71 会敵
もうすぐ、王都に到着しそうなタイミング。
涼斗を倒した久が合流してすぐに、4人のホルダーは一つの気配を察知した。
ホルダーだ。
見れば、手ごろな高さのビルの屋上で、元帥【広瀬 静香】は堂々と立っていた。エンドは空中にいるため、同じ目線で静香の声を聴く。
静香「ようこそ、レリウス王国へ」
挨拶と同時、エンドの持つ【丹のロープ】がひとりでに動いた。
そして、勢いよく飛んできた小さな物質を捕まえる。
理香「遠くからのライフル射撃ですね。いい腕です」
信矢「感心してないで、早く移動しろ」
だが、理香は動かない。
理香「あまりにも対応が早いです。既に国民の避難もあらかた終わっているようですし、道中ピエロによる足止めもありました」
これまでの道中、エンドは上手く破壊活動を行うことができなかった。
単純に時間がなかったのもあるが、そもそも、こういうことに慣れている久がピエロとの戦闘にもたついていたのが主な原因だ。
このままでは、軍の戦力が集中した状態で一戦交えなければならなくなる。
信矢「都合がいい。このまま兵を蹴散らし、すぐに城内地下を探索する」
湊「ですが、レリウスには6人ものホルダーがいます。加えて宝具も。あまりにも戦力差が……」
信矢「うち一人は【劣等者】。それに、敵が持ってる宝具は多ければ多いほど、こっちにも有利に働く。やりようはある」
久「そうじゃのう……。では、初陣を頼んでもよいかのう?」
信矢「ああ、もとよりそのつもりだ」
理香はロープを操ると、思い切り信矢を投げた。
目的地は一番兵が密集する場、軍事演習場だ。
信矢はその中心に単身一人で乗り込む。
空中から勢いよく投げられた信矢は大きく砂煙を上げる。
そして周りを取り囲む兵士を確認した。
信矢「早く、かかってこい。安心しろ、ホルダー以外に宝具を使う気はない」
腰に差している【深紅の刀】に手を置きながら、木剣を構える。
野村「総員、かかれぇぇぇぇぇー!!」
軍隊長の号令に合わせ、兵士が次々と特攻していく。
古山「我々相手に、木剣とは――なめられたものだな」
信矢「なめているつもりはない」
信矢は軽く木剣を振るう。それだけで風が巻き起こり、周囲の兵士が全員吹き飛ばされた。
だがそれは想定内だ。古山は手を上げ、遠くに待機する狙撃兵に指令を伝える。
基本的にホルダーに遠距離攻撃は効果がない。
だが、今回使用する弾は普通ではない。20mm口径の対戦車用の特別製だ。
だが、いつまでたってもそれが発砲されることはなかった。
古山「……? おい、なにがあった?」
急いでトランシーバーに声をかけるが、応答はない。
仕方なく、別の者に声をかける。
古山「D班、A、B、C班との連絡が途絶えた。そちらからは、何が見える?」
D『こ、こちらD班! 何者かが、上空からものすごい速度でA班を襲ったのを確n―――』
それだけを言い、D班とも連絡が取れなくなる。
古山「クソッ、なにが起こっている」
信矢「よそ見だ」
一瞬、上空へと目を離したすきに、信矢は古山に斬りかかる。古山はそれを腰に帯刀していた剣で応戦する。
信矢「……ほう。俺の一撃を受け止めるか」
十分に手加減した攻撃だが、それでも信矢はホルダーだ。
本来、反応することもできないはずの攻撃だが、信矢はしっかりと対応してみせた。
野村「普段から、こういうことをやってるんでね!」
古山に止められた信矢に対し、野村が後ろから剣を振り下ろすが、それは難なく躱される。
信矢「そうか……だが、俺には関係ない」
信矢は、いったん兵士から距離を取り、木剣を持つ手に力を込める。こんどは手加減などしない、殺す気の攻撃。
その矛先は――古山だ。
いくら切れ味がなくとも、その剣に当たれば死は免れないことをこの場にいるものは理解した。
古山が部下を守るように前に出る。
木剣が当たり、古山の血しぶきが戦場にあがった。
それを受け、兵たちが一瞬ひるむ。
内海「うろたえるなお前ら!! 古山隊長の死を無駄にするなぁぁあ!!」
同僚の死体を越え、内海は信矢に斬りかかる。
信矢「邪魔だ、どけ。俺は目的の為ならば、どんなことでもするぞ」
今まで殺していなかったのは、単にそれが合理的だったからだ。
戦場に生きた人間が寝転がっている。それは、仲間にとっては重荷になり、俺からすれば壁となる。
だが、どうやらそうも言ってられないらしい。
木剣を勢いよく振るい、周囲の兵士たちを血祭りにあげる。
この場にいる兵が何千、何万だろうが、俺は全員殺しつくす。
信矢「だから貴様も、そろそろかかってきたらどうだ?」
信矢は、一般の兵に紛れた一人の青年に声をかける。
ホルダーだ。
青年は、すこしビクつきながらもおずおずと前に出る。
目にかかるまで伸びきった前髪に、細い腕。明らかに引きこもりの人間そのものだ。
だが、前に出ただけで青年は動かない。
信矢は躊躇いなく、木剣で青年に斬りかかった。
信矢(手応えあり……。だが、なにか変だ)
青年は、その他の雑兵と同じように血を流し、その場に倒れる。
信矢(こんな簡単にホルダーが倒せるわけが――!?)
死体となった青年をよく観察すれば、違和感に気づく。
ホルダーとしての気配が消えていないのだ。
そしてさらに驚きの光景が目の前で起こる。
青年の死体が、みるみるうちに回復していくのだ。
骨は元通りになり、ぶちまけられた血液は体に流れ込んでいく。
そして、生気を失った目はダンダンと輝きを取り戻していった。
青年――【立田 秀二】はその場で立ち上がり、小さく口を開く。
秀二「……ご、ごめんなさい。僕は、【不死】……だから」
消え入りそうなほど、小さな声で秀二は言う。
ホルダーの超人的な聴覚でそれを聞き取った信矢は、少し面倒そうに宝具の剣を構えるのだった。
あなたは【不死】のホルダーになりました。
称号取得条件
自らの意志で自殺を行うこと。
特殊能力
老衰以外のあらゆる死から体を回復させます。
専用宝具
純白の杯




