58 巫女の居場所
政明「――つまり、そのクラウンゲーム関係で失踪したと、お前は考えてんだな」
由美「そうだけど……なんか政明、呑み込み早くない?」
大事な情報だけを抜き取り、紙に起こしてから俺は紙を睨みつける。
政明「気にすんな。で、深玖を最後に見たのが夏休み前日の学校の校舎、か。涼斗はどう見る?」
涼斗「そうだね……、攫われたのは夏休み初期。実行場所は国外……クセン共和国といったところかな」
俺も概ね同意だ。
政明「だとしたら――」
由美「いやいや、なんでそんなこと分かるの!?」
俺の肩を掴んで詰めよる由美に、渋々説明する。
政明「犯人の気持ちで考えてみろ。誘拐したならなるべく人にバレたくはない。なら、夏休み初めに確保しておけば、少なくとも学校関係者には疑われない。家族も叔母が一人だけなら隠蔽は簡単」
涼斗「それに、深玖君には俺ほどではないが頼れる彼氏がいる。そして、夏休み前日、彼は補習だった。エンド関連でクセン共和国に行くなら、一人になるタイミングはあるだろう」
由美(じゃあ、もしかしてあの日屋上で別れてからすぐに、深玖は失踪したってこと?)
なんともやるせない気持ちになるが、とりあえず二人の考察を聞く。
涼斗「だが、妙だね。家族は殺すなり誘拐するなりで黙らせるのは簡単だが、学校はそうもいかない」
政明「ああ、夏休み明けに生徒が来なければ、絶対に事件になってるはずだ」
由美「あっ、そういえば先生は、なんか家の事情で急にこれなくなったって言ってたよ」
二学期初日の記憶を振り返りながら、私は口を挟む。
涼斗「なるほど、つまり学校に誤情報を流したと」
政明「そんなことができる奴は限られてくる。一番に思いつくのは……国だな」
政明の衝撃の結論に、私は絶句する。
由美「…………いやいやいやいや! ありえないでしょ、なんで国の人がそんなことするの!?」
脳裏には、ここ数年でお世話になった【女帝】やその他のメイドさんの顔が並べられる。
涼斗「別に、主犯格が国と決まったわけじゃないさ。誰かに操られている可能性だってある」
そもそも、失踪しているのだって由美の思い込みに過ぎない。もしかしたら本当に家の事情で消えた可能性だって少なからずある。
涼斗(だが、その可能性を考える暇はない。今は誘拐された前提で動くべきだ)
だがそうなると、裏にいるのはかなりの権力者だ。ただの一般人である俺たちには少し荷が重い。
政明「そういや、彼氏がいたな。そいつはどうしてる?」
由美「何にも知らない。二学期に一回だけ学校に来てそのまま会ってないし……あとなんかすごく怖い顔してた」
政明「なるほどな、エンドでも捜索は難航してるらしい」
涼斗「なら、次にやることは決まったね」
ああ、と短く返事をした政明は事務所の電気を消して出かける準備を始める。
由美「……え、どっか行くの?」
政明「あのエンドでも見つけられなかったんだぞ。なら、探す場所は限られてる」
二人は期待のこもった眼差しで由美を見つめる。
由美「つまり、レリウス王国の城内に深玖がいる……ってこと?」




