62 【賭博師】
あなたは【賭博師】のホルダーになりました。
称号取得条件
幸運であること。
特殊能力
10分だけ、称号の再配置を行うことができます。
専用宝具
漆黒の布
勇「――再配置」
今この瞬間、【賭博師】を含めた全ホルダーの称号が強制的に変わった。
誰にも明かさなかった、【賭博師】の最終手段。
賭博師の能力は幸運になれることじゃない。それはただの最低条件だ。
本当の能力は全ホルダーの称号の入れ替え。
ただ、あまりにも強力なカードであるため、歴代の賭博師はだれも使うことなくこの世を去った。
だからこの力は誰にも知られていない。
だが、それも今日で終わりだ。
幸運な俺が望めば、欲しい称号くらい簡単に取り寄せられる。
勇(今、欲しい称号は――【決闘者】だ)
【決闘者】は全ての称号の中で、最も強い称号だ。
早速、勇の体中の筋肉が盛り上がり、別人のような筋骨隆々の青年があらわれる。
先ほどの生気が失われた状態とは違う、生命力にあふれたホルダーがそこにはいた。
勇はたったの一歩で勇は政明に追いつき、簡単に取り押さえる。
【裏切者】の効果でシャッフルの効果を受け付けなかった政明は、なにが起こったのか理解できずに困惑する。
政明(なにが起こった!? 追いつかれたのか。なぜ……いや、んなこと考えるより脱出を――)
だが、決闘者の圧倒的腕力により、政明の腕の骨が数本折れた。
政明「……ウ…………ッ!」
思わず思考を飛ばしそうになるが、政明はなんとか意識をつなぎとめる。
勇「悪いな、折るつもりはなかったんだが……まあ、こっちの方が都合がいいか」
政明「なに……をした?」
勇「……? おまえは称号が変わってないな。まあいいか。今、世界中のホルダーの称号を強制的に別のものに変えた」
政明は大きく目を見開く。
政明「んな能力、聞いたことねえぞ」
勇「まあ、今初めて使ったからね。とりあえず、俺の宝具と君の宝具は回収させてもらうよ」
政明のポケットをまさぐり【虹のルーレット】【漆黒の布】そして装着している【黄金の粘土】(ガスマスク)を取り外す。
政明「俺を捕まえるために、そこまでするかよ」
勇「ただの一般人ならやらなかったけど、君の称号はあまりにも未知だ。撒き餌以外にも活用方法がある」
風呂敷からカーボンチューブを取り出し、折れている腕になんの容赦もせず、勇は政明を縛り上げた。
政明「優しくしろよ」
勇「悪いけど、ゆっくりしてられなくてね」
少し焦った様子で、勇は移動の準備を始める。そこで、俺は1つの仮説にたどり着いた。
政明「……なるほどな、そのデタラメな能力、なんらかのデメリット――代償があるな。一度使えば、ホルダーになれなくなる……とかか?
しかもこれは、明らかに全ホルダーへの攻撃だ。今後、お前を狙う勢力は格段に増える」
それ等全てから、称号の力無しで逃げ切るのは至難の業だろう。
勇「…………だとしたら?」
政明「ここから逃げ切れば、俺の勝ちだな」
勇「残念だが、それは不可能だ」
準備が整ったのだろう。勇は、ルーレットと粘土を【漆黒の布】に入れ、俺を抱える。
勇(……あと7分か。今の称号なら、アジトまで余裕で着くな)
足に力を込めようとする。だが、その前に政明が口を開いた。
政明「なあ、勇。お前、なにか勘違い、見落としをしてるんじゃねぇのか?」
勇「……なに?」
政明「お前が隠し技を持っていたように、誰にだって奥の手の1つや2つ用意してるもんだ」
勇「お前にとっての切り札は【裏切者】の称号だろう?」
当然だとでもいうように、勇は鼻を鳴らす。
政明「まあ確かに、これで決着をつけられれば最善だったんだがな……。でもな、俺は絶対に自分に保険はかけない。かけるならいつだって仲間に、だ」
勇「ッは! まさかピエロが来るとでも? 君が来ないと言ったんだろ。ちゃんと考えなよ」
政明「お前こそ、ちゃんと考えろよ。
……一人だけいるだろが。称号全部がシャッフルされて喜ぶ奴がよ」
勇は訳が分からないという顔をする。
勇「なにいってるか分からないね。誰が来ようとも、この最強の称号と宝具があるかぎり俺は負けないよ」
政明「バーカ。最強はお前でも、その称号でもねぇ。俺の――仲間だ」
そう言い切った時、突如頭上からホルダーの気配を感知した。反射的に、その場から後ずさる。
勇「……誰だお前?」
そいつは、土煙をあげながら勇の前に立つ。
「お前、俺のこと知らないのか? じゃ、教えてやる。―――俺は、この国で最強になる男だ!」
土煙がはれ、そのホルダーの素顔があらわになる。
そこには、【違反者】――菅原 拓斗が立っていた。




