56 回顧 賭博師と変態
いつからだろうか。
俺がクラウンゲームに向き合う理由が変わったのは。
最初は良かった。中学生の頃は贖罪の為に必死に、でも確実に充実した生き方をしていた。
歯車が狂い始めたのは【倉田 美紀】という女に会ってからだ。
当初はしっかりと線引きをして、深くかかわらないようにしていた。
家に誘われてもしっかりと断っていたし、最低限の関係以上には発展することはなかった。
しかし、俺も高校生。
せまりくる性欲や美少女との出会いに飢えていたのは事実だった。
気づけばズルズルと関係を深めてしまい、いつのまにか俺にとって彼女はとても大事な人になっていた。
正直、あの【巫女】を探し出すことより彼女と一緒に過ごすのが楽しくなっているほどに。
もともと、気移りしやすい性格もあってか、俺にとっての優先順位はみるみる変動していった。
だからだろう、俺が今、探し求めていた【巫女】を【巨人】に渡しているのは。
小島「協力感謝する、【賭博師】殿」
勇「礼なんていらないよ。それより約束は守れよ」
小島「ええ、もちろん。巫女のことを探す、高校生くらいの少年が現れたら捕獲・連絡。ちゃんと覚えています」
勇「ならいいよ」
深夜の王城を後にして、俺は近くの森に足を運ぶ。別になにか特別な思い出があるわけではない。
ただ、こうして静かな場所で休みたかった。
勇(まずは、あの少年を探し出す。そうすれば、芋づる式に美紀を殺した奴にもたどり着ける)
状況的に、殺したのは【道化師】だろう。そして、あの少年は一般人としてピエロに協力をしている。
勇(きっと、あの少年も【巫女】の後継者を探しているはず。エンドに偽の情報を流す奴だ。少し時間はかかってもきっと牢にいる【巫女】を見つけ出す)
そこを叩く。
今の俺の目的は、美紀の――【変態】のかたき討ちだけだ。
―――
記者「本日は取材に応じて頂き、ありがとうございます」
美紀「別にいいですよ。どうせ暇ですし。というか…………ここどこです?」
記者「どこというのはお答えできません。まあ、本編とは関係のない【死後の世界(笑)】みたいなとこです」
美紀「ふーん」
真っ暗な場所で、美紀は質問に答えていく。
記者「それにしても、お早い退場でしたね。一話から登場しているはずなのに、まさかあっさり負けてしまうなんて」
美紀「いやぁ~お恥ずかしい限りです。でもでも、本編で語られてないだけで、私けっこう勝ちもあるんですよ?」
記者「では、そちらは後程伺わせていただきますね。ではまず、ズバリ聞きますが、あなたは勇さんとどのような関係で?」
美紀「え~、そんなこと聞くんですか?」
記者「どうせ誰も聞いてませんし、本編じゃ触れられることもないのでぶっちゃけちゃって下さい!」
美紀「え~っとねー、一言でいうなら奴隷と主人みたいな関係かな。勇が奴隷ね」
記者「……お~っと!? これは中々鋭い意見ですね。さっきまでの勇さんの回想を否定しかねません」
美紀「奴隷っていうのは、主人のいうことを無条件で来てくれる子のこと。そして、主人がいないと生きていけない子のことだよ」
記者「では、あなたにとって勇さんは都合のいい人間だったと?」
美紀「それ以外あるわけないですよ。いい奴隷は自分のステータスでもありますしね。彼はとってもいい働きをしてくれました」
エンドとの出会いや、宝具の回収。何人かのホルダーと戦うこともできた。
記者「しかし、奴隷といっても、あんなことやそんなことをするものですか?」
美紀「頑張った子にはご褒美がいりますからね。エンドには既婚者や女性が多くて私の体を活用できる機会がなくて悲しかったです……」
記者「なるほど。そんな勇さんですが、どうやら今、本編で大変なことをしでかしているようですね」
美紀「私がそういう風に調教しましたからね。ちゃんとした奴隷は、主人が死んでも主人に縛られてるものです。
もう少し時間があれば、あのジョーカー君が現れても動じない、完璧な奴隷にできたんですけど……」
記者「なーるほど! 確かに、あの戦いは彼が勇さんを足止めしたのが大きく戦況に影響しましたからね」
美紀「でも別にいいですよ。私は本気でやりましたし、あのピエロも強かったです」
記者「そうですか! では長々とお付き合いして下さりありがとうございました。この後は、少し休憩を取ったのち、語られなかった高校時代をお聞きしたいと思います」
美紀「それ、とても時間がかかりそうですね。時間大丈夫ですか?」
記者「はっはっはっは、大丈夫ですよ。既に死んでる身じゃないですか。時間はいくらでもあります」
美紀「あっ、それは違いますよ。だってまだ、現世では私が生きてますから」
記者「そ、それはもしかして【変態】の力が覚醒してあの状態から生き返ったとか、死体を偽装したとか、そういうアツい展開ですか!?
死体をしっかりと描写しないのは生存フラグではあるあるですが、これは特ダネですね」
美紀「そういうわけじゃないですよ~。でも、私は生きてます。誰かの胸の中で、ね」
拍子抜けした顔をする記者の前で、少しいたずらっぽい顔で美紀は笑うのだった。
記者(オチとして完璧ですよ美紀さん!)




