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クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
巫女編
86/112

86 勇者


涼斗「ふぃ~、さすがに少し欠伸が出るよ」


 久の剣を避けながら、涼斗はタクトとスイッチする。


 君主の動きに慣れた涼斗は、習慣のように刀を避けながら軽口を口にした。


久「そうでもないじゃろ。ぬしか王子、どちらかが死ねばこの膠着状態は崩れる。確かにわしはある程度ダメージを負ってはいるが、負ける気はせんのう」


 深いえくぼを作り狂気を感じる笑顔で、久はタクトの攻撃を顔面に受けた。


タクト「……なに?」


 拳を顔面にヒットさせたタクトは思わず距離を取る。



涼斗「今の攻撃は……」


タクト「ああ。あいつ、わざと受けやがった……」


 生死を分けるこの戦場で、ありえない選択を行った久に不気味さを覚えた二人は、注意深く久を見る。


久「そんなに、距離を取らんでもよかろう……それとも、まさか恐れているのか?」


 鼻血を垂れ流し、顔面の骨格が変わった久は、覚束ない足取りをしつつもゆっくりと涼斗の方へと向かう。



涼斗「――ハハ、面白いことを言うね久君。俺は、恐れをs――」


 最後まで言い切る前に涼斗の頭部だけが久の手に握られていた。そう、頭部だけが。



タクト(――なんだ!? なにも見えなかった……)


 久はその場に留まったまま、動いていない。にも関わらず、いつの間にかその手には涼斗の頭部がある。


 音を立てて倒れる涼斗の胴を一瞥しながら、タクトは口を開く。


タクト「……なにをしたんだ?」


久「……さあ、なんじゃろう?」


 軽く笑みを返すと、久はサイの方を向く。


久「お主は分かっておるんじゃないか?」


サイ「……【勇者(ヒーロー)】の称号だろ」



 あなたは【勇者(ヒーロー)】のホルダーになりました。

 称号取得条件

 勇者の家計の男児であること。

 特殊能力

 自身へのダメージが甚大であるほど身体能力が向上します。

 専用宝具

 深紅の剣



久「さっきの顔面パンチに、これまで蓄積された戦闘ダメージ。十分に因果は揃った。さて、と……終わらせるか」


タクト「やってみろよ」


 静香とサイを守るようにタクトは久の前に立つ。


久「やめてほしいのぅ、まるでわしがヴィランのようじゃないか」


タクト「実際そうだろ」


久「……こっちからすれば、お前らがヴィランじゃよ」





―――





 勇者の力を発揮した久は倒れるレリウス王国の兵士たちを見て、ルーレットを解除する。


久「……さすがに、少しハッスルしすぎたわい」


信矢「そうだな、自傷でもいいからとっととダメージをつければ、もっと早く戦闘は終わった」


湊「……ダメですよ。【勇者】の称号は敵からのダメージじゃないと発動しませんから」


 合成がとけた4人は、とりあえずの戦況を確認しながら、王城へと足を進める。



理香「……ダメですね。私たちもそうですが、久様へのダメージが宝具とホルダーに等分されています」


 7つの素材を合成した弊害か、宝具を解除した途端、全員が傷だらけだった。


理香「すみませんが、今すぐの飛行は無理です」


湊「宝具の損耗率も激しいですね。【純白の杯】があれば話も違うのでしょうが」


信矢「ないもんはしょうがない。それよりも、早くいくぞ」


 信矢は王城を睨みつけながら足を進める。


久「こいつらは殺さなくていいのか?」


信矢「……無理、というよりもやるだけ無駄だ」


 信矢は、道端に転がったレリウス王国のホルダーを見ていた。


 そこには、立ったまま気絶したタクトと、その後ろに気を失った静香たちが倒れていた。


湊「まさか、あの状態で我々の攻撃から仲間を守るとは……大した王子ですよ。妻が負けたのも納得の人材です」


 ぼろぼろの状態のタクトだが、今にも動き出しそうなほど、その立ち姿は勇ましさを持っていた。


信矢「気絶してくれたのは幸運だ。こういった奴は少しでも敵意を向けられただけで目を覚ます。このままやり過ごすのが賢明だ」


 手負いの獣はなにをするか分からない。今戦えば、勝つのは確実だが、エンドの誰かがやられるのもまた確実だ。


久「【道化師】の方も殺しておきたかったが……しょうがないのう」


 仕方なく、エンドはその場を後にするのだった。


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