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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
巫女編
91/112

91 【ホーム】と綾都


 【遊泳者】と【伝達者】は、綾都の中心にそびえる、城の一室に召集されていた。



 そこには、綾都の現国王の【青鹿(アオカ) (ハジメ)】とその妻【夏芽(ナツメ)】。


 そしてホームのボスであり、【亡霊(ゴースト)】の称号を持つ【(バク)】がいた。


 ハジメと麦が同じソファに座り、夏芽は紅茶を淹れるため奥で控えている。



薫『ただいま戻りました』


俊介「戻りました」



 二人は、三人に向け膝をつき頭を下げる。


ハジメ「そこまでかしこまる必要はない。ここは公式の場ではないからな。我は気にせん」


 年は20代前半ほど、さらさらに靡く黒髪にキリっと鋭い眼光を持つ、イケメン国王は顔色一つ変えずに二人に顔を上げるよう促す。重く厳格な声がなくとも、仕草だけで威圧感が出ていた。


 彼は、自分の座るソファの対面に座るよう顎を向ける。


俊介「了解やで」


薫『ちょ、ちょっと俊介君!? 国王様の前なんだからしっかりして!』


 躊躇いもなくソファに座ろうとする俊介の服を薫は掴んだ。


俊介「なんでや? 座っていい、いうとんのやで」


薫『ありがとうございます、くらい言えるでしょ!』



麦「おいてめぇら。ごちゃごちゃ言ってねぇで早く座れ。殺すぞ」


 およそ部下に対して放つセリフではない言葉を口にしながら、ボスは私たちを睨む。


 【亡霊】の称号とは似ても似つかない、大きくも逞しい筋肉を持ったボスは私達ホームの憧れだ。いつも不機嫌そうな顔も、意外と綺麗好きなところも、悪そうな笑みも尊敬している。


薫・俊介『「はいすいませんでした」』


 そんなボスからの命令など、この世の全てにおいて優先されるべきものだ。

 

 夏芽が淹れた紅茶を一口飲んでからボスは話を切り出した。



麦「……でだ、エンドの頭目――つまりは、こいつの叔父の【久】から、【巫女】関連の協力要請が来たおかげでお前らを行かせたわけだが……」


 巫女が姿をくらませた、というので久からの情報提供を打診されていた彼らは独自に調査を進めていた。


ハジメ「言葉を選ぶ必要はない。我が【君主】の称号を授かっているということは、あの放蕩野郎は死んだということだ」


 王族でありながら、まったく政治にも参加せず、ただただ自分の好きなように行動している叔父を思い起こしハジメはため息を吐く。


麦「おいおい旦那。あれのおかげでクセン共和国との関係がよくなったんだろ?」


ハジメ「ただの結果論だ。あいつがたまたまクセンに行っただけで、全ては偶然の産物」


 ふんっ、と大きくため息をついてから、ハジメは俊介と薫に向き合う。


ハジメ「此度の活躍、ご苦労であった。お主らのおかげで、我々は3つの宝具を手にすることができた。礼を言う」


薫『もったいなきお言葉』


俊介「…………」


 俊介は、なにも言わずにただ夏芽王妃を見ていた。


俊介(うーん……あら? なんや見覚えがあるような)


俊介「いたっ」


 考え事もしている俊介の足を薫が思いきる踏んだ。


薫『失礼だよ! あと、返事して』


俊介「……うん? あぁ。もったいなきお言葉」


ハジメ「……どうした【根元 俊介】。そんなに我の妻が気になるか。まあ、太陽のごとき笑顔に、花のような可憐さも併せ持つ、最高の妻だからな。気持ちは分からんでもな――」


夏芽「ストップです!」


 長い惚気に入る予感を迅速に感知した夏芽王妃は、ハジメの頭をスパーンと叩く。


 長く艶やかな金髪に紅く大きな瞳。出るところはしっかりと出た、スタイルの良い彼女は、理知的な目でハジメを睨む。


ハジメ「何をする」


夏芽「今は私のことよりも大事な話をしてる最中です。あと本人の前でそういうことは言わないください!」


 そういうこととは、どういうことか? よく分かっていないハジメだがとりあえず咳払いをする。


ハジメ「とにかく、根元。あまり夏芽を見るな。こいつは身内以外からの視線は苦手としている」


俊介「そりゃすまんかったのー」


麦(……今までは女子に視線を向けるなんて、あんまなかったんだが……かなり遅めの思春期か)


ハジメ「とにかくこれで、レリウスの国としての機能はしばらく下がるだろう。これは大きなチャンスだ」


麦「なんだ? 戦争でもおっぱじめようってか?」


 不敵な笑みを浮かべる麦とは対照的に、ハジメは少し険しい顔をする。


ハジメ「まさか。現状、我々は軍事的にも政治的にも逼迫していない。むやみに戦争という選択をするな」


麦「ま、旦那ならそういうと思ったぜ。じゃあとりあえず、今はまだ様子見ってことでいいか?」


ハジメ「ああ。ホームの諸君、ご苦労だったな」


 それだけを言い、ハジメは妻を率いて実務室へと移動を開始する。



夏芽「お疲れ様です」


 夏芽は部屋についてから、開口一番にハジメへの労いの言葉を口にした。


ハジメ「そこまで疲れてはいないさ。それよりも、やるべきことはまだある」


夏芽「……私の、せいでしょうか?」


 夏芽は自分の称号を思い起こしながら、恐る恐る尋ねる。




 あなたは【賢者(ワイズマン)】のホルダーになりました。

 称号取得条件

 全ての記憶を失うこと。

 特殊能力

 少し先の未来を見ることができます。

 専用宝具

 冥色の誓約書(ブループレッジ)




ハジメ「別に、それだけじゃないさ。確かに君の出生の秘密も気になるところだが、今は、死んだホルダーの持っていた称号の後継者を探すのが先決。特に【浮遊者】は確保しておきたいところだ」


 手元の資料には、宇宙への略歴をもつ人間やサバイバル経験のある人間の資料があった。


 だが、私は見逃さない。部屋に来てからすぐに引き出しにしまった調査書を。あれは私についてのものだ。


夏芽「素直じゃないですね」


ハジメ「……っ、そんなことはない」


夏芽「大丈夫です。確かに私は今までの記憶はないですけど……今がすごく楽しいです!」


 【夏芽】という名前は私がハジメさんに保護されたときに、持っていた私物に書かれていた名前だ。だから私は自分の名前以外、なにも知らない。


ハジメ「そう言ってくれるなら、我としてもありがたい。……それにしても珍しかったな。根元が女性を凝視するとは」


夏芽「そうですね。今までそんな素振りは一切ありませんでしたし」


 もしかしたら、私の顔と似ている人とあったのだろうか?


夏芽(……いや、さすがに希望的観測……か)


ハジメ「とにかく、なるべく早く君の出生を知るためにも、今は仕事を済ませようか」


夏芽「はい!」


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