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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
賢者編
92/112

92 天水家のルーツ


 エンドとレリウス王国の戦いより、およそ5年前


 クセン共和国には、ある一つの家庭があった。


 そこでは一組の夫婦に二人の子供が住み、生活している。


 ただ、普通の家庭とは違う点がいくつかあった。


 それは一般の家庭と比べて、かなり恵まれた環境だったことだろう。


 夫婦はともに顔が整っており、社会的地位も相応にあった。経済的にも裕福で、夫婦の仲もそれなりに良好。


 生まれた子供も美男美女で、世間的に見ればかなりの勝ち組であることは明白だった。


 ただ一つだけ、イレギュラーを挙げるとするならばそれは()()だろう。



―――



母「なつめー! ご飯できたから早く降りてきなさーい!」


 家に母の声が響き、私はベッドから体を起こす。


夏芽「ふぁ~い……」


 寝起きではあるが必死に声を出し、寝巻のまま一階のリビングに降りる。


父「おう、おはよう。すごい寝ぐせだな」


 リビングには、父と母がすでに席についており、箸を進めていた。


夏芽「寝起きなんてこんなもんでしょ。あっ、この食パン美味しい」


母「でっしょ~。お父さんも絶賛だったんだから」


 父も母も公務員なのだが、正直このレベルの料理が出せるなら店を出しても儲かるんじゃないかと思う。


夏芽「ホント、この世界でお母さんの料理が一番美味しい」


父「うん、当然だな」


母「はいはい。それよりも夏芽、今日から大学の後期でしょ? 電車の時間は大丈夫?」


夏芽「へーき。今日は二限からだから」


 今年で大学二年生になった私は、少しけだるさを感じながらも返事をする。


夏芽「というか、私より心配しなきゃいけない奴がまだ降りてきてないんだけど」


 『……あー』という顔をして父と母は目を見合わせる。



涼斗「一体、誰を心配するというんだい?」



 気づけば、私の後ろに弟がいた。


 私と同じ、母譲りの金髪に紅い目。自身に満ち溢れた整った顔立ちの愚弟は、何事もなかったかのように朝ごはんを食べ始める。


夏芽「おはよう。心配の相手っていうのは涼斗ね」


涼斗「はっ、未だに寝ぐせを作らない睡眠方法を会得できていない奴にそんなことを言われたくはないね」


父「いやお前も小学生の頃は寝ぐせあったろ」


涼斗「いつの話だ父君。俺はもう高校生、すでに必要なスキルはあらかた取り終えている」


母「じゃあ、もっと早起きしてみんなの分の朝ごはんを用意してみなさいよ」


涼斗「母君、その必要はない。なぜなら、君は既に世界で二番目に美味しい料理を作れるのだ。このままの調子でよろしく頼む」


夏芽「ちなみに、世界一の料理っていうのは?」


涼斗「俺が作った料理に決まっているだろう夏芽」


 おい、私だけ呼び捨てか。


 子供の頃から全く変わらない弟の性格を憂いて、私は深いため息を吐く。



 弟が生まれた時のことは、私もよく覚えている。父と共に真夜中の病院に連れられ、初めて自分の弟と対面した。


 恐らく、身内補正を抜きにしても世界一可愛い男の子だという確信があった。


 私も可愛い部類に入るはずだが、弟はそれ以上だ。だから、初めて目があった時、とても嬉しかった。


 だが、私の幻想はそこで終わる。


 弟は、私を見た瞬間、思い切り笑ったのだ。しかも、ただの笑みではない。あれは嘲笑の類の笑みだ。あいつは私を、一目見た瞬間に鼻で笑ったのだ。


 いや、私だけでなく、両親や看護師さんまでもを見下したように笑みを零す。


 そんな少年と15年以上、一緒に過ごしてきた私の結論として――



夏芽「狂人だね。間違いなく」



「またその話?」


 大学に登校し、授業が始まる前に私は思わず愚痴を零す。


 そんな私の話を聞いてくれるのは、同い年で同じ学校に通う男子の【穂塚(ホツカ) 成美(ナルミ)】だ。


 元野球部の彼はガタイが大きく、良い筋肉がついている。しかも、見た目に反して抜群に外国語ができるので、大学を卒業したら外交官になりたいらしい。


夏芽「いや、何度でもいうよ。あいつはマジで異常者だから。私たちが、一体どれだけ耐え忍んだか……」


穂塚「でも、それでちゃんとコミュニケーション取ってるのは良いことじゃない?」


夏芽「ま、まあそれはね。姉として当然だよ!」


 姉として当然とか言っときながら、15年間でなにも改善できなかったが。


夏芽「ところでさ……もうすぐだよね? 穂塚君が海外に行っちゃうのって」


穂塚「まあそうだね。この大学に来たのも留学制度が整ってるからだし」


夏芽「……うん」


 穂塚君はとても真面目だ。周りにいる大学生は授業を飛んだり、サークルにも所属せずにゲームしかしなかったりするところを、彼はいつも勉学に邁進している。


 そんな彼が海外留学に行ってしまうのは、ある意味当然といえた。


夏芽「ねぇ穂塚君。約束、忘れてないよね?」


穂塚「来週の週末に綾都の国境付近にある堅称神社にいくやつでしょ? 覚えてるよ」


 もしかしたら、もう察してるかもしれないが私は穂塚君のことが好きだ。


 同じボランティアサークルに入っていて、彼の真面目で明るくてポジティブな思考に私は幾度も救われた。


 最近、彼女と別れたらしく、私にとってはチャンスだ。



夏芽(絶対に初恋をものにしてみせる!)


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