があるなら、とっとと地図を見て迷子センターに行ってほしい)


 だが、さすがにそんな効率的な行動を子供に強制するのは酷というものだろう。


 思わず自分の考えを他人に押し付けるのは俺の悪癖だ。


夏芽「えっと……ね。私の名前は【天水 夏芽】っていうの。な、名前言えるかな~?」


 一向に泣き止まない少女を前に夏芽さんは四苦八苦している。大学では勉強も運動も趣味もなんでもすぐにマスターする彼女だが、どうやら子供の相手は得意ではないらしい。


夏芽「ほ、穂塚くん……」


穂塚「…………はいはい。ちょっとお待ちを」


 俺は少女と目線が合うようにしゃがみながら、声を掛ける。


穂塚「ニィダミングズィシ?」


夏芽「…………?」


 俺の声を聞き、少女はようやく泣くのをやめた。


 顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃなので、ティッシュを取り出す。


「……ヤン」


穂塚「ワンシャングハォ、ヤン」


 【(ヤン)】と名乗る少女に、鼻水をチーンさせながら、俺はお菓子を取り出して、近くのベンチに誘導する。


 チョコボールを食べさせながら、数分も話せば、色々と分かった。



夏芽「……えっと、穂塚君? そろそろ聞いてもいい?」


穂塚「……あ、ごめん夏芽さん。つい、説明を忘れてた」


 ヤンを膝の上に乗せながら、俺は説明を始める。


穂塚「この子の名前はヤン。二日前から家族でこの国に旅行に来てて、今日は神社に来てたらしい。で、家族を見失って途方に暮れてた。シィバ?」


 ヤンは笑顔でこくりと頷く。


夏芽「そっか、すごいね穂塚君!」


 本当にすごい。私は聞いたことのない言語だが、彼はそれをいともたやすく話して見せた。


 しかも子供相手に、だ。


 正直、子供との接し方も彼の方が何倍も上手だった。


穂塚「そんなことないよ。ただ、得意ってだけさ」


 少し嬉しそうにしながら、彼は笑う。


夏芽「……えっと、こんな感じかな。ウォッほん、……ワンシャンハァオ、ヲォダミィングジィシ、シィァヤァ」


穂塚「……え?」


 俺は少し思考が追いつかなくなった。


 なぜなら、彼女がさっきまで全く知らなかった言語を喋り始めたから。しかも、ほぼ完璧な発音で。


 ヤンが笑顔で自己紹介をするが、俺はそれどころではない。


穂塚「もしかして、夏芽さんってこの言語知ってたの?」


夏芽「まさか。さっき穂塚君が喋ってる時に発音の仕方をネットで調べて実践してみただけ」


 なんでもないことのように、彼女は笑う。


穂塚「いやいやいや。ってことは、さっき初めて発音したってことだよね。なんでそんな流暢に?」


夏芽「私、昔から大体のことは一発で出来ちゃうタイプなんだよね。もちろん、できないこともあるけど」


穂塚「いやいや、だとしてもでしょ」


夏芽「勉強やスポーツって、こうしたらこうなる、っていう因果があるでしょ。私はその通りにやってるだけだよ」


 つまり彼女は、なんの事前準備も必要とせず頭の中で完結できた行為なら現実でも実行可能、ということだ。


穂塚(マジの天才だなこりゃ)



 その後、運よくヤンの両親と合流し、俺たちはようやくホテルに到着したのだった。


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