53 賭博師の裏切り
湊「いやすみませんね、家内まで運んでいただいて」
旅行先からの移動中、湊は迎えに来てくれた理香に礼を告げる。
極「こうして運んでもらえば、帰りの交通費が削減できるし」
理香「いえ、お気になさらず。そこまで違いはありませんので」
少しも嫌な顔はせず、淡々と返答する姿に湊はため息を吐く。
湊「理香さん、少しは愛想よく笑ってみてはいかがですか? そうすれば、他のメンバーとも仲良くなれますよ」
極「理香ちゃんは顔の造形がいいから、絶対モテるよ」
理香「いえ、気遣いはありがたいのですが私には必要ありません」
目的の山が見えてきたので、理香は着陸の準備を始める。だが、そのいつもの場所でなぜか、久と信矢が外で待っていた。
理香「お疲れ様です。なにかありましたか?」
信矢「おい女、深玖はどこだ。アジトに見当たらんぞ」
凄まじい剣幕で詰め寄る信矢に臆することなく、理香は返答する。
理香「いえ、確かにここへお連れしたはずです。どこかへ買い物にいっているのでは?」
信矢「それはもう探した。スマホへの既読も一切つかん」
お前なんかやっただろ、とでも決めつけるような目線を理香に送るが理香は首を振る。
湊「そうまで言うのでしたら、監視カメラの映像を見ればいいのでは?」
久「おー、そういえば。アジトを作った時に出入り口にだけつけとったな。忘れとったわい」
早速、アジトのコンピュータールームに入り、録画データを確認する。
久「理香君、君が深玖君をアジトに送り届けたのはいつ頃じゃ?」
理香「およそ、90分ほど前ですね」
なるほどなるほど、頷きながら録画の時間を進める。
久「おっ、深玖君と理香君がアジトの入り口で別れておるの。で、理香君は迎えに飛び立ち深玖君は中に入る……」
これで一応、理香の嫌疑は晴れた。さらに時間を進める。
湊「これは……勇殿でしょうか? 随分と容姿が変わっていますね」
10分後の映像に、ポケットに手を突っ込んだ勇がアジトに入っていった。
それから数分後、気絶した深玖を担ぎながら勇は出てきた。
信矢「そうか、こいつが犯人か」
湊「どちらに行くつもりですか?」
コンピュータールームから出ようとする信矢の前に湊が立ちふさがる。
信矢「探しに行く、どけ湊」
湊「すでに1時間ほどたっています。加えて【賭博師】ということも加味すれば闇雲に探すのは得策ではありません」
信矢「なんだ? お前なら効率的に探し出せると?」
静かに闘志を燃やしながら、信矢は湊を睨む。
湊「無策で動くのが危険だと言っているのです。恐らく、勇殿は我々を裏切っています。当然、なにか罠があるはずです。そう例えば、爆弾が仕掛けられていた……り?」
湊が言い切る前に、アジトの中に凄まじい轟音が響いた。
シャンデリラが床に落ち、どんどんと地崩れを起こしていく。
久「総員、退避ぃぃ!!」
久が叫ぶと同時に、全員が出口に向かって走り出す。湊は妻をおぶりながら最短距離を示し全員を誘導する。
全員が外に出た時には、アジトは完全に地中に埋まっていた。
久「……決まりじゃな。勇はエンドを裏切った。いや、そもそも入っていたわけじゃないのだが」
信矢「おい、久。そいつの特徴を教えろ。俺が探す」
久の胸倉を掴み、力強い眼力で訴えるが久はそれを却下する。
久「じゃから落ち着け。ここで追っても奴の思うつぼじゃ。それよりも、早くここから離れるぞ。どこから監視されているか分かったもんじゃない」
信矢「クソっ!」
信矢はぶっきらぼうに久の胸倉を離した。
久「では諸君ついてきた前。安心せい、わししか知らんアジトをいくつも知ってるでの」




