89 その後のあれこれ
【エンド】との戦いが終わり、レリウス王国は様々な後処理に追われた。
崩壊した民家やビルの修復に戦死者の追悼、今後の方針、やるべきことは山積みだ。
だが、国王である【藤原 啓】の指揮のもと着実に復興は進んでいた。
エンドから奪った【冥色の誓約書】もかなり有効に働いた。これでかなりスムーズに交渉が履行されたのだ。
そして、ひと段落した後にようやく【カーニバル】の面々が一堂に会したのだった。
涼斗「……さて、まずはお疲れ様だね。主に俺が、だが」
鑑定事務所の一室で、紅茶を飲みながら涼斗が口火を切る。
サイ「……まあ、確かにあんたは最初から最後まで頑張ったけど……アタシたちも頑張ったからね!?」
涼斗の言っていることは正しいのだが、それを自分の口で言われると、妙に納得しずらくなる。
涼斗「細かいことは気にするな。現に俺も、カーニバルに関係ない奴の同席も認めているだろう」
そう、この場にはカーニバル所属ではない2人のホルダー【女帝】と【聖女】がいた。
由美「え、……私カーニバルに入ってなかったの!?」
サイ「……まあ、確かに入ってはないね」
苦々しい顔でサイは返事をする。
政明「んなどうでもいいことより、現状の整理と、今後の動きだろ。無駄な事してんじゃねぇよ」
「「「「いや、主にお前が議題だよ!」」」」
全員のはもった声が俺の耳に届いた。
政明「……は? 俺の何が議題なんだよ」
新生児にミルクを飲ませながら、俺は返事をする。
由美「色々と言いたいことあるけど、まず、その称号を持った赤ちゃんは何!?」
政明「最近ようやく体調が安定してきたからGCUから出した新生児だ。【巫女】の称号を持ってるから、峠を彷徨うこともなかった。あと、あんま大きい声出すな。こいつ泣くぞ」
由美「いや、それはごめんなさい。でも、その子って深玖の子供でしょ。なんで政明が保護してるの?」
いつもとは違う、少しとげとげしい口調で由美は政明に問い詰める。だが、それも仕方ないだろう。なんせ彼は――
由美「それに、なんで私に称号のこと言ってくれなかったの? ずっと、私に嘘ついてたってことだよね」
ほんの少し、怒りをはらんだ声で政明を睨む。
サイ「ちょうどいいんじゃねぇか? いつかはホントのことを言わなきゃなんねぇ。この際、全部ゲロっちまえよ」
政明「…………」
俺は、少し考え込んでから【裏切者】の能力を解除した。
政明「……分かった。今から俺は本当のことだけを話す。ジョーカーの能力は使わねぇから、あとは由美が自力で判断してくれ」
由美「……分かった」
居住まいを正し、由美はしっかりと耳を傾ける。
政明「まずはそうだな、お前がレリウスに売られた話からだな」
由美「そうそれ! それが一番聞きたかった。なんであの時、私のことがレリウスに知られてたの?」
政明「そりゃ俺がお前のことを国に密告したからだ」
由美に限らず、全員が、その場で固まった。いつもは政明に友好的なタクトでさえ、懐疑的な視線をしている。
政明「あの時、お前の存在を小島にリークした。5億の金と引き換えにな。だからお前は連れ去られた。おじさんとおばさんには……気の毒だと思ったよ」
由美は呆然自失となった。それもそうだろう。由美にとって、最後に両親に会ったのは、あの時が最後なのだ。
しかも、それを行った相手は自分の好きな人で、村で唯一の生き残りなのだ。
由美は膝から崩れ落ちた。
由美「……嘘」
政明「嘘じゃねぇ。お前なら分かるだろ」
タクト「政明、お前、その態度は人としてどうかと思うぞ」
いつもとは一段低い声で、タクトは政明に声を飛ばす。少し怒りが垣間見えた。
政明「別に……今俺がここで土下座しても、過去は変えられない」
タクト「そういう問題じゃねぇだろ」
政明「俺にとってはそういう問題だ。もういいだろ、こいつの世話はお前らに任せる」
政明は、赤ん坊を涼斗に託し、部屋から出ようとする。
政明「じゃあな」
短く挨拶を言い、俺はドアノブに手をかける。
サイ「待ちなっ」
だが、扉を開く前に、俺の頭が誰かに叩かれた。サイだ。
サイ「まさかあんた、これではい終わりってわけじゃないだろうな」
政明「いや、これで終わりだ」
サイ「アタシがなにも知らないとでも思ってんのか? もう一度言うぞ、全部言え。言わなきゃいけないこと、やらなきゃいけないことがあんだろ」
政明の首を絞めながら、サイはがんを飛ばす。
政明「……サイてめぇ」
サイ「言うつもりがないなら、アタシが言うぞ」
政明が逃げないよう、首根っこを掴みながらサイは口を開く。
サイ「単刀直入に言おうか由美。こいつがあんたを国に売ったのはあんたを守るためだ」
由美「……どういうこと!? なんで私を家族から引き離すことが守ることになるの! ねぇッ!!」
由美は罵声にも似た声でサイに詰め寄る。
サイ「当時、あの村は綾都の傭兵に見つかっていたんだ。お前があと数日、国に売られるのが遅かったら、今頃は綾都にいただろうな」
由美「……どういう……こと?」




