表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラウンゲーム  作者: 好きな言葉は酔生夢死、家から3歩出ることで毎日の運動タスクを消化し、健康的課題の高血圧については24時間断食することで対策を完了させている、200歳まで生きることが超確定した、常識はずれのバケモン
巫女編
68/112

68 稚拙


信矢「おい、久。こんなところで足止めをしている暇はない。早く移動するぞ」


 目的地を指さしながら、久に提案する。


 だが、久は首を横に振った。


久「いや、彼はここで見過ごすにはあまりにも危険じゃ。それに、軍の戦力を分散させるために、各地域で軽くテロを起こすつもりだったしのう。ここらで一発かますのもありじゃろ」


 久は【丹のロープ】を掴むと、事務所を含めた周囲の建物に対して攻撃を開始した。


 縄が長く伸び、鞭のようにしなりながら、辺りの建造物を二つに分断する。


 涼斗がそれを受け止めるが、それでも周りには少なくない被害が出ていた。



涼斗「へぇ、君たち関係のない一般人も巻き込むタイプかい」


久「結局これが、一番効果的なのでね。私はあとで追いつく、先に行きなさい」


 久はロープを持って、地面に着地する。それを受け、【エンド】の3人は真っすぐに王城の方へと向かった。


涼斗「いや、それが普通さ。俺だって、他人のことはどうでもいい。……でもね、眷属の一人との約束で俺は子供を見捨てることができない」


久「ほう……明確な弱点だが、言ってよかったのかね?」


涼斗「弱点にならないから言ってるのさ。さて、久君。俺の優雅なブレイクタイムを奪った責任は取ってもらうよ」


 涼斗は久の方へと距離を縮める。


 久は【丹のロープ】を振った。専用宝具ではないので自在に操ることはできないが、絶対に壊れない縄を無限に伸ばせるのだ。


 涼斗は徐々に距離を詰められなくなる。



久「なるほどのう……主が【道化師(ピエロ)】か?」


涼斗「なんでそう思ったんだい?」


久「簡単じゃよ。主はどうしても距離を詰めようとしておる。つまり、対象の近く、もしくは直接触れなければ発動することのない称号。加えて、わしの攻撃を避け続ける戦闘力……ピエロ以外にないじゃろ」


 音速を超える鞭を紙一重で回避し続ける涼斗は、久の話に反論する余裕もないのだろう。口を閉ざしたままだ。


久「確か、直接触れられなければコピーは出来んじゃなかったかのう。その神業的な回避もいつまで続けられるのか」



涼斗「ッハ! 気にするな久君。もう、――()()()



 何をおかしなことを言うかと思い、久は涼斗に対してさらに激しく鞭を振るう。


 涼斗はまるでゲームをしているかのように笑みをたたえながら、音速のロープを軽々と避けていく。


 先ほどまでの必死な様子はない。完全に遊びの領域に入っていた。



涼斗「さて政明君。1分くらい前に、そっちにヤバいのが向かったよ」


 挙句の果てには、電話を取り出し通話を再開するほどだ。


政明『あ? お前今、戦闘中じゃねえのかよ』


涼斗「なぜ俺が、戦いごときで眷属との話を妨害されなければいけないんだい?」


政明『イカレフェス野郎が……。まあいい、んなことより必要な事だけ手早く教えろ。こっちも暇じゃないんでな』


 周囲に飛び散った瓦礫の上で軽々と鞭を避けながら、涼斗は口述する。


涼斗「まず、そっちに手練れのホルダーが3人向かった。うち一人の女は空を飛んでいた。目算だが、あと10分ほどで王城につくだろう。

 

 確認できた宝具は――ッ!?」


 そこまで言った辺りで、涼斗の視界の端では、あるものが見えた。


 鞭の風を切る音と、煙で上手く補足できないが、それは子供だった。


 動揺して思わず動きを止めてしまう。


 だが、そのコンマ数秒を久が見逃すはずもなく、鞭が涼斗のスマホを破壊した。


涼斗「へぇ……やってくれるね」


 表向きは笑いながら、涼斗は思考の海に沈む。



涼斗(10歳くらいの少年か……。この辺は高齢者の巣窟だったはずだが)


 恐らく、冬休みを利用して祖父母のもとへ遊びに来たのだろう。


 そういえば最近、孫が一人で遊びに来ると、老人とは思えないテンションで喋っている二人組がいたな……。


涼斗(肝心の祖父母は……瓦礫の下敷きか)


 今すぐ逃げてほしいところだが、なんとか祖父母を助け出そうとその場を動く気配がない。


 【カーニバル】の掟には、中学生以下の子供はどんな事情があろうと助けろ、とある。


 部下の頼みでもあるため、このルールを無下にする気は一ミリもない。


 だが、この状況で助けに行くのは無理だ。せいぜい彼には、久に見つからないように祈っててもらおう。


久「おや? そこにいるのは……」


 久は目敏く子供に目を付けた。


 久はロープを伸ばし、躊躇いもなく子供を捕獲する。


久「さて、形勢逆転……といったところかのう」


 手元に子供を引き寄せ、久は徐々に縄を絞めていく。


 少年は苦しそうにうめき声をあげる。


涼斗「さて、どうかな」


 子供を見捨てる、という選択肢はない。


 思考を切り替え、一歩前へと踏め出す。


 鞭の雨を避けながら、涼斗は前進していく。


久「言わなければ分からないかいかのう? そのまま前に出たら、この子の命はない」


涼斗「分かってないな、俺は見捨てる気はないが、降参する気もない。そいつも助けて、君も殺してやろうか」


 問答をしながら距離を詰めていく。


 その瞬間、少年の顔から血の気が引いた。


 必死に縄をどうにかしようと、少年は喉を掻きむしる。それでも、とれていくのは爪だけだった。


 俺は思わず足を止める。


久「分かってるではないか」


 そして、大きな弧を描いた鞭が俺の腹にクリーンヒットした。


 後ろに飛んで、威力を殺すがそれでも皮膚が裂け、吐血する。


久「……わしが言えたことではないが……愚かじゃのう。お主が自ら弱点を話さなければ、少なくともこのような事態にはならなかった」



涼斗「……なにを稚拙なことを言ってるんだい久君。強者は常に余裕を持つものさ。そうじゃなきゃ、あまりにも一方的な戦いになってしまうだろう?」


久「それで負けてしまう君の方が、稚拙だと思うけどのう」


 ひるんだ涼斗にさらに追撃をかける。腹部に甚大なダメージを負った涼斗は、ぼろぼろになりながらも、回避行動をとる。


 だが、よけきれない。


 全身に裂傷が走り、見るも無残な顔になる。



久「じゃあの、ピエロ君。【変態(サイコパス)】の仇、取らせてもらうぞ」



 本日最大の長さで作った鞭を、最速の振りで涼斗へと仕掛ける。


 「バッチィーン!」と、鈍い音を立てて涼斗の胸に当たった。


 涼斗は見事に上空へと打ち上げられ、そのまま遥か彼方へと飛んでいく。



久「さすがに追撃は時間が足りないかのう……」


 久は子供を開放すると、ロープを縮小させる。


 片方のロープは理香へと伸びているので、すぐに追いつける。


久「まあ、厄介な奴を戦場から辞退させただけでも、よしとするかのう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ