83 三つの選択肢
政明「ここからはお前が決めろ。今、お前には3つの選択肢がある」
深玖「……どんな?」
政明「まず、エンドの勝利を信じてこの場で待機すること。その場合、最悪ここに助けに来たエンドごと爆破されて地下500メートルに生き埋めだ」
考え得る限り、最悪のシナリオだ。いくらホルダーでも、ここでの生き埋めは死に等しい。
政明「次に、……まあ可能性は低いがレリウス軍が勝利した場合。これなら、お前は死なずに無事その子供を産めるだろう。だが、既に監禁場所がバレてるから、すぐに監禁場所が変わる。そうすれば、いくら俺やエンドでも救助は絶望的になる」
それに、レリウスが勝利するということはエンドの全滅を意味する。最悪、全員死ぬ可能性だってあるだろう。
それに、この選択肢だった場合、深玖は一生子供を作るだけの道具になる。俺としても、それは避けたい。
政明「まあ、この二つは待機するっていうことで同じ選択肢だ。次は、お前がこの部屋から出る選択肢だ」
深玖「……え、でも。それじゃ、ボクは……」
政明「ああ、確実に爆発して死ぬ。でも、エンドは爆発に巻き込まれずに済む」
深玖「それは……」
恐らく、これが一番良い落としどころになるだろう。少なくとも結果論的には。
だが、できればこれは選びたくない選択肢だ。
政明「んで3つめ。その爆弾を解除する選択肢だ」
深玖「できるんですか!?」
政明「いや無理だ。でも、取り出すことはできる。素人の手術にはなるが、爆弾を摘出すればいい」
幸いにも、手術道具は揃っている。多少痛みをこらえてもらうことになるが、これなら助けられるだろう。
深玖「……じゃあ!」
政明「ただ、これには問題がある。いったん服を脱げ。下着もだ」
深玖「……え?」
自分の身を抱きしめながら、深玖は後ずさりする。
政明「勘違いすんな。埋め込まれてる爆弾の場所を確認するだけだ。早くしろ、時間がない」
深玖(シン君以外の人に、裸を見せるのは……)
正確に言えば、専属の医者にも診られたりしてるのだがそれはそれだ。
正直、会ったばかりのこの人に見せたくない。
結奈『大丈夫? もし嫌なら、お母さんがアキ君に交渉するけど……』
深玖(だ、大丈夫。うだうだ言ってる場合じゃないし……)
深玖「わ、分かりました……」
深玖はなるべく胸を見られないようにしながら服を全て脱ぐ。
政明「……なるほどな」
政明はなにかの紙と見比べながら、ボクの体を凝視する。
政明「で、どこに爆弾があるか知ってるのか?」
深玖「こ、この辺りです……」
深玖は左胸の近くを指さす。確かにそこには手術痕があった。
政明「そうか。じゃあ、後ろを向け」
深玖「は、はい……」
政明は後ろも凝視しながら、深玖に尋ねる。
政明「嫌なら断ってもいい。触ってもいいか?」
深玖「……だ、大丈夫……です」
政明は牢の鉄格子越しに深玖の背中や太ももを触診する。
なるべく毅然とした態度をとるが、それでも嫌悪感は拭えなかった。
深玖(我慢、ガマン、がまん!!)
そして、一通りの診断を終えた。
政明「よし、服を着ながら聞け」
ボクは暗がりに移動しながら、なるべく早く服を着る。
政明「まず、結論から言う。手術はかなり厳しい」
深玖「な、なんでですか!?」
ボクの裸体を見ておきながら。
政明「お前に埋め込まれた爆弾は、1つじゃない。最低でも4つはある」
深玖「……え?」
衝撃の発表に、深玖はフリーズする。
政明「左胸以外にも、背中に2つ。ふくらはぎに1つだ」
これらを短時間で、さらに素人が全て外すなんてほぼ不可能だ。
政明「さらに、その左胸の爆弾だがな、心臓に近い部分に位置している。悪いが、手術成功よりも、医療ミスでお前が死ぬ確率の方が高い」
政明は、牢の前の部屋に置いてあった書類を差し出す。
そこには、深玖に施す手術の全容が図式込みで綿密に書かれていた。
政明「話を戻すが、お前には3つの選択肢がある。
1.エンドの勝敗に関わらず、この部屋で待機すること。
2.エンドを守るためにこの部屋で自殺すること。
3.死ぬ可能性99.9%の激ムズ手術を受けること。
どうする? なるべく早く決めてくれ」
深玖(そんなの、選べるわけないじゃん!)
せっかく助けに来てくれたのに、こんな選択肢しか提示できない政明を深玖は睨んだ。
だが、睨んだ政明の服には血が滲んでいた。
いや、よく見れば全身がぼろぼろだ。恐らく、ボクを助けるためにかなりの無理をしたのだろう。
深玖(……でも、こんなの決められない。それに……)
一番最悪なのは、ボクはどんな選択肢を選んでも死ぬということだ。政明くんはああいっているが、手術など、絶対に成功しないだろう。それは彼が誰よりも分かっている。
深玖「そうだ! ……なんとか、外にいるエンドの皆さんに私の現状を伝えれば……」
政明「敵に『爆弾を仕掛けた』って言われて、素直に信じる奴らなのか? そもそも、あいつらは、お前に爆弾があろうがなかろうが、気にせず死に物狂いで助けに来るような連中だろ」
ボクは何も反論できない。確かにシン君なら、『一緒に俺も死ぬ』とすら言ってくれそうだ。
深玖(けど、ボクが死ぬってことは、この子も一緒に死ぬってこと……それはいやだ!)
由基人『俺たちは助言しなくていいのか』
結奈『助言して、なにか良いアドバイスができるの?』
深玖との交信を遮断しながら二人は言葉を交わす。
由基人『それは……』
結奈『ユキ君……ここは見守ろう』
結奈の覚悟の声を聴いて、由基人はそれ以上、何も言えなくなるのだった。
深玖「――決めました」
数分間、迷いながらも深玖は答えにたどり着いた。
政明「そうか。で、どうすんだ?」
深玖「第4の選択肢。お腹の子を助ける、でお願いします」




