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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
賢者編
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93 【穂塚 成美】という人間


 週末の明け方


 天水家の前に初心者マークの張られた白い車が来た。


 穂塚が出した車だ。


穂塚(着いた……か。この時間なら、昼にはあっちにつけるな)



夏芽「ごめん! 実はまだ準備が終わってなくて……」


穂塚「いいよいいよ。10分前に着いたのは俺の方だし。ゆっくり準備してていいよ」


 少し早く着きすぎたせいで、天水さんがまだ準備が終わっておらず、急いで家に戻る。俺はそれを確認してから、俺は大きく息を吐きだした。



穂塚「めんっどくせぇぇえ!」



 そして、ため息と同時に大きな本音がこぼれ出た。


 だが、周りに誰もいないことをいいことに俺の口は止まらない。


穂塚「くそ夏芽が。こっちが適当におだてて、うんうん言ってるだけで近寄んなよ。俺はホストじゃねぇわ。なんで彼女がいるっつってもまとわりついてくる? 頭がおかしいのか? しかも、別れて傷心中っていう設定なのになんで旅行に誘う? 意味不明すぎるだろぉぉ」


 大学でも良い子を演じていたのが仇になった。まさか、余計な女が釣れるとは。


 彼女がいると嘘をついても寄ってくる。別れて傷心中、という演技をしても寄ってくる。


 とんでもなく頭がゆるい女だ。あの女が男子女子ともに人気者じゃなけりゃ即刻顔面に蹴りを入れて絶縁している。


穂塚「いや、こんなに暴言を言うのも失礼か。一応、過去問を見せてくれたりしたしな。とにかくあと少しで留学だ。そうすれば逃げ切れる。就職先も海外にしとくか」


 自分の人生設計を大幅に修正しながら、俺は何の気はなしに窓の外を見る。



涼斗「やあ、穂塚君」


穂塚「……!? うおぉぉお!」


 車窓の窓に突然、高校生くらいの少年が飛び出てきた。驚くべきは、窓の下からでも横からでもなく上から頭を出したことだろう。


涼斗「まあ落ち着いたまえ。確かに、急に目の前に万物の王が出てきて思わず頭を下げたくなるのも理解できるが、今はしなくていい」


 金髪赤目……しかも、この話の通じなさ。


穂塚「……。そっかー、君が涼斗君か。初めまして、俺は成美といいます。よろしくね」


涼斗「はっはっは。そんな演技、しなくてもいい。全部聞こえてたからね」


穂塚「演技じゃないよ。俺は少し、情緒不安定だからね。敬語の方が安定するのさ」


穂塚(さてどうしよう。このまま車を発進させて轢きたいけど倫理が邪魔だし……。それにこいつ、なんか上から突然降ってこなかった?)


 二階に開けっ放しの窓が一つあるが、さすがにそれではないと信じたい。


穂塚「聞いたよ涼斗君。なんでも君、すごい運動神経がいいんだって? この間のマラソン大会も一位だったとか。すごいね!」


涼斗「なにを当然の結果で褒めている? それよりも本題に行こうか。君も、そういうタイプだろ?」


 へぇ……。


穂塚「なんの用かな?」


涼斗「夏芽と付き合うつもりはあるか?」


 予想外の発言に、俺は眉をひそめる。


穂塚「てっきり、夏芽には手を出すな、的なことを言うのかと思ったよ」


涼斗「まさか、あれがどうなっても俺には関係ない。もちろん君も。ただ、夏芽がしきりに君のことを話すのでね。まさか結婚でも考えてるのかと」


穂塚「ありえない。まじでありえない。それは絶対にありえない」


 純度100%の心の声を涼斗に伝える。


涼斗「それは残念だよ、新しい眷属ができると期待したんだがね」


 なにいってんだこいつ。


穂塚「というか、君からそれとなく伝えておいてくれない? 脈無しだって」


涼斗「……? なぜ俺が誰かのために動かねばならん?」


穂塚「あーいや、なんでもないよ」


 喋るだけでも疲れるので、これ以上は無視しようかというところで怒声が響いた。



夏芽「涼斗! な、なにしてるの!?」



 顔を赤くした夏芽が弟に飛び掛かる。


 しかし、まるでバッタのようにピョンピョン飛びながら彼は上手く回避する。


涼斗「気にするな。ただの余興だ」


 そして、人間業とも思えぬ跳躍力で二階の窓に飛び込んだ。


夏芽「ご、ごめんなさい穂塚君。ちょ、ちょっと私の弟が元気すぎて……」


穂塚「いいよいいよ。元気なのはいいことだし。今まで風邪とか引いたことないくらい元気だね」


夏芽「そ、そう言ってくれると助かる」


 なんだかんだありながらも、俺たちは堅称神社へと出発したのだった。



夏芽「はい、あーん」


 道中、天水さんは運転中の俺に食べ物を差し出してくる。


穂塚「ごめん。ちょっと運転に集中したいから、あとで食べるよ」


夏芽「えー。せっかくの力作なのに」


穂塚「せっかくの力作なら、止まってからゆっくり食べたいけどね」


 『きゃっ』と、少し頬を染めながら天水さんは弁当をしまう。


夏芽「そういえば、これから行く神社って、けっこう標高が高いんだよね」


穂塚「そうだね。確か、近くに川や滝も走ってたから、昔は事故が多発してたらしいよ」


夏芽「物知りだね穂塚君」


穂塚「そりゃ、せっかく行くんだから下調べくらいするよ」


夏芽「そっか~。じゃあさ、今日はどこに泊まる予定なの?」


穂塚「神社の近くのケンショーホテルっていうところ。なんでも40階もあるらしい」


 まあ、予算の関係上俺たちは5階なのだが。


夏芽「そっか~。じゃあ、景色だけでも見てみたいね」


穂塚「そうだな」


 確かに、高い金を払ってホテルに宿泊するのだ。俺だって、最上階からの景色くらい見ておきたい。


穂塚(なんだ。意外と気が合うね)


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